Ryo Yamamoto |OKR導入コンサルタント
OKR導入徹底ガイド
新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症やコロナワクチンについては、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
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OKR導入徹底ガイド

Ryo Yamamoto |OKR導入コンサルタント

今注目されているパフォーマンスマネジメントツール「OKR」の解説記事です。


 OKRとは、Objective(目標)と、Key Results(目標が達成されたか?を測定するための主な結果指標)の頭文字を取って作られた言葉で、オーケーアールと読みます。OKRには様々なメリットや側面がありますが、「自分と組織を常に望ましい最終形態に向けて進むようにするための指針となるツール(パフォーマンスマネジメントツール)」だと考えるとわかりやすいかもしれません。


1.OKRの基本的な考え方

 OKRではまずObjective(目標)を定め、それからKey Results(目標が達成されたか?を測定するための主な結果指標)を設定します。そして、OKRの実現に向けて、チーム全員で取り組みます。

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OKRの1サイクルは、よくある目標管理制度に似ています。OKRを設定し、実行し、期末に総括を行なうという点です。

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しかし、細かな部分に「高い成果を創出する」ための仕組みが沢山仕掛けられています。これからそれを見ていきましょう。

この3ヶ月間で取り組むべき、最も重要な定性目標をチームで設定する

 OKRでは、目標を重要なもの1つだけに限定して設定します。そのため、目標設定の段階で自然と重要な業務について考えられるようになります。これは「沢山目標を設定すると経営資源が分散する」「沢山目標を設定しても覚えていられない」ためです。あれもこれもと手を伸ばした結果、全て出来ないと言うことがよく起こりますが、OKRは1つに限定することでその目標に全力で取り組むことを促進するわけです。

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目標を1つに設定すると何が起きるか? 

 最も重要な目標1つを設定することで、「緊急度に関わらず、重要な目標にフォーカス出来る」ことも見逃せないポイントです。優先順位を付けるため重要度と緊急度の二軸で判断すべし、というアイゼンハワーのマトリクスはよく知られた手法です。

 成果を最大化するためには、重要度の高い業務にフォーカスをする必要があるということは誰しも理屈では判っていても、実際にやろうとすると難しいものです。何故なら、重要かどうかは判らないけれど「緊急でお願いします!」と言われたことを無視するのは難しいですし、なんとなく重要だなと思っていても期限を定めていないものは上述の通り取り組むのが難しいからです。

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 何故なら

①重要度の判断軸が共有されていることが稀 
②判断軸があっても認識されていないこともある 
③判断軸の定期的な確認・修正がされていない 

という問題があるからです。


 例えば、昨年度から売上・利益ともに増収増益計画を立てている企業のもとに、「ボリュームはあるけどそれほど利益自体は見込めない案件」の引き合いが来たとして、受注すべきでしょうか?断るべきでしょうか? 恐らく、部内でも意見は分かれるのではないでしょうか。 あるいは自社で開発したSaaS製品をカスタマイズ無しで販売することを目標にしているスタートアップの元に「自社向けの特別カスタマイズをしてくれたら契約する」という引き合いが来たらどうするでしょうか? そうしたときに答えをだしてくれるのが、OKR設定のルールとして設けられた「重要なもの1つのみにする」というものです。

 このルールによって、緊急だけど重要じゃない業務を自信を持ってやめることができるようになります。また、緊急じゃない業務をやる理由を明確に出来るようになるわけです。

 定性目標であること(定量的ではない) 

 OKRにおける目標は、定性的なものにすることが望ましいです。むしろ定量的なものや到達状況が明確なものは避けるほうが良いでしょう。定性的なものにしておくことで、メンバーが組織のミッションや大義名分を意識することが出来るようになるという効果が期待されます。

 「自社や自組織はそもそも何のために存在しているのだっけ」というのは、意外とすぐに忘れてしまうものです。「全ての顧客に健康な暮らしを提供したい」という目的のために集まっているのに「健康効果は不明だが、売上に繋がりそうな製品を売りたい」となってしまう例や、「自社製品を顧客に使いやすくする」ために立ち上げられた部署なのに「面倒だからこの改善はしない」と判断してしまうような例は本当によく起きます。そのため、数字や状態で表せないような定性的な目標を定めておく必要があるわけです。

 目標管理に詳しい方は「定量目標の方が行動に繋がると聞いたぞ?」と思われていることと思います。後述しますが、目標を達成したかどうかを判断するKey Resultsを設定のフェイズがあるため、心配は無用です。逆に、目標を定量的にしてしまうとKRと重複してしまい意味がなくなります。

