関西開発拠点のグローバル化に向けてやってきたこととその成果
この記事はMoney Forward Kansai Advent Calendar 2024の12月25日の記事です。
メリークリスマス!
昨日はサンタさん役を無事に勤め上げましたマネーフォワード 大阪開発拠点長の大倉です。私はエンジニアリングマネージャとして、良いプロダクトを生み出すための良いチーム作りに日々奮闘しています。
私の所属している関西開発拠点の多くのメンバーがビジネス向けのプロダクトの開発に携わっています。
具体的には以下の3プロダクトの開発を担当しています。
この記事では、関西開発拠点のグローバル化に向けて取り組んできたことと、その成果について紹介します。
開発組織のグローバル化
マネーフォワードでは、過去のCTOの中出からの情報発信にもあるように開発組織の英語化・グローバル化に取り組んできました。
全社のグローバル化の取り組みについてはこちらの記事をご覧ください。
当然この取り組みは地方拠点である関西開発拠点においても進めていく必要がありました。そして私は関西開発拠点のエンジニアリングマネージャとして3つのプロダクトチームのグローバル化のロードマップを策定し、実行していく責任を負っていました。
この記事では、私が各プロダクトの状況やチームの特性を踏まえ、それぞれどのようなアプローチで実験を繰り返し、グローバル化を進めてきたかをご紹介します。
2年前にブログ記事を書いていた時に考えていたポイントは以下の3点です。
英語での業務遂行の実現:全てのチームで英語を用いて業務を行える体制を整える。
グローバル人材の採用と定着:海外からエンジニアを採用し、チームにスムーズに溶け込める環境を作る。
チームごとの最適なグローバル化アプローチの実施:3つのプロダクトチームの状況に応じた方法でグローバル化を進める。
それぞれのアプローチ
関西開発拠点では、各プロダクトチームの状況に応じて3つの異なるパターンでグローバル化を進めました。
1. アプリポータルチームの場合
2年前の状況として、チーム規模が大きくなく、英語力やグローバル対応力のあるメンバーが複数所属している状態でした。また、その時点で英語が苦手なメンバーもグローバル化のモチベーションを高く持っていてくれたため一番最初にグローバル化を推進することを意思決定しました。
このチームに対してのアプローチはとてもシンプルでした。海外から日本語を話せないエンジニアを採用し、チームの一員として所属してもらうことで強制的に英語で仕事をする環境を作ることにしました。
私たちの拠点にとって、初めての海外からの採用でしたので、本社のグローバル化を推進しているエンジニアリングマネージャや人事の方のサポートを頂きながら面接のためのスクリプトを用意し、面接を進めていきました。
その結果、海外からのエンジニア採用に成功したため、次はオンボーディングの準備や何をどう英語化していくのかを整理することに取り掛かりました。この時に整理されたものは今後入社してくる海外出身のメンバーの採用やオンボーディングでも活用され、良いナレッジとなりました。
そしてこの過程で注目すべきはチームのグローバル化のキーマンがいたことです。彼は高い英語力とコミュニケーション能力とホスピタリティを持ち、本当に献身的に新しく入ってきたメンバーのサポートをしてくれました。私自身、海外で生活したことがないので想像の域を出ないのですが、言葉も通じない土地で生活をすることは、きっと並大抵なことではないでしょう。そんな中で手厚いサポートがあることは新しい土地での生活に大きな勇気を安心を与えたことは想像に難くありません。
ちなみにこのチームにジョインしてくれたメンバーの一人はMoney Forward Tech Dayでも登壇してくれています。
2. マネーフォワード クラウド連結会計チームの場合
こちらのチームの規模は中位、という感じで、2年前がちょうどプロダクトのローンチ直後、という状況でした。そのため、プロダクトの急激な立ち上がりを実現するためにグローバル化に向けた大きなリスクを取るのは難しい状況でした。また、このチームのエンジニアリングマネージャが英語が得意ではなかったことも攻めた手を打ちづらかった理由ではありました。(が、後述の通りこれは自分の杞憂でした)
そのため、このチームでは海外の開発拠点であるベトナムのハノイ拠点との共同開発からスタートすることにしました。さらに、言語面での負担を減らすためにハノイ拠点のチームにはアクセラレーターという言語面とコミュニケーション面をサポートするメンバーにもジョインしてもらい、かなり手厚い状態からスタートしました。
この2拠点での共同開発に際して関西のチームとハノイのチームは同じリポジトリを利用して開発をする方針としました。そして、ある程度同じロケーションで仕事がしやすいようにそれぞれの拠点で担当する開発機能を分担しながら進めることとしました。(プロダクト内の特定の機能だけを担当するわけではなく、どちらのチームも全ての機能を担当する可能性がある状態です。)同じリポジトリを利用して開発することによって、設計方針の合意やリリース作業など、多くのコンタクトポイントが生まれ、議論が進んでいきました。もちろん全てが順風満帆に行ったわけではなく、様々な課題が発生しましたが、それらを1つ1つ突破して強いチームになっていきました。
その後、メンバーの英語学習の進捗や、バイリンガルエンジニアの加入もあり、今ではかなりの割合で英語を利用できる状態になってきました。そして来年早々には日本語を話せないメンバーの加入も決まっており、順調にグローバル化に向けて進んでいっています。
さて、最初の方で触れたマネージャの英語力の件について少し補足させてください。もちろん彼も英語の勉強は頑張っていましたが、現在はTOIECのスコアからは想像できないくらいしっかりとコミュニケーションできています。さすが学生時代にバックパッカーをやっていただけはあり、言語だけではない本質的なコミュニケーション能力の高さに驚いています。
