沖縄海邦銀行 かいぎんエコマガ 2020 年 2 月号 Vol.179 掲載

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【課題解決相談室 Vol.106】

首里城火災と地域の小希望事業者

 昨年 10 月末に発生した首里城正殿の焼失は県内外に大きな衝撃を与えた。多くの県民に深い悲しみと喪失感を抱かせただけではない。首里地域の中小企業・小規模事業者は来客と売上の激減という未曽有の経営危機に見舞われた。

火災後、客が来なくなり売上がなくなった!

 火災後、来園した旅行者は焼け跡を見てすぐに帰っていく。街を照らす城壁のライトアップも消えた。観光客も激減、園内の土産品店や写真撮影業者などを利用する観光客はほとんどいなくなった。
 首里駅近くの入場券販売の案内所は売上がゼロになり、レンタサイクルの利用者もいない。首里城の夜景を望む城下の飲食店も予約のキャンセルが相次いだ。城内の売店などに商品を納品していた食品や土産品等の製造業者も売場を失った。
 イベント関連の事業者も被害を被った。地域の観光関連の事業者の多くが 11 月の売上がなくなり、多くの従業員も自宅待機は勤務時間の時短を余儀なくされた。


先が見えない中では借入さえできない

 首里城火災の直後から、事業者の窮状を訴えるメールや電話が数件寄せられた。沖縄総合事務局からの要請もあり、11 月 12 日よろず支援拠点として「首里城火災に関する中小企業相談窓口」を開設、テレビや新聞に告知し相談対応を開始。2 ヶ月間で 60 件近い相談に対応してきた。那覇市商工会議所も融資等の相談窓口を置き、12 月 9 日から 3 日間よろず支援拠点も参加した現地相談会を開催。相談内容は「売上の回復」、「資金繰り」、「集客」などが多いが、中には業態の変更や移転の検討など切実な相談が相次いだ。「事業の先行きが見えず、返済の目途が立たない」という状況では借入にも踏み切れないと言う。


課題は集客の回復と売上の拡大

 共通した課題として「売上回復」、「集客」と「今後の事業計画」と設定。業態の違う個々の相談に対応しつつ、関係機関への早期の要請行動が必要と判断。事業者の声を集めて地域を巻き込み、公園管理者、国、県、市、観光コンベンションビューロー等々への具体的な要請を行うよう助言した。同時に首里地域の事業者の窮状をメディアへリリースし、首里城正殿だけではない様々な琉球文化の原点、首里地域への来訪を訴えた。集客に必要な広報については沖縄都市モノレールへの協力も要請した。


自らの行動と各機関の協力で地域復興へ動き出す

 自ら動き出した事業者が各方面へ働きかけ、各機関も危機感を持って積極的に協力した結果、首里城公開エリアの拡大、市観光協会による新たな観光コースの設定、城壁のライトアップ再開、旅行社の送客再開等が実現していった。おかげで「集客」も徐々に増え「売上」も回復しつつある。正殿の売場を失った商品も、美ら島財団の他店舗や県物産公社での取り扱いがはじまり、モノレール駅での広報も予定されている。
 正月には首里城で「新春の宴」が開催され多くの観光客や地元客で賑わった。復興は始まったばかりである。建物としての首里城だけではなく、数百年の歴史と文化、そしてそこで生きている人々が主役である。
 よろず支援拠点では引き続き地域の事業者に寄り添い、残された多くの課題について相談に対応していきたい。

沖縄県よろず支援拠点 チーフコーディネーター 上地 哲

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