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とびだせ!ほいくえんの柵!

前作(ゴリラと遠吠え)

家族が5人になった。
高級住宅エリアの一角にある戦争をも乗り越えた(のかもしれない)
築60年はくだらない木造アパート。

そこが私たちの新しい新居だった。
外見は以前と大差ない。

リビングは4畳、寝室は6畳、
そしてなぜかキッチンも4畳ほど。
(あくまで記憶の中での大きさ)

今回から洋式トイレが家族用として設置されている。
風呂はなかった。でもちょっとしたグレードアップ。

その他2畳ほどの裏庭。というには荒れ果てた大地があり、
のちに母が怒り狂った際に窓を割り、
ガラスを蒔くことになる。
後世に続くガラス農業の始まりである。

という部屋に計2年ほど住み続けた。


周りの環境は、
先ほども述べたが、高級住宅エリア。の一角にある時代に残された我が家。
ではなく我が家(部屋?)の入ったアパート。

目の前は
自然豊かな街路樹。
街路樹。道路脇に生えてるアレである。
家の前だけなぜかそのエリアが広く作られており、
昆虫採集が可能。大都会の箱庭。

そこでは芋虫を見つけて飼い始め、
羽ばたく蝶を夢見て育てた結果、
巨大な蛾を爆誕させることになる。

また、カブトムシも取ることができた。
手違いで室内に放ち、母親がゴキブリと勘違いし、
恐怖のあまり積み木でフルスイング。
帰らぬ虫となった・・・
と言う事件もある。

街路樹の先は都内でも屈指の交通量のある環状道路。
夜は長距離トラックが群れをなし、
毎晩、震度3程度の直下型地震が起きる。

さらに暴走族もお気に入りのスポットらしく、
爆音で曲を奏で、光を残して去っていく。その後にパトカーが続く。

よく言えば
シューティングギャラリー(カブトムシ)と
センターオブジアースと(トラック)
エレクトリカルパレード(暴走族)
を体験出来る家だ。

ちなみに本物は未経験である。

そんな思い出深い家である。

そうそう。家の話に戻るが
風呂はなかった。
「なかった」と書いたのは
その後に風呂らしきものができたのだ。

我が家は鉄板がぐるぐるに巻かれた
鉄のトイレットペーパーが多く置いてあった。

先も述べたようにキッチンが4畳ほどもある
異様な作りをしていた。
謎に広い無駄な空間。そこに父が超巨大シンクを作った。
推定2mぐらい。

給湯器にホースをつけ、お湯をその中で浴びる。
そんな子供専用風呂で日々の疲れを癒した。
あくまでシャワー専用。

両親は銭湯に行くか、わざわざ父の実家へ
風呂を浴びに行っていた。
自転車で約10分くらいかけて。

まさかその数年後に同じようなことを体験するとは・・・。
(オーストラリアにて。)

その頃。私は保育園の年中から年長。多感で活発な時期。
園内ではジャングルジムで遊んだり、
土蜘蛛を捕まえたり、
保育園の柵を越えて家に帰ったりしていた。

家まではさほど距離もない。
道中、怪しげな古本屋があったりする。
コロコロコミックの中古が売ってたりする。ボンボンも。
ザクロがなっている家もあった。

家の隣にはガソリンスタンドがあり、
ここには優しいお兄さんと優しい店長と優しい女子プロレスラーがいた。

皆私が来れば店舗内で遊んだり、飴をくれたり、
軽々と私を持ち上げ、肩車してくれたりといつも楽しませてくれた。
まるでキングコング。
いや巨神兵。

いつぞやの冬。
珍しく雪が積もるほど降っていた日。

私はいつも通りガソリンスタンドに行くと
店長が「いいものを見せてあげる」と虫眼鏡を持ってきた。
店外に出て、しゃがんだ店長はふと手を開いた。

手袋をした黒い手の平には何もなく、
ただその上にひらひらと雪の1粒が落ちた。

そこに向ける虫眼鏡。
映し出された無色の結晶。
近くのローソンに飾ってあった
雪の飾りと同じ形だった。

綺麗だった。という感想よりも
ただただ見慣れない本物の結晶から目が離せなかった。
新鮮な興味。

それは一瞬。ほんの数秒。

そして何もなかったようにいなくなる。

雪投げしたり、小さくていびつな雪だるまに
小石で顔をつけた。冬。
貧しいながらも刺激の多かった2つ目の家。

優しい人たちだった。みんな元気だろうか。
今となってはどこにいるのかもわからないが
また、お会いできたら、今の私をどう思うのだろうか。

嬉し恥ずかし、望むも怖し。

私なんかにサポートする意味があるのかは不明ですが、 してくれたらあなたの脳内で土下座します。 焼きじゃない方の。