 定性的な目標を設定しておくことで、数字にこだわらない人をモチベート出来ます。目標は定量的で達成状況が明確なものである方が行動に繋がりやすくなると言うのは様々な調査結果でも示されていますが、数値は刺激が強いので、一度数値目標が設定されてしまうと、どうしてもそちらに意識が行きがちとなります。
 例えば「綺麗なスタイルの身体を実現する」と意識している人が、それを明文化せずに「10kg痩せる」という目標を立てたとしましょう。すると、10kgという数字に引っ張られ、「とにかく10kg痩せればいいんだ」と考えてしまい、過度な食事制限や怪しいサプリに走ってしまうことがよくあります。当初の目標であった「綺麗なスタイルの身体を実現」ということを考えれば、筋肉を落としてまでただ体重を落とすと言うことは望ましくない対応のはずです。しかし、数値が設定されてしまうと意識がそちらに向いてしまうわけです。なので、定性的な目標もちゃんと意識できる仕組みを作ってくことには大きな意味があります。

OKRは四半期毎に設定する

 また、OKRでは、目標を四半期毎に設定します。場合によってはもう少し長くしたり、短くしたりしてもよいのですが、四半期ぐらいが望ましいです。これは、

「目標に時間的な制約を作ると、人間は行動が促される」
「目標設定直後と目標の締切直前に行動が促される」

という人間心理を上手く活用した手法だと言えます。

 経験のある方も多いと思いますが、目標を立てたとしても期限を設定していなければ、いつまでも手をつけないということが起きます。これを防ぐためには、立てた目標をいつまでに実現するかという期限を合わせて設定することが欠かせません。

やる気ブースト期間が従来のMBOの約4倍

従来の目標管理制度も期限を設定することを推奨していますが、多くの場合で期限は1年や半年で設定されます。しかし、1年単位(例えば4月~3月)で目標を設定した場合、目標達成に向けて頑張るのは、せいぜい4月と3月ぐらいです。これは、

目標の期間の最初と最後に人間はやる気を出す

というもので、初頭努力・終末努力と呼ばれる心理的な現象です。一方で、OKRのように四半期単位(4月-6月/7月-9月/10月-12月/1月-3月)で設定すると、目標達成に向けて頑張る期間は、4/6/7/9/10/12/1/3月となり、約4倍になるわけです。

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ならば、期間は可能な限り細分化するべき? 

「毎月、いや毎週、いやいや毎日目標を設定すればよいのでは?」と思うかも知れませんが、それはそれで目標設定のための管理負担が上がってしまいますし、まとまった業務に取り組むことが困難になります。そのため、四半期単位での目標設定は、いいバランスなのが3ヶ月だと言えます。 もちろん、OKRは法律でもなんでもないので、期間については柔軟に対応されれば良いと思います。


チームで目標を設定する

 OKRはチーム全体で設定します。これは

人に与えられた目標より、自分で立てた目標の方が動機づけられる
自分一人の目標より、チームの目標の方が達成に向けて努力するようになる

という人間心理を上手く使っています。
 日本でよくある目標管理制度はトップダウン型・ボトムアップ型の2つです。
 トップダウンで上司が目標を設定する、いわゆるノルマを決めるときの考え方は、全社目標を各人に綺麗に分割していくのには非常に有効です。しかし、トップダウン式目標設定では、部下のモチベートに相当な努力が必要となります。何故なら、突然上司に「製品Aを年間で1億売ってきてね」と言われても、それだけで「よっしゃやるぞ」と思える人は恐らくかなり稀だからです。そのため、上司は部下に対して丁寧に上位方針を説明したり、アメ(給与を始めとした賞賛)やムチ(異動や低評価をちらつかせる)を使いこなしたりといった追加対応を取ります。
 ボトムアップ型の考え方を採用している企業では、「部下が目標を自分で考え、上司と面談してすりあわせを行い、時には差し戻し・再検討などを踏まえながら作っていく」というフローを取ることが多いです。しかしこの場合、双方に「めんどくさい」という意識が充満することになります。部下は部下で「上司の頭の中に、設定して欲しい目標があるならそれを言ってくれよ」と思うでしょう。身に覚えがないのに「私がなんで怒ってると思う?」とパートナーに聞かれて、地雷を避けながら答え合わせをするときと同じような感情が喚起されるわけです。一方で、上司も「なんでコイツは組織と関係ない目標を決めてきてるんだろう」「全然期待水準に足りてないじゃん。言い訳ばっかりで全然挑戦しないな」と思うことになるわけです。でも人事に「部下の自主性を育むためにボトムアップで目標設定させてください」と言われている手前、決定プロセスを崩すわけにも行かず、無為な面談を繰り返すことになるわけですね。

