見出し画像

24.7.2020 雨の朝

目が覚めたら水の音が聞こえた。
しかも、けっこう景気よく降ってる音。
通りに出た時の足元を想像してもう一度枕に顔をうずめて、休んでしまいたい気持ちに抗う。

まぁ私は休みなんだけどね。
皆さんより一日早いソンクラーン休暇。嬉しい6連休のはじまりは雨。

私は休みだけど子どもたちを送り出したらそのまま出かけるつもりでいた。
朝からカフェで作業しよう、と決めていたので。
予定外の雨に少しだけ挫けそうになったけど、貴重な時間を浪費したら後悔しそうだったので起き上がる。
早く準備してと子どもたちを急かしながら自分も慌てて支度するいつも通りの朝。

コンドミニアムのエントランスを拔けた先は川になっていた。
どうやらけっこう長い時間降っていたらしい。
想像していたよりも川は深くて、一番浅いところでもくるぶしまで浸からないといけない状態だった。

私の住むソイ(路地)はたくさん雨が降ると冠水する。
用水路の水が溢れるし、隣の民家は庭に溜まる水を勢いよく道路に吐き出すし。
わりと気に入っている家の、一番不満なところかも。
綺麗な水なら足を浸けるのにさほど抵抗はないけど、残念ながらそうではない。

長靴を履いた警備員さんが「ブーツ!」と言って自分の足を指差す。
持ってないんだよねぇ。やっぱり買わないとかな。

少しでも浅いところをと、川を覗き込みながらうろうろしてたら警備員さんがちびこい方を抱えてザブザブと川を渡ってくれた。
道を渡ったところが校門なので本当に目の前なんだけど、足を浸けずには辿り着けない。
私はサンダルだからまだいいけど(嫌だけど)子どもたちは靴と靴下。
でっかい方はどうにもならんし、これは靴と靴下を脱いで手で持って裸足で渡って学校で足を洗うのがいいだろうか、と数秒悩んでいたら、長靴を履いた警備員さんが長男をおぶってくれた。
重いのに。
怖くてしばらく計ってないけどたぶん40kg近くありそう。
そして有り難すぎる。

久しく抱っこやおんぶをされていない長男がやたらと嬉しそうで、「楽しかった!」と笑顔になっていた。

私もおんぶして〜とは流石に言えないのでくるぶしまで浸かって道を渡り、学校の入口でちびっこを上級生に託して任務完了。
校門前の川をひと睨みして、意を決して歩き出そうとしたところで後ろから来たバイクが私の前で停まった。
後ろに乗りな、と言うその人を私は知らないけど朝の学校から出て来るのだから生徒の父兄だろう。
お礼を言って乗せてもらった。
ザブザブと水を割ってゆっくりと進むバイク。
見知らぬ人の背中。

そこまで乗せてくよって、こういうことが何度もあったし、たぶんこれからもお世話になるんだろうと思う。
同じコンドに住む人。学校の父兄。顔見知りのバイタクのお兄さん。オフィスの下の階の会社のロゴが入ったジャケットを着た人。少しだけ繋がっている、名前も知らない人たち。

道にできた川がちょうど途切れる辺りで、傘を差した中学生ぐらいの男の子が歩いて来るのが見えた。
これから学校へ行くんだろうけど、この先は川だ。靴が濡れてしまう。かわいそう。と思った瞬間、バイクの前をゆっくり進んでいた車が停まった。
車の主が窓を開けて男の子に話しかけると、男の子がワイ(胸の前で両手を合わせること)をした。
この子を乗せてUターンして学校まで送っていってあげるんだろうことはすぐに理解できた。
車のドアが開く。

通りかかったその瞬間にこういう判断ができるタイの人が本当にすごいなっていつもいつも思う。
困っている人にサッと手を差し伸べるのに迷いも躊躇もない。当たり前のように、考えるより先にといった感じで行動に移す。
憧れて止まないところ。
私だったら助けようかなって思っても一旦通り過ぎて考えて戻ってきたりしてしまいそうだから。
タイ人みたいになりたいなぁと思うし日本にいた頃よりも前進はしつつあるけど、瞬発力がタイ人の足元にも及ばない。
練習あるのみ!とは思ってるんだけど。

そんなことをまた思った雨の日でした。

夜は久しぶりの川沿いへ。
一旦晴れたのにまた降ってしまった雨は、レストランに着いたら止んだ。
対岸のワットアルンは今日も美しかったです。
楽しい時間と綺麗な景色と心地よい風。
心が整いました。

サポートしていただけたら腰を抜かすと思います。