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東京都美術館「ゴッホ展─響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」

東京都美術館で開催されている
「ゴッホ展─響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」
を観に行きました。


ゴッホ作品の世界最大の個人収集家
ヘレーネ・クレラー=ミュラーが初代館長を務めた
クレラー=ミュラー美術館から選りすぐりのゴッホ作品が
紹介されています。
またクレラー=ミュラー美術館のゴッホ作品以外の
19世紀~20世紀初期の絵画、ファン・ゴッホ美術館から
出品された作品など、西洋近代絵画の幅広い名品が
堪能できる展覧会です。

展覧会の概要、訪問状況は下記の通りです。

【概要】
会期:2021年9月18日(土)~12月12日(日)
休館日:月曜日 ※ただし11/22(月)、11/29(月)は開室
開場時間:10:00-17:30(入館は17:30まで)
料金:一般2,000円、大学生・専門学校生1,300円、65歳以上:1,200円 ※高校生以下無料、日時指定制

【訪問状況】
日時:日曜日正午
滞在時間:12:00~14:30 
混雑状況:チケットが完売の時間帯が多く、
     この時間しか入場できませんでした。
     会場内は混雑しているというわけではなく、
     余裕をもって見ることができました。
感染症対策:入口での手指の消毒、検温がありました。
写真撮影:不可

展覧会の構成は下記の通りでした。

1.芸術に魅せられて:ヘレーネ・クレラー=ミュラー、収集家、クレラー=ミュラー美術館の創立者
2.ヘレーネの愛した芸術家たち:写実主義からキュビスムまで
3.ファン・ゴッホを収集する
 3-1.素描家ファン・ゴッホ、オランダ時代
 3-2.画家ファン・ゴッホ、オランダ時代
 3-3.画家ファン・ゴッホ、フランス時代

現在世界中で絶大な人気を誇るゴッホですが、
ヘレーネは今日のようにゴッホの評価が高まる前から
作品に魅了され収集を開始したそうです。
ゴッホの初期の素描から最晩年の油彩画に至るまで
画業全期間の作品が網羅されていて、
ヘレーネのゴッホ愛がヒシヒシと伝わってきました。
作品は年代ごとに体系立てて展示されており、
その時々でゴッホがどんな画風を目指していたか、
そのためにどんな工夫を凝らしたかが感じられ、
非常に内容が濃かったです。

以前別の展覧会でオランダ時代のゴッホの油彩画を
見たことがあり、人物の手足の大きさが強調されていて
ポリゴンのようだと思った記憶があります。
キャプションによるとゴッホはドラクロワの影響で
形態を輪郭でなくボリュームで捉えるということを
意識していたようです。そういった観点で見ると
あの厚ぼったい手足の描写も納得がいくなと思いました。

ゴッホというと鮮烈な黄色と厚塗りをイメージしますが、
パリ時代の作品は明るく軽やかで新鮮でした。
下記の作品も多彩な色が穏やかなトーンでまとめられており、
こんな作品もあるんだと思いました。

画像2

フィンセント・ファン・ゴッホ「青い花瓶の花」1887年
クレラー=ミュラー美術館
※グッズの絵葉書を撮影

アルルに移って以降の作品はザ・ゴッホといった感じで
まさにゴッホ作品として思い浮かべるものでした。
特に印象に残ったのが次の作品。

画像1


フィンセント・ファン・ゴッホ「夕暮れの刈り込まれた柳」1888年
クレラー=ミュラー美術館
※グッズの絵葉書を撮影

お日様パワーが強烈すぎます(笑)。
この過剰なエネルギーが魅力の一端だと思いますが、
なぜか力強いものに憧れるゴッホ自身の
寂しさも感じられました。このあたりが日本人を
惹きつける要素なのかもしれません。

ゴッホ以外の作品も楽しめたのですが、
特に印象に残ったのが点描の作家の作品が
4点並べられたゾーン。点描といっても
作家によって点の大きさ、色彩の写実性に
個性が出るなと思いました。
私は特に、
アンリ・ヴァン・ド・ヴェルド「黄昏」1889年 クレラー=ミュラー美術館
が気に入りました。夕暮れ時のわびしさがたまりません。

全体として非常に満足度の高い展覧会でした。
チケットの倍率は高いですが、いける方は是非!

以下余談です。
ゴッホは存命中絵が1枚しか売れなかったという伝説(?)がありますが、
小川敦生著「美術の経済“名画"を生み出すお金の話」(株式会社インプレス)という本で美術史家・新関公子氏の新しい解釈が紹介されていました。
実はゴッホの弟の画商・テオが売り時を図って絵を売るのを
セーブしていたのではないかとのこと。
真偽のほどは分かりませんが、作品だけでなく
背景について想像を巡らせるのもアートの楽しみ方の一つだなと
思わされました。

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