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 しかし、目標決定プロセスにメンバーを参加させることで、メンバー自身が決めた目標に変えることが出来ます。意義の説明や難易度の調整などは会議の場で行う必要はありますが、これによって「勝手に決められた目標」ではなくなります。それによって、トップダウン型の押し付け感・ボトムアップ型の手探り感を排除することができるようになるわけです。


 また、「OKRでは目標は1つ」というルールによって、自然と「チームとして今何に取り組むべきか?」という目線での確認を行うことになります。そのため、チーム全体で優先度の判断軸が共有されます。判断軸が共有されるので、期中に当初予想していなかったことが生じたとしても「今チームで取り組んでいる目標達成の為に必要な行動か?」と考えられるようになるため、軸がぶれていってしまうということも少なくなります。

目標が達成されたかどうかを判断するために測定可能なKRを設定する

 Objective設定の後は、Key Results(主な結果。 Objectivesを達成できたかどうか判断する指標)の設定を行っていきます。

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このステップによって目標を具体化し、メンバーを行動に移していくことが可能になります。これは

目標を測定可能な状態にすると行動に移すようになる

という心理に基づいています。
 測定不可能な目標がどれだけ行動に繋がらないかは、過去に立てた新年の決意とかを思い出して貰えると良いのではないかと思います。ダイエットするとか、勉強を頑張るとかの目標を立てた経験があるかたは多いのではないかと思いますが、1月1日頃に立てられたこれらの目標は、往々にして初出社の日や新学期開始以降放置されることになります。
 これらの問題点は測定出来る状態にしないままにしておいたことです。どこまでダイエットするか、どこまで勉強を頑張るか、が決められていないので、目標を放置しても問題無い状態になっているわけですね。おせち料理の牛肉巻きゴボウを少し食べるのを我慢しただけでも「ダイエットをした」と自分に言い聞かせることが可能だからです。

測定可能なKR設定のために
 KRは、定性的なOをどうかみ砕いていくか?ということにつきます。「当社の製品を素晴らしいものにする」というObjectiveに対して「素晴らしいってどういうこと?」ということを考えます。それが例えば「UIやUXを改善して顧客が使いやすい状態にすること」なのかもしれません。そして「顧客が使いやすい状態になっていると胸を張って言うためには、どんな状態なら良いと言えるだろうか?」と考えていきます。そして、「5段階のユーザーアンケートで、使い勝手の項目が4.0以上」「継続契約率80%以上」といったゴールを設定していくわけです。KRを具体的で測定可能な状態にすることで、目標について深掘りをして考えるトレーニングになります。定量的に書けない

KRの階層化

場合は状態条件で記載する
 上記の例では目標を数値化しました。しかし、定量的に表現しようのない目標も存在します。例えば「人事制度を改定する」とか「LPを作成する」とかのようなものです。人事制度改定を無理矢理数値化するなら「1つ作る」とか「従業員満足度4.0以上」とかになりますが、これらのいずれも、恐らく意味のある目標にはならないでしょう。(1個を超えたからと言ってえらいわけでは無いし、人事制度に対する従業員満足度を上げたいがためにばらまき傾向の人事制度を作ることになる恐れがある)こういった場合はどうすればよいのかというと、測定するために「状態条件で記載する」となります。「2022年3月31日までに人事制度改定について取締役会決議を得る」といったようなイメージです。こうしておくことで、無駄な数値化(による目標自体のブレ)・なし崩しになるといったことを避けることが出来るようになります。

OKRは少し難しめにする

 OKRは「達成の自信度が50%位になるようにする」ことが理想的です。これは「今できるより少し難しめの目標を設定することで、成果が高まる」という人間心理に基づいています。いわゆるストレッチゴールの設定と言われるものですが、全員が全力で頑張ったとしても、出来るかどうか半々の確率にするというものです。

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 多くの目標管理制度では、トップダウンにせよボトムアップにせよ目標必達が大前提にあります。人事評価と連動させている企業では殆どの場合目標に対する“達成度”で評価をしています。120%達成なら期末評価はS評価、100~119%ならA、80~99%ならBとかですよね。しかし、こうした場合往々にして「本当は110ぐらい出来ると思うけど、低評価付けられたら嫌だし目標は100にしておこう」という動きが働きます。貯金というやつです。皆さんもやってきましたよね?私もやってきました。しかし、あなたが経営者だとして、好ましい人は以下の二人のうちどちらでしょうか?

