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#91 ヤオコー(8279) 2020/12/22


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       山本潤監修「グロース銘柄発掘隊」 第91号

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 山本潤氏率いる「株の学校」で、山本氏をはじめとする講師陣の薫陶を受けた精鋭アナリスト達が、成長株を発掘し、その内容を詳細にレポートします。

 毎週火曜日配信、1回に1銘柄の深掘りレポートです。


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               【目次】


■はじめに
■ヤオコー(8279) 客員アナリスト カーツ大佐
■モデルポートフォリオ 12/1更新


※本メルマガの一部内容を、億の近道へ抜粋の上掲載することがございますので、あらかじめご了承下さい。


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■はじめに


 NPO法人イノベーターズ・フォーラムのご協力により、客員アナリスト
たちのレポートの有料メルマガを提供しております。

 グロース銘柄発掘隊の隊長は東京2期生です。
 彼の指揮下、隊員たちは、週に一本のフルレポートをディープに発表します。
 どれも個性あふれるレポートです。

 投資家のみなさまにおかれましては、ぜひ、グロース銘柄発掘隊の客員アナリストたちへのご支援をよろしくお願い申し上げます。

(山本潤)


【発掘隊より】

 グロース銘柄発掘隊は、5年から10年以上の長期投資に耐えると思われる銘柄を発掘し、調査分析するものです。配信した銘柄は短期的に株価調整する場合もありますが、対象企業の前提条件が変化しない限り、問題ないと考えます。
 配信した銘柄は定期的にチェックしております。もし、前提条件が変わったりビジネス環境が大幅に変化した場合には、あらためてフォローコメントを配信致します。

 


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■ヤオコー(8279)

【会社概要】

 ◆概要と成り立ち


 株式会社ヤオコーは、埼玉県を中心に東京や関東の1都6県に展開している、創業130年のスーパーマーケットです。特に創業の地、埼玉では、古くより地元に根付き、客のニーズをきめ細かく汲み取りながら、品質や品揃えの良さと適正な価格設定で、競合の激しいスーパー業界の中でも消費者の支持を受け続け、確固たる地位を築いています。
 また、スーパーマーケット業界としては、高収益であり、安定した経営が特徴でもあります。
 どうして長年に渡り、高収益でありながら、価格や品質への目が厳しい過当競争地域の消費者にも受け入れられ続けているのか、その理由を紐解いていきたいと思います。

 同社は、1890年(明治23年)に埼玉県比企郡小川町に川野幸太郎氏によって、「八百幸商店」として設立されました。八百屋としてスタートした同社ですが、堅実な経営によって、地元に信頼される店となり、業容を拡大、大正になる頃には、野菜だけでなく、果物、鮮魚、乾物まで取り扱い、地元の料理店や小売店への卸もするなど家族で経営を継承しながら、地域の繁盛店として発展をしました。

 戦中においては、地域の配給所として、戦後の物資不足においても神田市場から体を張って物資を仕入れるなど、家族と経営の絆を強めながら、地域にとってなくてはならない店へと一層の進展を遂げました。

 この頃、店長のような役割を果たしていたのが、現ヤオコーの実質上の創業者である、川野トモ氏(名誉会長)でした。現会長の川野幸夫氏の母にあたります。トモ氏は、多くのお客様と会話をする中で、親しくなってニーズを掴みながら、客の好みの商品をおすすめするなどして、良好な関係を構築していったということでした。信頼関係なくしては、お客からの素直なニーズをきめ細かく知ることはできません。頭では理解していても、このようなことを愚直に実行し続けることは簡単では並大抵のことではなく、ヤオコーの経営のDNAは、この時期に明確に形成されていったように思います。