3. マネーフォワード クラウド会計Plusチームの場合
このチームは最も規模が大きく、またビジネス上もまだまだ伸ばしていかないといけないプレッシャーも強く、しっかりとリスク管理をしながらグローバル化を進めていく必要がありました。そのため、このチームの英語化のアプローチが最も慎重なステップを踏む形になりました。
まず最初に行ったことは東京拠点にNon JPメンバーを中心とした、英語で仕事をするチームを組成し、プロダクトの共同開発を開始することでした。当時、東京の拠点ではすでに多くの海外出身のエンジニアが在籍しており、幸運にも私たちのプロダクトに関わってもらえる条件が揃っていたのでこの意思決定をすることとなりました。
また、共同開発とはいっても東京のチームではマイクロサービスの開発を担当してもらっており、関西のチームとの直接のコミュニケーションはチーム全体に関わる事柄に限られていました。この環境下で関西のメンバーには英語で仕事をしている人たちが近くにいる状態、そして時々話をしてみるという機会が生まれることを期待していました。しかし、正直にいうとこの目論見を思ったほどの効果を生みませんでした。やはり最低でも直接的な日常のコラボレーションがなければ、グローバル化は促進されないことを学びました。
次に実施したのは、インド拠点でチームを作ることでした。今度は、インド拠点チームと関西のチームは同じリポジトリを用いて共同での開発となります。チーム間の役割分担は前述のクラウド連結会計のものとほぼ同じです。差分としては、インドのチームに日本語がわかるメンバーは一人もいなかった点、また関西に2つのチームをブリッジする役割のメンバーをアサインした点です。
やはり同じリポジトリで開発することで直接的なコラボレーションが生まれる機会が多かったため、促進効果はあったように思われます。ただ、英語学習が途中のメンバーも多かったためブリッジしてくれているエンジニアのサポートの割合は高いところからスタートしました。ブリッジしてくれたエンジニアの献身性の高さによって多くのことが成し遂げられたと感じています。
今では、技術的負債の返却について作戦会議を一緒にできるようになっている、などコラボレーションの幅も広がってきています。
そして、今年の夏、ついに関西のチームでも海外からのエンジニア採用を実施し、常時英語で仕事をするチームを作ることができました。ここもオンボーディングにあたっては1年前にジョインしたアメリカ出身のエンジニアにチーム移動してもらってドキュメンテーションから会議のファシリテーションまで多大なサポートをしてもらいました。彼の明るいパーソナリティと高いコミュニケーション能力にはいつも助けられています。
現在、関西にある4チームのうち、3チームが常時英語での業務を実施しています。残りの1チームも日本語が喋れないエンジニアがジョインした際にはすぐに英語にスイッチできるよう準備を進めてくれています。
そして英語で仕事をしているチームを作れたことによって海外からの新卒エンジニアの受け入れも実現できました。
先日行ったプロダクトチーム全体(関西だけでなく東京や一部のインドメンバーを含む)の開発合宿でも、英語を主体に様々なワークショップを実施しましたが、過去に比べてしっかりとコミュニケーションを取れるようになったと個人的には感動しました。
まとめ
私がとってきたアプローチをまとめると、以下の3段階になります。
グローバルチームと同じプロダクトを別リポジトリで開発
グローバルチームと同じプロダクトを同じリポジトリで開発
自分のチームに海外出身のエンジニアがいて、英語で仕事をしている
私自身の英語力を鑑みてもそうですが、結局、実際に使わないと本当に使える英語力を身につけることは難しい、と感じています。なので、極論を言うとさっさとNon JPのメンバーと一緒に英語で仕事をするのが一番ということになってしまいます。
しかし、そこに至るまでにはしっかり英単語や文法を学び、リスニングやスピーキングのスキルを高めておく必要がありますし、メンタル面でも英語を喋ることに慣れる、喋ってみようという気合を入れる準備期間も必要だと思います。(私自身もそうでしたが、多くの日本人にとって英語を話す、と言うことの心理的なハードルは決して低くないと思います)
そういう意味では、それぞれのチームの状況に合わせてアプローチを変えるという戦略は結果的に大きく間違ってはいなかった、と評価しています。(自画自賛)
グローバル化(特に英語化)を推進することで一時的に開発がスムーズにできなくなり、プロダクトのグロースに影響を与えるリスクも感じながら手を打っていきましたが、結果的には海外からジョインしてくれたメンバーを含め、みんなの尽力によってむしろグロースを加速させることができたのではないかなと思います。
終わりに
これらの取り組みにより、関西開発拠点では大きくグローバル化に向けて進ことができました。もちろん、全員が英語で流暢に会話し、かつ、グローバルな文化で開発ができるところまではまだまだ道半ばです。しかし、2年前を思うと良い成果だったのではないかと振り返っています。それぞれのチームが抱える課題や状況に応じて、最適な方法を模索しながら進めてくれたチームメンバーの努力があってこそ、この状態を作り上げることができたと信じています。
私たちはこれからも精進を続け、多様な文化やバックグラウンドを持つメンバーと共に、良いチームを作り、良いプロダクトを生み出して、ユーザーに価値を届けることで社会に貢献していきます。
私たちと一緒に良いプロダクトを作ってくださる仲間を大募集中です。少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひカジュアル面談でお話ししましょう!