A:120の目標を設定して115の成果を出した
B:100の目標を設定して100の成果を出した

Aさんの方が会社業績に貢献しています。しかし、評価をされるのはBさんの方であるというエラーが生じてしまいます。人事評価は給与に連動されることも多いので、高い目標を宣言すると給与が増えづらくなるということも起きるでしょう。

 また、ゴールについての人間心理について、以下の2つを認識しておくとよいでしょう。

「ゴール目前になると人間は頑張る」
「ゴールを越えると人間は手を緩める」

筋トレで1セット10回を目標に設定している人が、8回目ぐらいで「もう限界かも」と思っても、「あと2回だけだから力を振り絞って頑張ろう」となるようなものです。一方、ゴールを越えたときに余力があったからといって、淡々と記録を超え続けられるほど多くの人間は強くありません。100の目標を設定した人は100を超えると手を緩め始めます。目標を超えているのに120まで頑張る人は殆ど居ません。(もしあなたがそうだとしたら、かなり凄い人です)

 このように、OKRは業績評価という成果主義風の”達成度”評価から、成果主義にシフトするための考え方であるとも言えます。目標に対する達成度ではなく、本当の意味で成果にフォーカスする。そして、成果を最大化するために高い目標を設定するしくみと言えます。

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 しかし、やはり「有言実行」が素晴らしいという考えは非常に強力で、しかも達成度評価に馴染んでしまっている人からすると、それをやめて「成果にフォーカスするためにOKRに移行したい」と言っても、中々難しいかも知れません。ロシアワールドカップの時に本田圭佑選手が「優勝」という目標をブチ上げたときの感覚に近いと思います。割と世間は冷ややかな感じではありましたが、そこで「1勝1分1負ぐらいで、場合によっては2位通過位を狙えたらなぁーって思いますぅー」という目標だったらどうでしょうか。達成できたとして喜べるような状態ではなかったのではないでしょうか。(これでも凄いですが)優勝というちょっとあり得ないぐらいの目標を立てていたからこそベルギー代表とのあの接戦が出来たのではないかと思います。

OKRは全社に公開する

 OKRは全社に対して公開します。部署間での目標が透明になることで、縦割感が薄まる・OKRが相互にチェックされる・実効性が高まるといったことが期待されます。
 OKRを全社に公開することにより、隣の部署が全社のOKRに向けて何をやっているかを把握することが出来るわけです。OKRに対してズレたことをしていないか?固い目標を立ててしまっていないか?といった確認が行なわれるようになるため、よりOKRの実効性が上がります。組織単位で目標を宣言するということが同時に行なわれるため、他組織の手前「手を抜く」ということが出来ず、より行動に繋がることが期待されます(パブリックコミットメントの促進)。

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目標の進捗は毎週行なう

 OKRでは進捗状況を毎週確認します。原則は2回、チェックイン・ミーティングとウィン・セッションからなります。

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月曜日のチェックイン・ミーティング

 週の始まりである月曜日の午前中に行われるチェックイン・ミーティングでは、OKRの進捗状況を確認するとともに、設定したOKRを達成する為に今週何をするべきか、というアクションプランを作成します。これにより、組織とメンバーが取るべき行動が明確になるわけです。これは

「取るべき行動が明確になっていると、行動が促される」

という心理を活用しています。目標について合意はしている(つまり意欲はある)けれども、行動出来ないということはよくあります。


 例えば、自社の既存製品の売上が下火になりつつあるので、そろそろ新しい製品を市場に投下していかなければならないと考えているとしましょう。しかし、多くのメンバーは新製品開発なんてしたことがない…という状況だと、新製品開発の必要性は判っていても、何をしていいかわからないため行動に繋げられません。そのため、問題を分解し、行動計画に落とし込んでいくことで、行動を促そうというわけです。

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「既存製品に変わる新しい製品の柱を作る」などという大きすぎる目標を見ると足が竦んでしまうものですが、「まずは顧客の悩みを聞いてみよう」と言われれば少し行動に繋がってきますし、「インタビューできそうな顧客をリストアップしてみよう」ぐらいなら、さらに行動はしやすくなります。これを仕組みとして落とし込もうというのがチェックイン・ミーティングにおける行動計画の作成なわけです。

 また、

「他者の前で自分の計画を宣言すると、さらに行動が促される(パブリックコミットメント)」

という考え方が、さらに後押しをしてくれます。目標を自分の中だけで秘めていると、「誰にも言ってないしやらなくていいや」となってしまいます。しかし、全員の前で「私は○○をします」と宣言すると、簡単に諦めるわけにはいきません。何故なら他人から見られている(と感じる)からです。
 このように、チェックイン・ミーティングで、メンバーと一緒に今週行うタスクを明確にすることで、計画の進捗に向けた行動促進が促されるわけです。


