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菅政権が主導する今後の日本

 国際社会が権威主義と民主主義の両者に分かれ、新たなイデオロギー対立の構図へと変化していく中でG7サミットは民主主義陣営の重要な国家群となる。共同声明から見える、この会談における重要な部分は「環境」「コロナワクチン」「コロナ後の経済」などだ。

 特に「環境」に関する欧州の関心は極めて高い。G7首脳会談の前に行われたG7財務大臣会談においても環境について話題にあがったほどだ。持続可能な社会のためのエネルギー政策転換は今後の技術開発によって進み、これは新たな地政学的影響を与えることになる。

現在中東における権威主義国家が政治体制を維持できている要因は潤沢な石油の存在だ。これが環境保護の名の下、クリーンエネルギーへの投資や開発が進み、ある程度のエネルギーを生産できるようになると、彼らの優位は突如として揺らぐ。これをG7首脳は2050年までに実現する目標を掲げている。

グリーンを重視した社会は石油に依存している経済に大きな影響を与えることになるだろう。石油による開発は難しくなることで権威主義国家群の安定した政治体制に亀裂が生まれることが明白だ。

トランプ政権下における経済政策の影響で石油輸出国に転じたアメリカがどこまでこの流れに乗るかは政権次第となり、長期では予測不可能だが、バイデン政権の間はクリーンエネルギーの拡大に力を入れるだろう。エネルギーの多様化が中東の地政学的優位を破壊することで慢心に浸っている中東諸国の転換の日が遠くない未来に近づいているように感じる。

 日本における環境もまた一つ不安材料である。G7首脳会談の中でも財務大臣会談でも議題になった経済回復のために市場に手厚くあるべきだという意見に日本はいまいち理解できてないようだ。早くもGo to再開に水を差すメディアや財政出動を渋る官庁の存在、さらにはクリーン社会の実現のための増税議員、官僚の存在は今後の日本経済をより失速させる大きな問題になりかねない。

日本の株価が今上昇傾向にあるのは、コロナを理由にした大規模な財政拡大の姿勢と日銀による金融緩和、そして世界中で財政拡大が起きていることが要因である。株価をバブルという人やこれ以上の財政拡大はインフレを引き起こすなどという意見が早くも世界では出ているが、日本はどうだろうか。

先日発表された消費者物価指数を見ると日本はこれほどまでに金融緩和や補正予算を組むなどの財政支出の傾向の中にあるにも関わらず-0.6%(前年比)という脅威の結果となっている。この状態で誰がインフレの心配をするのだろうか。私にはまったく理解できない。

これだけの政策を提示していても未だデフレ下の日本。今必要なのは経済の再始動と自由経済への回帰であることは明白である。環境への投資が集まることは結構なことだが、環境省の目指す炭素税や財務省の画策するコロナ復興税などは絶対に実現させてはいけない経済政策だ。今年の選挙ではコロナが与えた日本の経済が好調になる可能性を摘もうとする増税派議員を落選させなければいけない。世界が大規模な財政拡大や金融緩和で冷え切った市場を回復させようとしている中で増税などはキチガイの発想だとしか言いようがないのである。

 最後にオリンピックについてだが、これは菅政権の支持率を回復させるために実現した方がいい。菅政権は有事の内閣だから評価がいまいちだが、行革の姿勢や携帯料金の引き下げなど支持率が上昇してもいいような政策を多く実現させている。

しかし、コロナ対策となると、現在進行形で感染者を0にするまで緊急事態宣言は解除しないという方向で国家運営を行っている。今の菅政権には「経済と感染対策の両輪」などというあの言葉は存在しない。コロナを国内から撲滅し感染者を0にする勢いで対策をとることはヒステリックすぎる。今一度コロナウイルスについて冷静に見識を深めるべきだ。

世界中で第三波が終わろうとしており世界はワクチンの登場もあって前向きな行動にシフトしている。しかし、日本だけはその流れを理解できていない。緊急事態宣言で時短営業を求めながらも特措法で脅しをかけようとし、さらには補助金も満足に出さない。安保法で騒いだ憲法学者は財産権の侵害ともとれる政府の行動にまったく意見しない。現代日本社会の病理が一部のインテリ層にあることが露呈した瞬間である。

 オリンピックを実現するのであれば、その前に国民の多くにワクチン接種をさせた方がいいと考える。また件の東京都知事もパフォーマンスに専念してる場合ではなく、いかに安全にオリンピックを実現させるか政府と話し合いをした方がいい。

聖火リレーに文句をつけた島根県知事もそうだが、政治ゲームの一環で多くの国民の気持ちを踏みにじりすぎではないか。地方自治体が政府になんでも不始末の責任を押し付けているのであれば楽なものである。菅政権の支持率低下を見て菅首相批判が各地で起きている惨状は呆れてしまう。

確かに菅首相の判断ミスともとれる行動があったのは認めざるを得ない。あまりにもコロナに対する認識が過剰すぎる。しかし、それがこの国難においてリーダーの変更を求める声と同一かは怪しい。

オリンピックの実現は必ず菅政権のためになる。さらにG7首脳はオリンピック開催を支持してくれているのであれば、なおさら日本はG7の中で最も優れたコロナ対策国としてオリンピックに向けた準備を主導していかなければならない。だからこそ迅速なワクチンの普及は必須事項だ。

日本はアメリカ、イギリスに比べてワクチン承認が遅かった。

菅政権が現在のコロナ撲滅路線を継続していく予定であるならば、ワクチン承認が遅いのはオリンピック開催の不安を解消することの遅れにもつながりいいことではない。

一方で現在のコロナの見方を緩和して危険性が薄いことを発信できるのであれば、ワクチンの承認が多少遅かろうと問題はない。なぜなら日本の感染者数は欧米諸国と比べても圧倒的に低い傾向にあるし、死者数も少ないからだ。

どちらの路線を進むかで取るべき政策やその政策の意図、有権者へのメッセージは大きく変化する。現在の過度にコロナを恐れる路線においてワクチン普及は必須であり、迅速な対応をしなければ開催への支持は得られない。開催前にコロナは取るに足らないものだというメッセージを国民全体に浸透させなければいけない。

四月には補選が控える中、菅政権は国際社会の見据える方向性をリードできるのか岐路に立っている。


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