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知床連山縦走

日程:1991年8月17〜19日
メンバー:ミツルさん、Yさん、ぼく

北海道、オホーツクは8月に入っても夏らしさがなく、このまま秋になるのでは?と心配していたのもつかの間、お盆頃からとたんに暑くなりだして、今回の縦走では日焼けと水の確保にとても苦しんだ山行になりました。
遥かなチャチャヌプリと並び続く斜里岳までの山並み、オホーツク海の青色、夏の日差しと秋の高い空、ハイマツの匂い…

8月17日(土)
網走を朝5時に発ち、知床へ向かう。途中、羅臼岳から縦走をするという青年を乗せて岩尾別温泉・木下小屋に着く。新築したログハウスの後ろから出てきた法量さんに「クマが出てきたら、Yさんを差し出せ」という有難い?アドバイスを受けて、車一台を置いてカムイワッカへと向かう。
8時前に入山届けを記入して硫黄山へ登りはじめる。Yさんはご年配の女性のため、共同装備や水はミツルさんと分担する。
ミツルさんが腰の調子が悪いようで苦しそうだ。行程に余裕があるし、天気も食糧も大丈夫なので、ゆっくり後ろに広がるオホーツク海や足下のアリや昆虫などを見ながら行く。
縦走を終えて下山してくる人たちと水場の情報を交わすたびに、これからのルートの水の確保と真上に輝く灼熱の太陽が不安になってきた。
ミツルさんは調子が悪く、すぐ先の硫黄沢にテントを張ろうかと相談する。
硫黄沢へ下りてゴロゴロした涸れ沢に13時に着いて、「行けるところまで行こう!」ということになった。水の節約と、今晩はYさんが作ってきてくれたおにぎりで過ごそうと決め、またゆっくり登り始める。
沢に湯が少し湧いていたので、掘ってわずかな露天風呂を作り、一人で入ってはしゃぐ。まるで子ども。
ミツルさんが水場は確実にある!という第一火口までがんばろう。
沢もだんだんザラザラした砂礫になってきて、硫黄山のピークも右手にそびえている。左の火口縁への稜線へ飛び出して、ルートを右にとる。
登山道はしっかりしている。
下りてきたドイツ人としばしのおしゃべり。
ザックをデポしてYさんと硫黄山ピークへの岩場を登ってゆく。
チシマギキョウの咲き乱れる、意外と広い山頂に16時15分に着く。1563m。斜陽の向こうに羅臼岳、遠音別岳が連なり、斜里岳も見え、知床五湖が光を反射している。ルシャ低地帯の雲海の向こうに、近いようで遥かなる青みを持つ知床岳が横たわっている。
凹部を右に見て少し登り、縦走路と第一火口へと分ける標識にぶつかり、右へ下りてゆく。
下りきってロープにぶつかり、左のハイマツ帯に入り、下ってゆくと知床の奥座敷のような第一火口の雪渓に至る。クマ出没の可能性が高いのがうなづける。冷たい水で生きた心地になる。エゾコザクラが咲いている。
夕闇が迫まり、テントを張る。夕食、19時就寝。

8月18日(日)
4時30分起床。火口にまだ朝日は届いていない。涼しい。雪渓から融けて流れる水も一夜明けた朝には流れていない。
朝食後、6時に出発。昨日のコースを分岐まで戻り、縦走路をたどる。6時20分に広い眺望の効くところに出る。ここから小さいキレットを下降してゆく。小さな雪渓がある。シレトコスミレの咲く稜線を歩く。右側に第一火口への踏み跡がある。左側は滑落注意の崖になっている。目の前の知円別岳の山腹をトラバースして、7時50分に分岐に着く。一人で東岳まで30分で往復してくる。
ハイマツ帯の中を少し下降して、平坦な広い道をてくてく歩く。今度はハイマツ帯の登りになって、また平坦。また登りになってを繰り返して9時20分、南岳に着く。国後島から渡ってくる風が心地よい。オチカバケ岳のふもとに二ツ池が青空を映して見える。池の南方約100mの辺りに大きな雪渓が見える。二ツ池へハイマツの根を足場にして下りてゆく。
10時20分、ワタスゲ咲く二ツ池に着く。北側の池は干上がっている。水はややぬるい。のんびり休む。
オチカバケ岳への登りに小さな雪渓がある。11時25分、頂上の横を通過。サシルイ岳が大きく眼前にそびえている。コルに小さな池が見える。サシルイ岳の登りに長大な雪渓がある。また下降して、さっき確認した池を見るも草で一杯だった。
平坦な道をゆき、ダケカンバのブッシュに入り、沢になる。雪渓からの冷たい水で一息つく。
ここからサシルイ岳への登りは雪渓を進み、ミヤマハンノキのトンネルへ入って高度をかせぎ、ピークの隣に立つ。一人でサシルイ岳のピークを往復してくる。
ここまで来ると登山者も多く、羅臼岳もさらに近くなる。
パイプで工夫されていても水のない三峰のキャンプ地まで下降して、双耳峰のような三峰の不思議な台地をくぐり、15時、羅臼平に到着。
ミツルさんが着くまでに、と羅臼岳のピーク1661mまで45分で往復してくる。景色を楽しむ余裕はなかった。途中の岩清水は涸れていない。
夕方、ウイスキーとつまみで暮れゆくダイナミックな夕空と星を眺めながら、山の話に花が咲く。
ぜいたくな時間だ。
夜、何者かと動物の度重なる訪問?に眠りも浅い。遠くで聞こえるカララランという何かをひきづってゆく物音と共に知床、羅臼平の夜も更ける。

8月19日(月)
今日の行程は下山だけなので、メシを炊かずに余ったパンを食べて、ゆっくり朝を過ごす。
出発の準備をしていると、キツネが現れたので、こらっ!と怒鳴りまくる。
7時25分、出発。今朝登ってきた元気な人たちとすれ違う。
8時5分、水の涸れ始めた銀冷水に着く。
10時35分、日差しが暑くなってきて、エゾゼミのがんがん鳴く中、木下小屋に到着!
法量さんに挨拶して、温泉に入って3日間の汗を流す。
車を取りに行く途中、広がる知床連山のパノラマに、昨日まで居た、あの稜線をとても懐かしく感じられた。

知床硫黄山にて
硫黄山と二ツ池を振り返って
テント前でメモをとるぼく
最終日、出発前 ミツルさんの腰を揉むぼく


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