金曜日のウィン・セッション

 一週間の終わり・金曜日の午後に行われるウィン・セッションでは、チェックイン・ミーティングで決めた1週間の行動計画に基づいた達成状況をメンバーに対して披露します。システムの構築ならば出来たところを紹介するのでも良いでしょうし、マーケティング・セールス用資料や、製品のプロトタイプでもなんでもOKです。今週これだけ出来た、ということをメンバーに対して見せる場です。日本の職場ではあまり行われてこなかった「頑張ったアピールの場」とも言えます。頑張ったアピールを制度化することで、前向きなモチベーション向上が期待されます。「メンバーに披露して、『スゴイ!』『カッコイイ!』と言われたいから頑張ろう」という気持ちを駆り立てるのがウィン・セッションの目的です。
 チェックイン・ミーティングのような計画進捗確認と行動計画作成の場は、気乗りがしないものです。難しい計画に取り組んでいるならば尚更です。しかし、加点法で、とにかくただ褒める場であるウィン・セッションは、気の重さを打ち消してくれることが期待されます。成果を認め、褒めていく。これによって動機づけるしかけがウィン・セッションと言えます。


2.OKRのメリット

これまでOKRの仕組みを紹介してきましたが、メリットを整理すると以下の様なイメージになります。

重要な⽬標に意識と経営資源を集中出来る

 一つ目は、分散しがちな経営資源を⼀番集中すべき⽬標に集中出来ることです。最近、多くの企業を悩ませるのは人手不足問題です。人手に限らず経営資源が余るほどあって困るという企業は稀です。しかし、実態は「あれもこれもやりたいけど」経営資源が足りない、という考えになってしまっているケースが多いのではないでしょうか。
 OKRに組み入れられた「一番すべきことを決めて集中する」という仕掛けが、重要度の低い業務に対して中止か延期を迫ってくれます。捨てること・諦めることは勇気が要りますが、あれもこれもに手を出して中途半端になってしまうよりは、本当にするべきことに集中し、成果を出そうという仕組みがOKRなのです。

⼤胆なゴールに挑戦し、成果を最⼤化出来る。

 二つ目は、成果が最大化されることです。OKRでは難易度の⾼い⽬標を設定することを⽬指します。これにより、期間の最 後まで全⼒で取り組む状況が作り出されるため、成果が最⼤化されるわけです。
 特に、ムーンショットと呼ばれるような(月に行くぐらい)壮大な目標を掲げた企業でOKRが採用されてきたのはこのためです。OKRの導入企業の代表例としてはIntel・google・Spotify・Twitter・Oracle、国内ならSansan・マネーフォマードといった企業が挙げられますが、これらいずれも大きな目標を立てて実現したという点が共通しています。Tina Turnerの曲に「What you get is what you see」というのがありますが、掲げてない目標以上の成果を挙げられることは滅多にありません。
 世界的に大影響を与えるようなムーンショットでなくても、新事業の立ち上げをやってみるとか、業界成長率が横ばいの中自社は10%売上増をするんだ、というのもまた大胆なゴールになったりします。

メンバーを動機付けしやすい。しかも頻繁に。

 三つ目は、様々なメンバーを動機付けしやすいという点です。OKRにはメンバーを動機づけるするための仕掛けが豊富に組み入れられています。これまで紹介したものだけでも「大義名分を理解させる」「到達地点を明確にする」「全員で計画を立てる」「パブリックコミットメントをさせる」「行動を明確にする」「出来たことを褒める」等が挙げられます。
 そして、それが3ヶ月に1回と、週に1回行われることとなります。定性的な目標が好きな人も・定量的な目標が好きな人も、自身の受け持ちの範囲を頑張りたい人も・チームで頑張りたい人も、計画に向けて淡々と進めたい人も・頑張ったことを褒めて欲しい人も、非常に様々な性格の人をモチベートするための仕組みが揃っている、それがOKRの考え方です。

頻繁な軌道修正が可能。

 四つ目は、頻繁な軌道修正が可能であるという点です。OKRは原則3ヶ⽉程度のスパンで⽬標を設定し、週次で⾏動計画を作成します。 これにより、⽬標達成の為のマイルストーンと成果測定が頻繁に⾏われることとなります。期初に1年間の目標を立てて終わりではなく、3ヶ月の単位で目標を再度立てる。これにより、目標が期中に陳腐化したとしても3ヶ月で済みます。これは変化が激しいVUCA時代には見過ごせない点です。2020年はコロナによって多くの企業の計画が台無しになりました。3月決算の企業では、事業計画をfixしたであろう2月頃から雲行きが怪しくなり、なし崩し的にリモートワークに突入、営業スタイルも変更を余儀なくされた状態で、期初に立てていた目標が有効であり続けたのはどれだけの企業だったでしょうか。コロナ禍がおさまったとしても、これから先同様の感染症が生じたりしたら、あるいはその他の天災が起きたり、破壊的イノベーションをひっさげた企業があらわれたりすることは避けられないでしょう。その場合に、柔軟に軌道修正出来る仕組みを持っておくというのは非常に有効だと思われます。BCP計画というと、防災用品や緊急連絡体制・サプライチェーンの管理などが想起されがちですが、BCP(Business Continuity Planning=事業継続計画)としてOKRを考えてもよいかもしれません。

