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積乱雲という夏の輝きに抱かれて

秋の訪れを感じる晩夏。積乱雲という楽曲をリリースしたのは1年前のちょうどこの時期だった。


僕は四人の仲間とその年で一番象徴的な旅に出た。その旅は常に音楽で満たされていた。各々が好きな楽曲を語りながらカーステレオで大きな音量で聴く。それは大方ヒップホップではあったが、山々を爽快に駆け巡るにはとっておきの選曲で、完璧な調和を満たす夏のドライブだった。僕にとっては久しぶりの刺激的な1日だった。

アルパカ農場に訪れ牧場的な雰囲気と空気を感じたり、海で黄昏れたり、マイナスイオンたっぷりの洞窟に潜り込んだりした。"フレンド"という地方限定のフードコートで食べた食べ物がとても質素で素朴な味わいがしてなんだか嬉しくなった。その吹く風の感触や、流れる水の音や、雲間から差す光の気配や、白んだ空の色合いも特別なものに感じられた。そんな余韻に浸りながら後日制作し始めたのが”積乱雲”という楽曲だ。そう思うとこの曲は安産だった。悩むこともなく多幸感に満ちた色彩でこの楽曲は生まれた。この先僕はそれほどの多幸感に満ちた楽曲はいまだに生まれることはない。

ただの空想 夢見がちなboy
膨れ上がってく積乱雲さ
実の味よりその雰囲気や思い出も
僕の身体の一部の記憶だしな

終わらない夜に紛れて
最後のショーへ駆け出そう
僕らはフレンドで集まり
形を変えて膨れ上がれ

イメージしよう空洞世界
色もなく重さもない海へ
ゲームロジカル
この際カセットテープと一緒に
Let's go driving

形を変えて蒸発していく
広く深い雲のような僕は
声を上げて筆を執って
ひらけた光を先まで進むさ

飛び出す準備はOK?
バルーンもって It's all right
ほんの少しのアイデアを愛して

それなりになってまた戻る
それなりになってまた戻って

あの綺麗な空を
押し返してみようかなんて
自分を糺すように
メタファーが転換していくの

形を変えて蒸発していく
広く深い雲のような僕は
声を上げて筆を執って
ひらけた光を先まで進むさ

飛び出す準備はOK?
バルーンもって It's all right
ほんの少しのアイデアを愛して

この楽曲はそんな不思議な力を持っていて、とても楽しい曲だと自負している。この楽曲から尊敬する様々な先輩方とも出会えたし、自分を推し進めてくれた。自信を代表する楽曲にもなったし、多くの人がこの曲をきっかけで自分を知ってくれたり好きだと言ってくれる。

いつの間にかこの楽曲は僕の手元から様々な人へ受け渡されるようになっていった。そしてこの楽曲自体が新たなフェーズへ推し進めてくれるようになった。自分で掴んでいるというよりかは包まれている感覚に近い。僕が積乱雲を歌う時、それは個人的な領域を超えた意味性を感じるようになった。それはとても素敵なことだと思う。一握りかもしれないが、自分の歌詞を引用してくれたりこの楽曲を聞きながら夏を感じてくれるのは嬉しく思うのと同時に誇らしく思う。

ただ、前作の杵柄をとって、それで紹介されたみたいなことをずっとやっていくのは僕には無理だから常に作品は作っていたいと思う。この楽曲を超えられるのではないか?という野心に満ちている。それが糧となって自分の楽曲によいスパイスが加わる。

ただこの時期は特別な思いにかられるのだ。そんないろんな意味性を持った自身の楽曲を一年後客観的に見ると全く別人のようにも思えてくる。無垢で純粋な喜びに満ちていたあの時期の少年の情動が激しく動き回る。

僕はこの時期になると積乱雲という夏の輝きに抱かれる。

不思議とそんな思いに包まれる。楽曲が新たな亡霊となって(これは良い概念的な意味合いで)僕にまとわりつく。いや包まれると言った方が正しい。そんな夏の輝きに包まれながら、僕は情念を新たに編纂することにした。リミックスという形で新しく生まれ変わる。そんな新たな意味性を発見してく作業は楽しい。そうして、個人的な領域を超えた意味性が現実味を帯びていく。リミキサーにはSKYTOPIAさんとYackleくん。新たな意味性を持った”積乱雲”をぜひ楽しんで欲しい。





okkaaa


他愛もない独白を読んでくれてありがとうございます。個人的な発信ではありますが、サポートしてくださる皆様に感謝しています。本当にありがとうございます。