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第6回:大澤允之「esports領域におけるスポンサードのあり方」

2019/10/30(水)配信

エンタメ調査室は、毎週水曜日更新のポッドキャスト番組です。ゲーム、音楽、スポーツ、アニメなどエンタメ業界で活躍する方々をゲストにお招きして様々なお話をお伺いします。

パーソナリティ:大木康平(@Unaggy

制作・執筆:藥師神豪祐(@hell_moot

ゲスト:大澤允之さん(@masayuki_osawa) /  BOOSTAR INC. 代表取締役

スポンサードとアクティベーション

eスポーツ領域におけるスポンサードの課題として、投資(スポンサード)内容と投資目的とのズレが発生しているケースがある点を大澤さんは指摘されます。

そもそも企業がなんらかの投資をする場合には常に目的があるはずです。それは、企業のブランドイメージを高める商品の売上を増やす会員数を増やすといった目的です。大澤さんは、そのようになんらかの目的をもって投資をするはずであるのに、投資目的を達成するための適切な投資内容になっていない場合があることを指摘されます。

これはeスポーツ領域に限られない論点ですが、新興の領域であるeスポーツは、「とりあえずeスポーツでなにかやってみよう」という発想から案件が生まれることも多く、投資と目的がズレるケースが発生しやすいことが指摘できます。この場合、適切な道案内が得られないままなんとなく投資が終わってしまう事例が発生しやすいといえるでしょう。

そのような状況に対して大澤さんは、無数にあるはずの投資先のうちなぜeスポーツを選ぶのかという点も含め、目的から逆算して投資を戦略的にデザインする必要があると指摘されます。

スポンサーメニューとして、ロゴ掲出によるシンプルな露出は今後も重要なスポンサーメニューであり続けるはずですが、より踏み込んでスポンサーとコンテンツホルダーの両者が成長するような施策を打つことは、スポーツ領域でも模索されています(スポンサードではなくパートナーシップと呼ぶケースも増えています。)。このような施策は「アクティベーション」と呼ばれます。

スポーツとeスポーツの知見は、近いビジネスモデルであることから共有可能であるように思われますが、例えば昨年、スポンサードが25年も続いたことを記念して、鹿島アントラーズとスポンサーLIXILは記念試合を行いました。この試合に関連して様々な施策が組まれたことは非常に話題になりました(こちらの記事に詳しいです)。今後は、スポーツとeスポーツが相互にスポンサードに関するノウハウを共有していくことがスタンダードになるかもしれません。

イベントの効果測定

例えばデジタルマーケティングの分野で、最近このような指摘をSNS上で目にすることがあります。それは、「デジタルマーケ施策の効果は、ファンやコミュニティを育てるものであるため、①定量化しづらい部分があり、かつ、②長期的に見て効果が出るものであり即効性のあるものではない。したがって、目先の数字(SNSのフォロワー数など)を増やすことに注視すべきでない。」といったものです。確かにその面はあるものと思われますが、なんらかの方法で効果を測定するものさしを用意せずにそのような発言をすることは、自社サービスを売り込むための方便のようにも思えます。

eスポーツイベントの効果についても同様の指摘ができるものと思われます。来場者や配信視聴者などの数字を作ることができても、それを評価するのは非常に難しいです。しかし、当然ながら効果測定をしないわけにもいきません。

では投資効果(投資目的に照らしてどの程度意味があったか)をどのように評価すれば良いでしょうか。その一つのヒントはスポーツ×eスポーツ領域に見られました。

大澤さんがPRやエージェントなどの活動を行っているeFootball(FIFAやウイニングイレブンなどのサッカーゲームにおけるeスポーツ)の事例として、Jリーグクラブの横浜F・マリノス の事例をとりあげます。

横浜F・マリノス は、今年6月22日のホーム松本山雅FC戦などのホームゲームにおいて、試合開始前のスタジアムで、中学生以下のファン・サポーターとその保護者を対象としてサッカーゲームFIFA19を体験するイベントeスポーツチャレンジ)を行っています。子どもたちやその保護者がゲームに熱中している風景は、eスポーツ領域ではまだまだ珍しいこともあり非常に話題になりました(こちらの記事でその様子が見られます)。また、マスコット同士がゲームで対決する場面も見られ、ファンやサポーターが盛り上がる一幕もありました。

このイベントから得られる知見は、施策の評価として、説得力を持つ写真一枚イベントレポートが効果の証明になることもあるということです。数字よりも遥かに説得力のある効果を見てとることができました。昨日(11月2日)セレッソ大阪が同様の企画を行っていたことにも注目したいです。

余談として、ナラティブをブーストすることが求められる時代であることが指摘された前回の論点でいえば、横浜F・マリノスは、eスポーツチャレンジをスタジアムで行い「ファン・サポーターとeスポーツの接点を作る」というファクトを積み上げながら、自チームが抱えるeスポーツ選手であるWeb(ナスリ)選手について次のツイートにあるような優れたクリエイティブを作成されています。非常に勉強になる事例なのではないでしょうか。

VAMOLA、そしてエージェント

大澤さんが運営に携わっているVAMOLAは、海外大会の現地取材なども積極的に行うなどしており、既に国内eFootball領域では最重要メディアとなっています。これからもこのメディアに注目していくとともに、番組内でその始動を教えていただいたエージェント業務についても追いかけていきたいと思っています。eFootballの未来が楽しみになる回でした!

(文:藥師神豪祐(@hell_moot))



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