3.OKRのデメリット

これだけのメリットの詰まったOKRの仕組みですが、デメリットも存在します。

運用負荷が高い

 一つ目は、OKRは運用負荷が非常に高い仕組みであるという点です。負荷が上がる対象は主に①現場 ②人事の二つですのでそれぞれ説明すると以下の様になります。

①現場の負荷向上

 OKRは目標の設定頻度及び進捗確認頻度が上がります。
 目標管理制度を入れている企業の多くは、期初の目標設定と期末の最終確認のみを課しているケースが多いと思います。なのでそれぞれ年1回となりますが、OKRを導入すると四半期スパンのため年4回となり4倍になります。
 また、進捗確認はさらに増します。従来は「全くしない」「中間期に1回」の企業が最も多く、月次1on1ミーティングを導入している企業ならかなり手厚い方といった状態です。それが毎週1回(年間52回ぐらい)となるのです。この負荷上昇について、現場の合意を得ることがOKR導入のネックと言えるでしょう。

負荷増加

 現場の負荷上昇に対しては、高い成果を創出するのが大切なのだということを継続して訴えることが必要不可欠です。成果を高めるために目標設定回数を増やす・成果を高めるために進捗確認回数を増やすと言うことを理解してもらい、現場での実行に繋げていくわけです。


 また、管理職の役割を見直すことも必要になるかも知れません。管理業務に従事している管理職は稀で、多くの企業ではプレイングマネージャーが主となっています。プレイングマネージャー状態になっている管理職に対し、OKRを提案すると「毎週ミーティングなんてやってられない」といった反発が起きます。こういった発言するということは、管理職の前提として「組織の管理よりも大切なことがある」と考えているということに他なりません。そのため、管理職の役割を、管理職個人の成果も含めた組織での成果創出から、組織での成果創出に変えていく必要があります。そして、成果を挙げるための仕組みとしてOKRを使いましょうということを伝える必要があります。

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 現場での導入を促進するためには、現場に「OKRって、意外と役に立つやん」と思わせる必要があります。成功は人を何より動機づけるからです。そのためには、OKRのオンボーディング(導入)フェイズにおいて、OKRの運用担当部署がしっかり教育・啓発・コントロールして、成功出来る素地を作り出していくことが何より欠かせません。

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②人事の負荷向上

 OKRは人事の負荷も上昇します。業績管理制度における人事部の業務負荷と言えば、期初の目標設定アナウンス・設定シートの回収・リマインドといったことが挙げられますが、こちらも目標設定アナウンスを行うべき回数が増えます。また、リマインドが必要となる回数も増えることが想定されるので、負荷はかなり上昇すると言えます。

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 これに対しては、OKRの専任担当者を置くといったことや、システムを導入するというのが解決の方向性として挙げられるでしょう。
 OKRの専任担当者には、OKRアンバサダー・コーチのような役割を任命し、日々OKRの活用方法を啓発・ノウハウの提供をしつつ、OKRの添削や週次ミーティングにオブザーブとして入り、運用の質を向上させていくと良いでしょう。
 また、OKR専用のシステムを導入することで運用負荷は格段に下がります。目標設定などで、よくあるプロセスは「組織で目標を設定し、WordやExcelファイルに記入する」→「上司が組織を代表して人事部にファイルを添付して送付する」→「人事部がファイルをリネームして保存」といった手順ですが、クラウドベースの仕組みを入れておけばその辺りは保存・同期・通知が同時に行われるようになるため、非常に楽になるでしょう。

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目標達成度が50%程度の目標を立てることに対する気持ち悪さ

 これまで紹介してきたように、OKRでは目標達成の可能性が50%ぐらいになるようなストレッチな目標設定を求めることとなるため、「有言実行」文化に馴染んだ企業では、「目標が達成できないかもしれない」という気持ち悪さを抱え続けることになり、これがアレルギー反応として出ることがあります。
 例えば、「人事は高い目標を設定しろと言ってるけど、ウチの部署は固い目標を設定しておこう」としてしまったり、チェックイン・ミーティングにおいて目標未達者を過度に叱責して無理矢理目標達成させるといった行動を取ってしまうようなことが起きえます。このような考えを放置してしまうと、折角のOKRは出来の悪い目標管理制度になってしまいます。

