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漫画を愛し漫画に生かされる。

平成の世を駆け抜けた女子たちが人生で何度もされる質問がある。

『なかよしとりぼん、どっち派だった?それともちゃお派?』

私からすればまさに愚問。それに対する答えは一つ。
全部だ。全部読んでいた。

物心ついた時には漫画がすぐそこにあった。
若い夫婦だった両親。母が臨月だったある日
「これは面白過ぎるから買うしかなかった」
そう言って父が買ってきたのが『1・2の三四郎』だった。それも全20巻まとめて買ってきた。

こんな時に、お金に余裕も無いのに何故…そう思った母もそれにハマり私を産む直前まで読み耽ったそうだ。
そんな両親から逆子で生まれてきた超絶怒涛の漫画エリート、それが私だった。今では立派な漫画オタクで随時2000冊前後の漫画と共に暮らしている。
因みに三四郎はめちゃくちゃ面白い。小林先生は天才だ。

そんな、生まれる前から今までずっと、漫画を愛し漫画に生かされている私を構成した5つの作品について語らせて欲しい。

「ハマる」感覚を知り、私を漫画沼に引き摺りこんだ『あさりちゃん』

小学校三年生の春。セーラームーンや姫ちゃんのリボンなど、キラキラした少女漫画を雑誌で読んで満足して、単行本なんて買ったことがなかった私。そんなある日、同い年の幼馴染の家に遊びに行くとあさりちゃんの44巻があった。
彼女がなぜ最新刊のこの一冊だけを買ったのか、未だに謎ではあるがそんな44巻に何気なく手を伸ばして読み始めて、衝撃を受けた。
「面白い……」
今まで読んできたタイプとは違う面白さ。めちゃくちゃパワフルで悪ガキで、でも女の子なあさり。そんなあさりより更に強く、頭が良く、意地悪なところがあるタタミ。
ギャグ漫画らしいギャグ漫画で、でも少し大人びている。この漫画はなんなんだ。
吸い寄せられるように、まずは次に出た最新刊、45巻を買った。
やっぱり面白く、そこでもっと読みたい気持ちが爆発したのだろう。コツコツ貯めたお金で10冊分、あさりちゃんの大人買いをした。お小遣いを貰っていない女児からすれば大きな買い物である。
一話完結でどこから読んでも大丈夫な特性を生かし、本気のジャケ買いだ。
吟味する私と本屋に連れてきた母と祖母の「この子はヤバいのでは」という空気。あの日着ていた紫のジャンパーの柔らかい感触を未だに覚えている。小学校3年生にしてオタクの片鱗が既に見えていた。
とにかく好きだ。最終回っぽい話を雑誌で読んで一人で泣いた程度に。その時は掲載誌の一つが無くなるのであって、連載自体は続いてホッとしたものだ。
あさりの自己肯定感の強さとタフさが、タタミの頭が良いのを鼻にかけたところが好きだ。ちょっと憧れてたのだと思う。時々大長編があるとワクワクした。タタミが女の子に本気で告白される回でLGBTを初めて意識したと思う。色々な初めてがあさりちゃんにはあった。
未だにおにぎりを作る時はコトコトおにぎりの真似をして形作ってから三角形に握っている。

好きを拗らせてアウト寄りのアウトな漫画を描こうとしたこともある。確かいちごちゃんが主人公でお姉ちゃんがレモンちゃん。他にもぶどうちゃんやミカンちゃんが出てきた。なんだこのどうしようもない内容は。
フルーツ満載でカラフルなはずが、真っ黒な黒歴史漫画。誰にも見せて無くて本当に良かった。


未だに実家に並んでいるので帰省の度に読む二大漫画の一つである。

人生で必要なことは大抵こち亀で学んだ
『こちら葛飾区亀有公園前派出所』 
 

通称こち亀。言わずと知れた国民的長寿漫画だ。
父の実家で叔父の使っていた部屋に残ったままだったこち亀。夏休みに長期滞在中、暇を持て余して本棚を漁って見つけた漫画。

やはりジャンプというこの世はサバイバルを体現したような雑誌で長きに渡り連載されていただけある。子どもが読んでも物凄く面白い。適当に読み始めたら止まらなくなり、確か三冊目に読んだのが63巻「わが町・上野」の巻だったことを覚えている。このめちゃくちゃに面白い漫画のタイトルが何だったか再確認したからだ。
(余談だが100巻まではこち亀の表紙絵を見て何巻でサブタイトルは何、と当てられたし巻数を言われたら表紙の絵の説明が出来た。オタク気質がすごい)

こち亀の何が凄いかと問われれば、秋本先生のきっちりした仕事っぷりと遊び心。そして何より新しいものをキャッチし、取入れ、噛み砕いて面白い漫画に仕上げるところだと答える。
私の知識の半分くらいはこち亀由来で口癖は「それ知ってる。こち亀で見たことある」。進研ゼミも真っ青だ。
それに当時の流行りや風俗を知るのにこち亀はこれ以上ない教材だと思う。なので小学校の図書館に入れるべきは「はだしのゲン」、「ブラックジャック」に続き『こち亀』であると主張している。

