アイヌの人たちの生活向上施策

北海道庁の「アイヌ政策推進局アイヌ政策課」にて、「アイヌの人たちの生活向上に関する推進方策(第3次)」(2016年度~2020年度)が実施されている。

生活向上施策の策定の経緯

現行の第3次の推進方策が策定された経緯は以下の通りとなる。

北海道では、平成26年6月に、アイヌの人たちや有識者で構成される「アイヌ生活向上推進方策検討会議」を設置し、平成28年度以降における施策のあり方についての検討を依頼したところ、平成27年3月、その結果を取りまとめた報告書が道に提出されました。

上記の「報告書」では、「平成25年(2013年)の北海道アイヌ生活実態調査報告書」から、格差が残っていることを主な理由として施策の必要性が報告されている。以下、抜粋。

Ⅲ 今後の施策の必要性
今回の調査の結果やこれと関連する他の資料等を全体的に見ると、いくつかの項目において、アイヌの人たちと道民一般との格差は改善の傾向を示しており、これまでの施策が一定の成果をあげてきたものと評価できる。
しかし、格差が縮小傾向にあるとはいえ、生活保護率は居住市町村の保護率の 1.4 倍となっており、また、大学進学率についても、居住市町村よりも17.2 ポイント低くなっている。

平成25年アイヌ生活実態調査報告書(2013年)

報告書」内容の格差についての要点は以下の通りとなる。

生活保護受給率は1.4倍
大学進学率は17.2ポイントの差
世帯所得200万未満は34.3%(全体は4.0%)

また、「総務省統計局家計調査(北海道分)」との世帯所得の比較は以下の通りである。

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※世帯所得の比較は収集方法の異なるデータの比較となるため、あくまでも参考となる。

平成29年アイヌ生活実態調査報告書(2017年)

2017年(平成29年)に生活実態調査が行われた。(2019年現在で最新)
報告書」内容の格差についての要点は以下の通りとなる。

生活保護受給率は1.1倍
大学進学率は12.5ポイントの差
世帯所得200万未満は24.1%(全体は3.6%)

また、「総務省統計局家計調査(北海道分)」との世帯所得の比較は以下の通りである。
2013年の調査結果と比較して、2017年では改善はされているものの格差は残っている。

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※世帯所得の比較は収集方法の異なるデータの比較となるため、あくまでも参考となる。

アイヌ生活向上推進に関する支援や補助の手続き

アイヌ協会で第一種会員と同等の資格があるかどうか認定を行う。アイヌ協会が認定して、北海道庁へ推薦状を提出する。北海道庁では客観的な資料をもとに確認をして追認をしている。

国会の予算委員会での質疑より。

(第198回国会 予算委員会第四分科会)
柴山国務大臣:北海道庁が実施しているアイヌの方々の子弟に対する修学資金の貸付けにつきましては、まず、アイヌであることの確認に当たって、北海道アイヌ協会理事長などの推薦書の提出を求めているところ、同協会におきましては、戸籍など客観的な資料をもとにしながらアイヌであることを確認した上で推薦書を作成していると承知をしております。
また、北海道庁においては、当該推薦書を踏まえ、貸付けの可否については、その上で適切な認定を行っていると承知をしております。

アイヌ生活向上推進施策の法解釈

日本政府は「アファーマティブアクションの一環であり、法のもとの平等を定めた憲法十四条に反する措置ではない」としている。

同じく国会の予算委員会での質疑より。

(第198回国会 予算委員会第四分科会)
柴山国務大臣:この修学金の貸付けにつきましては、アイヌであることの確認に加えて、各家庭の経済状況なども含めて総合的に判断をしているということでありますので、門地等の解釈についていろいろと学説上争いはありますけれども、そういったことを踏まえると、法のもとの平等を定めた憲法十四条に反する措置ではないというように認識をしております。
(中略)
それであれば通常の奨学金でいいじゃないかということなんですけれども、通常の奨学金、現在、確かにこれまで実績等ございます。教育振興事業費補助金、これはアイヌ子弟高等学校等進学奨励金ということで実績があるんですけれども、平成二十三年度から平成二十九年度までの支給実績人数四千二百八十五人。そして、教育振興事業費補助金、これはアイヌ子弟高等学校等進学奨励費、こちらは大学ですね。そちらの方の実績については、同じく平成二十三年度から二十九年度までの支給実績人数一千六十六人ということであります。
こういった実績は確かにあるんですけれども、これに加えて、先住民族の方々の生活について、非常に困難を伴っている部分があるのではないかという実態を踏まえ、協会側の適切な推薦をもとに、アファーマティブアクションの一環としてプラスの支援を行うことが適切ではないかということで、今般、特別の措置がとられるようになったということでございまして、既存の制度に加えて、一定の合理性のある補助をしているものと私どもとしては考えております。

アイヌ生活向上推進施策における奨学金の返還率

2017年度(平成29年度)の奨学金の返還率は96.6%となっている。

同じく国会の予算委員会での質疑より。

(第198回国会 予算委員会第四分科会)
伯井政府参考人:奨学金の貸与部分についての返還率のお尋ねでございます。
平成二十九年度における返還計画に基づき、返還期限が到来し、当該年度に返還を要する額の債権を確定させたもののうち平成二十九年度における返還金収入の割合、すなわちこれを返還率といいますと、九六・六%であるというふうに把握しております。

アイヌ民族否定論に抗する

【アイヌ協会の不正問題のデマ】
2010年にアイヌ協会の不正問題があったが、再発防止策の策定や組織の強化が行われており、現在では不正問題は起こっていない。

同じく国会の予算委員会での質疑より。

住本政府参考人:お答えさせていただきます。
まず、御指摘の不正発覚後におきまして、アイヌ協会を監督いたします北海道庁の指導のもと、アイヌ協会として再発防止策の策定や組織の強化などに取り組まれたと認識しております。
また、同協会の理事長の在任、若しくは、御指摘が今ありました釧路支部の支部長への就任につきましては、アイヌ協会及び同協会を監督する北海道庁において適切に判断されるべきものと承知しております。
つけ加えて申し上げますと、従来から、先生御指摘のように、アイヌ関連予算の適切な執行というのは非常に大事だと内閣官房として思っております。したがいまして、アイヌ関連施策を執行します関係省庁に対しまして、再発防止策の徹底を要請するなど、予算の適正な執行が図れるように努めてまいりたいと考えております。

【奨学金の返還についてのデマ】
また、奨学金の返還についての誤認からデマが広がっているが、不正はない。

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