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 OKRに大切な大言壮語出来る文化(心理的安全性)を作り、維持し続けるためには、現場に対する教育・啓発・コントロールを行うことが欠かせません。マネジメントスタイルの変革に向けた研修を行うことが有効なこともあります。

食い合わせの悪い既存制度が存在

 OKRは強力なツールですが、現在日本で主流な人事制度と食い合わせが悪いケースも多々あります。「業績評価に目標達成度を入れている」場合などが代表例です。これまで消化してきたように、達成度で評価されると目標は下止まりしますので、この場合はOKRの効果を最大限活かすことは難しくなるでしょう。それが報酬と連動していたりすると更に相性が悪くなります。また、管理職への登用基準などにも一部変更が必要になるケースもあるかも知れません。例えば一定年齢で確実に管理職になるだとか、過去に大きな成果を出したら管理職になる、といったような制度を導入している場合、いざOKRを組織に入れていくとなったときに、OKRのマインドを無視した運用を行ってしまうかもしれないからです。

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 これらのケースがある場合は、OKRのメリットと現在の制度のメリットとを比べてどちらを優先するべきかの判断をしていくことが良いでしょう。

4.OKR導入が向いている企業

 OKRが自社に向いているかどうかは、OKR導入によるデメリットを上回るだけのメリットを期待しているか?ということに尽きます。(OKR以外の制度でも同じことが言えますが)例えば以下の様な企業にはOKRが向いていると思われます。

・従業員はいつも忙しそうにしているが、会社としてあまり成長していない。
・“カタい”目標数値を設定しがちで、毎期目標達成しているが、企業の成長が限定的。
・いつも沢山の目標を設定するが、中々達成できないでいる。
・目標達成の為の人手が不足していると感じるが、採用が上手く行かない。
・従業員それぞれに目標を設定させているが、企業業績にあまり影響しない目標を設定してしまう。
・早く事業を軌道に乗せたい/シェアを高めたい。
・従業員が熱意を持って業務に取り組んでくれないと感じる。
・目標が現場任せ・部下任せになっており、なかなかやり遂げられない。
・自社の軸がぶれてしまっていると感じる/ぶれて後悔したことがある

 事業規模や人員数に関してはあまり制限はないかなと思います。スタートアップの方が向いているかも知れません。OKRでは文化祭準備の時のような雰囲気がマッチしているからです。ただ、大企業には適用不可能なのかというとそうでもありません。GoogleやIntelでも導入していますし(そっちが本家なんですが)日本だと花王とかも導入を決めています。
 ただ、大企業が導入に苦労するとしたら、既存の目標管理制度に長年親しんだ管理職が多いために、マインドセットを変えて貰う必要があるという点です。

5.OKR導入から活用までのステップ

 実際にOKRの導入をするにあたって、すべきタスクと課題点を紹介していきます。 OKR導入のためには、社内の意思決定者から導入の合意を得、導入決定後に社内に浸透させ、OKRを設定し、週次ミーティングを行い、運用を改善するという流れを辿るのがスムーズです。

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導入意思決定

 OKRを導入したいと思ったとき、導⼊について社内で合意を得る必要があります。意思決定者が多数いる場合、全員から完璧な合意を得ることは難しいにせよ「やってみようか」と思ってもらわなければ定着は難しいでしょう。何故なら、OKRの「実現可能性が半々ぐらいの高い目標を目指す」「週次ミーティングで進捗を確認する」という点は、経営層や管理職のマネジメントや仕事に対する考え方の抜本的な変革を求めることになるからです。目標との対比ではなく、成果創出にシフトするというのは簡単そうで難しいものです。
 そのためにはOKRが⾃社経営⽅針や経営課題の解決にマッチするという確信を持ち、決裁者や周りのメンバーに対して伝えることが不可欠です。また、導⼊時期や導⼊までのスケジュールを作成する必要があります。
 このステップでよくあるトラブルには、(あなたが人事部なら)経営層から理解を得られない・(あなたが人事部以外の方なら)⼈事部から理解を得られない・既存⼈事制度との折り合いが付かない、OKRとどちらを優先すべきか判断できない・運⽤や導⼊までのスケジュールが⽴てられないと言ったものが挙げられます。

