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不思議な親子関係

1923年8月29日 日本の「古河電気工業」と、ドイツの「シーメンス社」との資本・技術提携により設立された富士電機。その設立から12年後に設立された子会社が富士通。人と同様に企業においても親子関係が見られます。

 今や子が親よりも大きく育ち、富士通のNC部門が分離設立された富士電機からは孫となるファナックもが時価総額が富士通を上回ることとなり、企業の発展の過程に見られる親子関係を紐解くことで企業の歴史、日本産業界の歴史を感じることができます。

 昨年上場の日本郵政も出来上がった子会社ながらゆうちょ銀行と簡保生命を傘下に置き、新たな事業展開に挑戦しかかったのですが、マイナス金利導入では今後の先行きが不透明な状態です。

 日本には約300社の上場企業を親にもつ企業が上場しています。

 親が50%以上の株式を保有していなくとも実質的な支配関係のある企業も含めての数字ですが、40%以上の株式を保有している場合だけでも285社あります。

 皆さんはこれを多いとお考えでしょうか。日本の上場企業数は約3600ですので8%ほどの会社が親子上場となっています。最大の企業はゆうちょ銀行と簡保生命、NTTを親に持つNTTドコモとNTTデータなどですが、中堅以下でも結構目につきます。

 親会社とともに発展するという主旨は良いのですが、事業活動が埋もれてしまいがちなのはとても残念です。富士電機―富士通―ファナックのようなつながりで小規模な事業が大規模なもの、グローバルなものへと発展するケースはなかなか見出せません。

 そうした親会社と子会社の関係、更には孫会社の関係を持つに至っている事例としては昭和ホールディングス(5103・東証2部・時価総額70億円)とウェッジHD(2388・JASDAQ・時価総額129億円)、更には海外の孫会社でタイ証券取引所に上場するグループリース(略称:GL、ピーク時推定時価総額2000億円)があります。

 千葉県柏市に本社を置く昭和ホールディングスはウェッジホールディングスの株式を63.3%保有しており、ウェッジホールディングスの事業であるASEAN諸国でのファイナンス事業やコンテンツ事業さらには自社のゴム事業においてもASEANでの事業展開を積極化させようとしています。

 自社では食品やスポーツなどの事業を展開。ウェッジホールディングスはタイGLの株式を37.5%保有しており、GLの現状の株価(38.25バーツ)及び時価総額推定1700億円から推定する資産額は650億円程度と見られ、GLの株価上昇による資産効果が表面化しています。

 仮に現状のGL社の株価が行き過ぎと評価されても今後の成長性を加味したとすればこの6掛けで評価したとすればウェッジHDの資産は390億円、昭和HDの資産は247億円と評価されますので、現状の時価総額は3分の1にしか評価されていないことになります。

 こうしたややいびつな親子関係はそれぞれの企業ごとの成長性の差異に基づいています。富士電機より富士通、富士通よりもファナックの成長性が高いという評価で時価総額が決まっているのと同様に昭和ホールディングスよりウェッジホールディングス、ウェッジホールディングスよりもGLがダントツに成長するとみなしての評価でしょうが、日本の親子2社はいつでもGL社から買収されてもおかしくない関係にあると言えるのではないでしょうか。

 但し、お金の出どころがあくまで日本であるから金利のさやが抜けて高収益となるのであれば、いましばらくはこのままの状態が良いということも考えられます。

 今期は人口が2.8億人もいるインドネシア市場にも参入する予定で、タイ、シンガポール、カンボジア、ラオスに続く一大ビジネスに発展が期待されています。

 ASEANでは今後ベトナムやマレーシアなどにも進出を予定しており、タイを拠点にスタートしたASEANでのデジタルファイナンス事業の発展を市場は早く見抜く必要があるのかも知れません。

 過去の経緯から両社を訝しく見る投資家はいまだに多いのかも知れませんが、改めて精査し評価し直してみたいと思います。

(炎)

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)

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