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引越しウツになった話


私は心療内科クリニックに駆けこんだことがある。
引越しウツで。


12年前の早春、2月の末に私は旦那さんの引越しで大阪から東京へ引越してきた。

うちは私が京都出身、旦那さんは新潟県出身で、東京には縁もゆかりもない。
結婚後は大阪在住、転勤があるなら新潟だろうと思っていたのに、東京?!
うそ!
ほんと??
まさかの東京かい!


関西人は地元が好きな人が多い。(私調べ)
特に大阪と京都、神戸のあたりはそうなんちゃうかな。
私も例にもれずで、東京に転勤と聞いての第一声は「えー!嫌だーー!」だった。
(今はそんなことはありません。東京、楽しいです。)

だって東京って見渡すかぎりビルばっかりでしょ?
そんなの息苦しい。
京都はどこにいても山が見える。
緑がなくちゃ生きていけない。
見渡すかぎりビルって、そんなの無理。
(今は見渡す限りビルばっかりなのは都心だけで、その都心も意外に緑が多いと知ってます。ちなみに今住んでるところは緑に加えて畑もある。)

それに東京の人って怖そうじゃない。
標準語って冷たい感じがするし。
(今は東京の人も関西の人も同じ人、ちょっと人間関係の距離感が、とくに初対面のときの距離感が違うだけだって知ってます。)


東京転勤の辞令が出たのが12月初め。
それからが大変だった。

東京着任は1月1日。
私も仕事をしていたので、とても1ヶ月で引っ越すことはできない。
旦那さんだけ先に単身赴任してもらって2ヶ月遅れて引越し本番となった。
私は結婚するまで実家暮らしだったので本気の引越しは初めてだった。


あの時の引越し準備、ざっくりと書き出してみると。

・旦那さんの単身赴任荷造り
・引越しって何すればいいの?ネット検索
・11年住んだ家の片付けしながら年越し
・日帰りで東京、賃貸物件まわり

(年が明けて、ここからは私ひとり)
・諸所への連絡、手続き
・仕事の業務引継ぎ、1月末で退職
・引越し業者見積もり、選定
・引越しが一泊二日になるので、ホテル探して予約
・暇を見つけては荷造り、荷造り、荷造り
・大型ごみ廃棄
・掃除、特に水回り
・次々もよおしてもらった送別会参加
・実家に顔出し
・引越し10日前にぎっくり腰
・ぎっくり腰治療の通院
・ダイニングテーブルセット友人へ譲渡
などなど。

初めてのことで、どれもこれも一生懸命やった。
やりきった。
荷物積み込みにきた引越し屋さんに「こんなに片付いている家は珍しい」と言われるほどに。
…やり過ぎやん。

この時は、誰でもやるもんだと思って頑張っただけなんだけど。
引越しなんて、とにかく移動さえできれば、あとはなんとかなるもの。
それに気がついたのは引越しが終わってからだった。
若いと体力あってやれちゃうからやりすぎちゃう。
今は、やろうと思ってもできないけど。

荷物を出した後は、痛い腰をかばいながら600キロ近く自家用車で移動。
車の振動が地味に腰にひびいて辛かったな。
そんなこんなで東京の家に荷物が入った時は疲れはててた。
見送りに来てくれた友人がくれたチョコレートが沁みたっけ。


それから1ヶ月ほどたった3月だったか4月だったか。
なんとか家の中が住めるくらいに片付いた頃。

突然わけもなく涙が止まらなくなった。
一日中悲しくて悲しくて仕方がない。
動機がして胸が苦しい。
お布団に入っても眠れない。
毎晩、寝汗まみれになる。
道を歩いてると、めまいでまっすぐ歩けず蛇行してしまう。
こんな状態になった。

自分がどうなってしまったのか、とにかく気分を紛らわさなくてはいてもたってもいられず、一生懸命お鍋を磨いた。
うちのお鍋はぶ厚めのステンレス鍋でガシガシ洗って大丈夫なやつで、お鍋を磨いているとちょっとだけ不安がどこかへいった。
お鍋は毎日ひとつづつピカピカになっていった。

1週間か2週間か、しばらくそんな風に過ごしたけど、どうにもならず(これはふつうじゃない。心療内科だ。)と思い、検索して一番近所の心療内科に駆け込んだ。

診断は、引越しウツ。
そんなウツがあるんかい。
先生とは合わなかったけど、処方された薬は効いた。

◎引越しウツ
引っ越し直後に体調の変化や気分の落ち込み、不眠、意欲の低下などウツ状態になってしまうこと。
引越しはライフスタイルが大きく変わり、希望もあるけれど不安もにも結びつく。
引越し後の膨大な量の片づけ、新たな人間関係、生活習慣や言葉の違いなどがストレスとなり、特に責任感が強く完璧主義で対人関係にも気をつかう人がなりやすい。


その後は順調に回復し、少し明るい気分になってくると近所を探索したり東京見物したり。
歌のサークルに入ってみたりするうちに元気になり、半年ちょっとで通院終了。
以後、心療内科とはお付きあいなし。
めでたしめでたし。


…と思ったら、その6年後、副腎疲労にたおれた。
副腎疲労ってなんなん?と思ったら、長期のストレスに体が疲れきってエネルギーが出ない状態のことだそうで。

ちなみに、ここでのストレスというのは、人間関係だけでなく、過労、睡眠不足、ケガや病気、栄養不足、副鼻腔炎やアトピーなどの慢性炎症、鉛やアルミニウム、水銀などの重金属、洗剤や食品、排気ガスなどから体内に入ってくる化学物質、カビ、寄生虫などなど、自分の体に影響をおよぼすもの全部。
長期っていうのは、10年とか20年とかのスパン。


副腎疲労になる人は、真面目で頑張り屋、なんでも自分でやっちゃう完璧主義の人が多いとか。
あー、それ私です。

ここで、ハタと気がついた。
引越しウツになりやすい人と副腎疲労になりやすり人、同じじゃない。

引越しウツになった私。
ウツの原因はもちろん引越しなんだけど、それ以前に、あのとき私すでに副腎疲労だったんだわ。
副腎疲労の私だったから引越しウツになったんだ。

引越しウツは重症の副腎疲労にたおれる前のサインだったということ。
寝たきりになるほどの状態になるには、何年も前から何度もサインが出てるということ。

サインを無視するとエラいことになることがある。
サインに気づいたら、一度立ち止まって確認しなくちゃと学びました。


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