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社内浸透

 OKR導⼊について社内での決裁が得られたら、OKRの意義や進め⽅について現場管理職に理解・腹落ちをさせる必要があります。そのための基本的な方法として説明会の実施や、管理職向けに研修を実施する等の方法が考えられます。そのためには説明資料や研修資料の作成、OKR記入のためのフォーマットや記載例などを作っておいてあげるとイメージが促進されやすいです。OKRに限らないですがよくわからないものに対して人間は拒否感を示し「不要なものである」と感じてしまう傾向があるため、できるだけ判りやすくしてあげるようにする必要があるわけです。
 このステップでよくあるトラブルには、浸透施策実⾏のリソース不⾜(社内で研修を内製できない・説明会や研修を複数回実施するための時間を割けない)や、現場の理解が得られないというものが挙げられます。

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OKR設定ミーティングの実施

 OKRは説明して終わりではありません。現場管理職が社員を集め、OKRを設定することでOKRがスタートします。またOKRは設定するだけでなく、OKR設定プロセスを通じて、メンバーをモチベートすることが求められます。
 このステップでよくあるトラブルには、現場がOKRのルールを理解出来ないまま進めてしまう。・現場任せにした結果、OKRが実⾏されず形骸化してしまう・OKR実施に前提となる能⼒の不⾜(⼼理的安全性・深掘りしたKR設定など)といったものが挙げられます。
 これに対しては、OKRの継続的な啓蒙や能力獲得の為の支援、人事部による実施のチェックが欠かせません。人事部のチェックでは、実施しているか否かの量的確認だけでなく、実施内容や進め方に関する質的確認も必要となるでしょう。質的確認の手法としては、設定されたOKRを読んで確認するのが良いでしょう。ただしそのためには人事部にも事業に対する理解が必要になります。また、設定プロセス自体が適当だったか(メンバーがちゃんと参画して、わくわく感を持たせながら進められたか)については、メンバーに対するアンケートを取ったり、設定会議にオブザーブしてしまうという方法が考えられます。アンケートは全員に簡単に行えますが、オブザーブは全部署に対して行なうのは難しいので、部門を限定して行う方法が良いでしょう。オブザーブを行なうと、始めは拒否反応を示す部門も多いですが、数回繰り返すと慣れてきて「二回連続じゃんか。ウチの部署気に入った?」「最近全然ウチの部署に来てくれないじゃん」等の会話が交わされるようになってきます。

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チェックイン・ミーティングとウィン・セッションの実施

 OKR設定後、毎週現場管理職が社員を集め、OKRの進捗具合について確認することが必要です。OKRは必達目標を立てるわけではなく、「出来るかどうか半々」な目標を立てることになるため、ともすれば目標未達を当然と考えるような風土になってしまう可能性も持つからです。そのために必要な取組が週次ミーティングであるチェックイン・ミーティングとウィン・セッションです。また、計画達成の為に必要に応じて軌道修正を⾏う・成果を報償しモチベートするというサイクルを定着させていく必要があります。
 このステップでよくあるトラブルには、OKRの意義と進め方について現場の理解が不十分であったり、忙しさ等による形骸化が起きる・部下へ過度な叱責をしてしまう。(それにより、ストレッチな⽬標に向けてチームで努⼒するOKRの良さが失われ、固い⽬標を設定するMBOへの回帰が⽣じてしまう)というものが挙げられます。

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運⽤改善と制度変更

 OKRの運⽤状況を把握した上で、OKR活⽤のために不⾜している点があれば改善を行なう必要があります。フォーマットが使い辛いとか、ファイルの収集が使い辛いといったようなものですね。使い辛いものは徐々に使われなくなっていくのが世の常です。また、もしかするとOKR以外の人事制度を変更するなどの対応が必要なるかもしれません。
 このステップでよくあるトラブルには、適正な運用維持(OKR記⼊フォーマット回収と管理及び、内容の精査)のためのリソースやノウハウの不⾜・現場からの声に押され、OKRの意義を失わせてしまう変更を加えてしまい、OKRが形骸化するといったものが挙げられます。

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6.さいごに

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当社はOKR導⼊検討から導⼊後の運⽤⽀援までワンストップで⽀援するコンサルティングサービスを提供しています。「自社にOKRを入れた方が良いか?」「OKRを入れてみたが上手く行かない。何を改善すれば良いか?」等、些細なことでもお気軽にお問い合わせください。

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note|仕事依頼

*お問い合わせ内容は「サービスについて」とし、要件のどこかに「OKR」の三文字を含めて頂くとスムーズです

セレクションアンドバリエーションシニアコンサルタント・中小企業診断士
山本遼

Ryo Yamamoto |OKR導入コンサルタント
セレクションアンドバリエーション株式会社 マネジャー|組織の成果創出のための仕組みを導入から活用までワンストップでコンサルティングするサービスをやっています。お問い合わせはhttps://sele-vari.co.jp/