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無視。


扉をノックされる。
なぜ、インターホンではないのかという疑問。

コンコン。

無視。
そういえばと過る。
駐車場管理で働いていた、名木田君は、口が悪く、基本的には人を信じていない。
「ろくでもない」
が口癖。

名木田君は地元を出て、一人暮らしを始めたときに、基本的に、誰が訪ねてこようと、無視をしたらしい。

「呼んでもないのに来るもんなんか、ろくでもないんすよ」

という言葉が、過る。
僕は、今、ノックされている。

ここで、「はあい」と声を出し、在宅を知らせるべきか?
いや、名木田君を見習い、無視か。

ちなみに、名木田君は電話にも出ない。
「逆に、なんで電話なんか出るんすか?」
「どんな用事が入ってくるか、知らないし」
「そんなんでいいんすか? 自分の時間は、自分で守るんすよ」

と言って、ゲームをしていたらしい。

コンコン。

ノックだ。このまま、不在のフリをしていると、入ってきたりしないだろうか?
そうしたら、どうするか、出ていけば帰るか?
いや、キモイやつだと嫌だな。
入ってきたときのために、スマホの録画モードをすぐで来る準備をしよう。
その動画をすぐに、誰かに飛ばせるようにしよう。
SOS。のろし。ヘルプミー。
誰に送るかはも大事だ。すぐに動いてくれそうな人。
近くの人か、いや、警察に連絡がいくような流れとか。

むむむ。
とか、考えていると、ポストにカタンと、音がして、扉の外で足音が去っていった。

扉についているポストに「宅配便の不在表」が入っていた。

なぜ、インターホンを押さない……。
いや、まあ、良いけど。

名木田君も、もうおっさんだろうなぁ。
どんな大人になってるんだろ。と思った。
かけたら電話出るかな。

「……」

僕は少し時間を置いてスマホを手にし、不在表に書かれた連絡先に電話をかけた。



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