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読みにゆく

梅雨の中休み、近くの展望所へ読書をしにいった

使い古した小さなレジャーシートとコーヒーのセットを車に積み、そよぐ風のなか外で本を読むのがすき

大人になってから得た贅沢な時間だ

窪美澄『じっと手を見る』

窪さんの表現は性描写が生々しいものがあり、自宅で読むのがなんだか恥ずかしくなる

だからと言って喫茶店とゆうのも同じような恥ずかしさを感じたため、この日は外で読むことにした

物語の大部分が展開される田舎特有の閉塞感には共感が湧きあがり、もう長いこと訪れていない地元の匂いまで運んでくる

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この日は平日というのに観光地である展望所には県内外から多くの人、時期的に接触を減らそうと車のなかで3時間ほど集中して読んでいた

窓を開けていたから途中で小さなハチや蝶が道に迷ったように、わたしの車を見物しては風をよんで草原へかえっていく

読後に感情移入できるほど親近感を抱く登場人物はいなかったが、気持ちを伝えたり迷ったりする場面にはズキズキしたものを感じた

なによりもこの本を買ったのは、書店でたまたま開いてしまった最後のページを見てしまい

物語のあらすじさえ知らないまま、この表現に背中を押された気になったからだった

「そばにいてほしい」
自分の声が自分の声じゃないように聞こえた。海斗は何も言わなかった。もしかしたら聞こえなかったのかもしれない。けれど、言葉にできたのだから、私にとってはもう十分なのだった。

5月の中旬だったと記憶しているけれど、ちょうどその頃モヤモヤした感情を何処へ流せばよいやら誰にも相談できず悩みあぐねていた

言葉にしたかった当時のその感情を仕舞っておこうか、それとも自分の中から相手へ放つのか決めかねていたわたしは書店で開いてしまった彼女の創作物に助けられる

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梅雨明けが近いのか、月末の天気予報には太陽が姿をみせている

はじまった連休で職場は多くのお客さんで賑わう

この連休が終わったら一度ゆっくり過ごそう

どこかすきな景色の中でまた本が読みたい

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