面白いエピソードを挙げろと言われたら難しい。あり過ぎて。
・「地面にビールを撒く会」の会長をしているからと言い張る回。
・部長とうんこを合成した回。
・部長の全裸ファックス誤送信回
・メリークルシミマスの回。
・両さんがやらかしたあとの部長のおしおき全部。
挙げたのが大体部長と下ネタになったが、こち亀の話なら多分3日間くらいずっと喋ることが出来る。
グッときたものだと特殊メイクをして不美人になった麗子が周りの人に冷たくされているところを両さんが助けて、器量より愛嬌だろと言うところが好きだ。両さんと麗子結婚してほしい。


こちらも勿論帰省の度に読む二大漫画の一つである。

少女漫画界の革命的ギャグ漫画が笑いの基礎になった『こいつら100%伝説』

言わずと知れた少女漫画界に咲くドクダミの花。岡田あ~みん先生の作品。
この作品に出合ったのは小学校高学年の頃。
当時何故か私に執着して粘着気味で今だったらちょっとした事案みたいな同級生の女子が居たのだが、その子には15歳年上の姉が居た。
その姉が置いていった昔のりぼんが彼女の家の倉庫に大量に残っていて「わ~!昔のりぼんだ!」と手を付けたのが運の尽き。他にも面白い漫画はたくさんあったが異彩を放つこの作品にどうしようもなく引き付けられた。

あさりちゃんとはまた違った、破天荒なギャグ。りぼんでこんなもの描いていいんだ!と目から鱗がボロボロ落ちた。
テンポの良さ、ネタの際どさ、飛び出る鼻血。「この人は天才だ…」そう震撼した。
これを読んだ女子は極丸にキュンとし、危脳丸のテンションのおかしさに惹かれ、「また出たなニセ商売屋!」と笑い、先生の心労を想うはずだと勝手に思っている。

個人的に一番好きなのは『危脳丸がだらしなくボーっと空を見つめる姿』と『その後急にニヤけた顔』を見られていた上、皆に晒されていたシーンだ。何度見ても笑う自信がある。
エピソードとしては先生の誕生日を祝う回。サプライズがバレないように!と夢中になるあまり、先生が皆の行動を怪しんで見に来たのを蹴り出して「仲間に入れて欲しけりゃ私はダメな人間ですと言え」と言い放つ。大好きだ。

この後岡田あ~みん作品である『お父さんは心配症』、『ルナティック雑技団』も勿論買い揃えた。これら全部ひっくるめて私の「面白い」の基準を作った作品だ。

あ~みん、また漫画を描いてくれたらなあ、と願ってやまない。

どん底から掬い上げてくれた、ギャグと人情に溢れたSF時代劇『銀魂』

ジャンプで長期連載していた人情とギャグのハイブリットなこちらの作品。
最近最終回を迎えたこの作品に、物凄く救われたことがある。

銀魂は学生時代、丁度ジャンプを読んでいた時期だったこともあり連載第一話目から読んでいた。絵は粗削りだったけれど文句なしに面白い。これは手元に置いておきたいと単行本が出る度に買っていた。

社会人になって、ジャンプを買わなくなった。新刊が出る度に単行本で買い揃えていたけれど会社員になって五年経った頃、東日本大震災があり、どたばたしているうちに買いそびれたのをきっかけに買わないまま時が過ぎる。
それから二年。急激な仕事の増減に人間関係の変化。そこに新規事業の責任者にされたことで精神が少しずつ蝕まれていき、我慢に我慢を重ねた結果、体調がおかしくなった。頭が割れるように痛い。家に帰るとベッドに仰向けになりそこから動けない。背中に裂かれたような痛みが走る。摂食障害が起こり、肉と米と魚が食べられなくなってやっと病院に行った。
うつ病だと診断された。

そのままなんとか働き新規事業で一定の結果を出した後、まともに動けなくなりそのまま暫く休むことになった。
その頃のことをあまり良く覚えていないが確か猫の世話をする他はずっと寝ていた。でも、どこかで「自分は会社に行きたくないだけで病気の振りをして怠けているのでは?」とすら思っていた。
薬を飲み、壁とベッドの溝に挟まり、ただひたすら寝る。テレビがうるさくて観られない。インターネットも疲れる。何も興味が持てないし、薄い膜の中に居るようだった。起きている間は猫と遊んでいるか、手持ちの漫画を順に読んでいた。
休み始めて一ヶ月ほど経った頃、ムラはあるものの外を出歩けるようになってきた。平日の街は人が少なくて、短い間ならなんとか歩いて回れた。
その日は古本屋に何気なく入り、ふと手に取った銀魂。確か家には33巻までしかなかった。丁度ここに続きの34巻から39巻まであるし、買ってみるか。

