見出し画像

五味 ~沈香の香り~

六国五味(りっこくごみ)という言葉があります。
これは、香道により作られた言葉であり、沈香の選別により生まれました。
香道での五味とは、甘味、辛味、酸味、苦味、鹹味(しおからい)で香りを表現する方法になります。(六国についてはまた別の機会に話します。)

五味についての説明が初めて出てくるのは、江戸時代はじめの伝説的な香人である米川常白が書いた『六国列香之弁』の”五味之弁”です。

「甘は蜜、苦は黄檗(おうばく)、辛は丁子、酸は梅、鹹は汗拭」

解説するとすれば、

甘味 はちみつを練る際に感じる香り
苦味 黄檗を煎じ口に含んだ時の苦味の感覚 (黄檗は漢方薬)
辛味 丁子を口に含んだ時の、ピリッといがらいような感覚
酸味 梅干しを食べた時の酸っぱさの感覚
鹹味 汗を手ぬぐいで拭ったときに感じる香り

になります。

余談ですが、汗には香りは無いそうで、細菌が汗や皮脂を餌にして作り出した匂いだそうです。

話を戻しまして、嗅覚や味覚もそうですが、人の感じ方は千差万別です。
そのため、香りの表現を共有するためには基準となるものが必要で、今でも沈香の香りを表現するのに五味を使用しており、お香の世界では“六国五味”は画期的な発明なのです。

昔の方は本能的に香りを味で分けることを選ばれたのだと思います。
なぜなら、味覚と嗅覚は密接にかかわっており、味覚は95%以上嗅覚で感じているとも言われます。
鼻をつまんで食べたときに味を感じないと言われるのは、そのせいなのでしょう。
味覚との接点をもう少し見ていくと、食べ物にも五味はあります。
舌にある味蕾から味覚神経により認識できる味が、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味です。
また、味を表現する中に「風味」と言う言葉があります。
これは香りなどの味覚以外の嗅覚や視覚、記憶などの感覚も含めて味を一つと捉え、食材のおいしさを伝えている言葉になります。

味の表現が豊かな人は、香りの表現も豊かで的確に表現できるとも言われています。
そう考えると、“味”と“香り”は近く等しい感覚であると捉えても良いのかもしれません。

これからの食事では、食べ物の香りを今よりも楽しみたいと思います。

沈香についてもっと知りたい方は以下のいつきのコラムへ

沈香以外の”香木”について知りたい方は以下のいつきのコラムへ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?