 1950年代から60年代、同社には大きな転換期が訪れます。
 対面販売から、セルフ型のスーパーへの転換です。紀伊國屋やダイエーが、セルフ型の店舗をオープンし、知人が営むスーパーでも導入が進み、売上もアップさせていたのです。店舗を広くし、効率化を進める形のセルフ型のスーパーは、地元客と密な関係によって商いが成り立つという同社方針にそぐわない部分もあるため、家族親戚からは、強い反対の声もありました。トモ氏は、これらの内部からの声にも練り強く応じ、セルフ化への信念を突き通して開店準備を進めました。
 結果、セルフ型への転換は、大成功となり、トモ氏の類稀なる努力の末、一層の発展を遂げる形となりました。
 トモ氏の意に反して、家業を継ぐことに前向きではなかった息子の幸夫氏でしたが、大学在学中に出会った林周二氏の名著「流通革命」に将来性を感じ、ヤオコーを継ぐことを決心、「魚悦」(現在のマルエツ)に奉公、社長家にお世話になりながらの修業を経て、母子の二人三脚の経営体制となりました。

 この頃のヤオコーは2店舗のみで、個人商店の域を出ないような規模感でしたが、70年代になると、スーパーマーケットが小売の主役となり「ジャスコ」「ユニー」といったスーパー次々誕生し、チェーン店化が進んで行きました。
 新たな体制となったヤオコーも、チェーン店化の道を歩むことを決心、零細ゆえに融資や土地取得に関する苦労を重ねながらも、トモ氏のがんばりを見てきた応援者によって、チェーン店化のための1号店をオープン、見事に繁盛をさせました。
 その後、幸夫氏の兄弟も経営に参画し、少しづつチェーン店化を進めて、1974年には株式会社化され、トモ氏が社長に就任、社名も、漢字だと八百屋だと思われてしまうことから、スーパーマーケットらしい今のカタカナ表記のヤオコーとなりました。

 その後も、様々なトライアンドエラーを繰り返しながらも、忘れてしまいそうなくらいに当たり前のことを当たり前に毎日継続する姿勢によって、少しづつ店舗を拡大していきます。

 これらの着実な成長を支えていたのは、トモ氏の人間力によるところが非常に大きく「全てのお客の名前を知っている」という逸話があります。
 また「笑顔で対応し、目を見て話す」「自分から先に挨拶をする」「ハイ、といって返事をする」「約束は守り、10分前には行くこと」「相手から指摘される前に中間報告をすること」「無駄をせずに、必要な時には充分にお金を使い、不要なところには一銭も使わないこと」などといった誰もがどこかで教わったようなとても基本的なことですが、うっかりすると見過ごしてしまうようなことを徹底して実行することが、ヤオコーの経営の肝であり、かつて小学校の教員を務めていたトモ氏らしい哲学でした。
 それが幸夫氏に受け継がれ、弟の清巳氏へ、それがまた現社長であり、幸夫氏の次男の澄人氏へ、そして従業員等、各組織へと受け継がれております。


◆現在のヤオコーとその強み


 現在ヤオコーは、全部で168店舗あります(埼玉91,千葉30,群馬
 16,東京11,神奈川8,茨城7,栃木5)。また、新業態の実験店舗である八百幸が東京都内に1店舗、事業継承の側面もある、グループ会社のエイヴイが12店舗(神奈川11,東京1)という店舗構成になっております。

 2020年3月期の売上は、グループ連結で4,604億7,600万円、営業利益は、198億8,200万円で、これは31期連続増収増益となっております。
 ちなみに同社の売上規模は、業界で9位、営業利益では6位となっており、収益性の良さがランキングでもみてとれます。国内で一般的にスーパーマーケット業界の営業利益率は、1-2%が平均的ではありますが、同社は、少しづつ利益率を伸ばしながら直近の通期では、4パーセントを超える営業利益率を達成しています。
 過去10年間の推移にフォーカスすると、売上成長率は年平均8.02%、営業利益成長率は、8.57%で、過去5年間においては、同8.09%と9.24%となっております。また、店舗あたりの売上や利益も同様に、安定性を高めつつ、ゆっくり着実に成長させている様子が伺えます。

 このような経営の成果は、トモ氏の教えが企業DNAとして、継承、浸透しているからと言えると思いますが、現在においてはどのように活かされているか、具体的にその秘訣を見ていきたいと思います。

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