軽い気持ちで買って帰り、またベッドに横たわって読み進める。ギャグパートを読んで笑い、キャサリンとお登勢さんの話でうるっときた後に長編が始まった。
『かぶき町四天王編』だ。
はっきり言って、銀魂によくある人情話だとは思う。
ギャグの合間に丁度良い頃合いで登場するこれらを、これまでは「良い話だったな」「やっぱり空知先生の長編は面白いな」と楽しく読ませて貰ってきた。

でもこの長編を読んだ後、堰を切ったように泣いた。目が腫れあがるくらい涙を流し、しゃくり上げて嗚咽を漏らした。自分の頭がどうかなったんじゃないか、そう思ったけれど止まらない。
銀さんたちとお登勢さん、かぶき町の皆の絆がただ眩しくて、不器用な愛し方しかできない次郎長のことが愛おしくなって自分でも何故か解らないけれど泣き続けた。

やっと泣き止んだ頃、視界がクリアになっていることに気が付く。感情を爆発させたからか、自分に纏わり付いていた薄い膜が取れて、今私は本当に病気なんだ、本当に疲れてしまっているんだ。だから、ちゃんと休もうと漸く思えるようになった。

その後、封筒と便せんを買ってきて空知先生に手紙を書いた。人生で作家さんにファンレターを書いたのは、最初で最後だ。
あの頃書いた文章なんてきっと支離滅裂だったことだろう。でも「救われました。ありがとうございます」とお礼が言いたかった。しかし、出来れば捨てておいて欲しいと切に願う。

元気になった今でもこの長編を読み返すと普通に泣いてしまう。そんな時はすぐにギャグ回を読むと苦しくなるくらいゲラゲラ笑える。やっぱりギャグ漫画としても最高だ。


やり直すきっかけになった、人間賛歌と悪役の魅力『ジョジョの奇妙な冒険』

銀魂で引っ張り上げられた後、リハビリを続けて。暫く経ってから、職場復帰を検討しないか?と言われるようになった。
幸いなことに前とは違う部署や、他の事業所から誘いがあったけれどしばらくブランクがあったし、前のことを考えると不安でしかなかった。
それでも話し合いは続き、新たな部署で働くことが決まりつつあったけれどモヤモヤしていた時だった。総務の担当者と面談があるはずだった日に台風が直撃した。

予定は延期、思いがけず暇になったので某動画サイトを流し見していたところに「ジョジョ」のタグが目に入った。
社会人になってすぐ、仲良くなった先輩がきっかけでジョジョにハマりにハマって単行本を揃え、百人一首まで買った私だ。
丁度第3部のアニメを観ていたこともあり、なんだか面白そうだな、くらいの気持ちで何気なく観ていると、お勧めの中に手描き動画なるものを見つけた。
確かこれは第五部の敵キャラだった暗殺チーム。プロシュート兄貴がカッコよかったし、皆キャラが立ってたな~と思い出しつつ再生したのが運の尽きだった。
ビビビとはこのような状態と辞書の挿絵に乗せられるレベルでズキューンと心を打たれた。
あれ?こんな人たちだったっけ?火が点いたように、自分でも驚くくらいドカンと興味が湧いてきた。関連動画を観まくった後、本棚のジョジョに手を伸ばす。

リーダーのリゾットはえげつない攻撃をしてくるジョジョ立ちの人、くらいのくらいに思っていたのに、めちゃくちゃ深いキャラ設定だし、皆覚悟があってグッとくる。何故それに気が付かずに過ごしてきたのか、ブチャラティ側からしか見て無かったんだな…。そう嘆きながら5部を読み直した。
面白いのは知っていた。でも再認識した。結局1部から読み直して、第三次ジョジョブームが始まったと同時に、よし、働こう!と思えた。
単純な頭をしているとは思うがこれがモチベーションになったのだ。
漫画をきっちり買っていきたいし、今度は4部がアニメになるだろう。それも楽しみだがいつかくる5部アニメ化。この時に何があっても身動きできるよう、生活の基盤を作り直したい。
働いて、稼いで、公式に貢ぎたい。
その一心で職場復帰しUSJのジョジョコラボの為に年パスを買い、4部の舞台、仙台まで足を運び「むかでやさん」で領収書まで切って貰えた。
復帰から3年経った頃。ついに夢は叶い、5部のアニメ化をきっかけに大きいテレビとHDDも新調した。ジョジョ展にも足を運ぶことも出来、荒木先生の生原稿や等身大のイラストを見られた時はルーベンスの絵を見たネロの気持ちとシンクロした。
楽しい。やっぱり漫画が好きだ。

他にも好きな漫画は山ほどある。語り相手は随時募集中。本棚にはいつでもギチギチに漫画が詰まっていて、時々仕方なしに読みたい人に譲り、隙間を空けてもすぐ埋まってしまう。

新しい漫画が出るのが楽しみで指折り数えて待つのは昔も今も変わらない。今までもこれからも、漫画は私の人生の根っこであり続けるだろう。

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