施政方針演説を読んで③「核はダメ、新しい外交をする」
前回は岸田政権の財政政策について書きました。今回は外交政策です。
岸田総理は外交方針について「新時代リアリズム外交」という言葉で表現しました。この新方針を林外務大臣の外交演説の内容と合わせて分析します。
・そもそもリアリズム外交とは?
この新しい概念の内容について考える前に、国際政治における「リアリズム」とは何かという話を明確にしようと思います。
「リアリズム=現実主義」
リアリズム理論において国家は外交で「国益」の拡大を目的とします。そして、国益を追求する手段として「力」を利用するとします。
リアリズムは現実に即した状況分析を通して、最終的な課題解決方法は武力(力)だよねと考えています。
ですから、対立する国家は力を強化することに固執してしまい、力を拡大することが本質になるというパワー・ポリティクスの概念が特徴です。
このパワー・ポリティクスだと各国は力を拡大することばかりになっていまうので、勢力均衡(バランス・オブ・パワー)が大事だと言います。
勢力均衡によって各国はどこか一国が強くなることを防ぎ、バランスをとることで国際社会が安定するのです。
他にもリアリズム外交においては道徳や倫理を重視することはありません。なぜなら、それが外交上対立する国家同士を倫理観で仲直りさせられることがないと考えるからです。
リアリズムはそのような「価値観重視」の外交方針を「理想主義」と批判します。
・岸田総理の「新時代リアリズム外交」とは何か?
岸田総理は「新時代リアリズム外交」として3つの柱を掲げています。
林外相も演説で3つの覚悟を述べました。
この段階で私は岸田総理が使用した「リアリズム」は国際政治における意味合いではないなと感じました。
なぜなら、リアリズムにおいて重要な国益については触れていますが、力についてはあまり触れていませんし、道徳や価値観などばかりを話しているからです。
岸田総理は「リアリズム」を「現実的な方法で外交を行う」という意味で使用していると考えられます。当たり前のことですよね。
1.普遍的価値観と中国
普遍的価値を守るという点でいうのであれば、最も対立することになるのは中国です。アメリカ・オーストラリア・インドとの「クアッド」などの関係強化などはいつものことで当たり前です。
中国については「言うべきことは言う」という聞いたことある話を繰り返しています。2022年が国交正常化50周年ということで「建設的かつ安定的な日中関係」を目指すとしています。
これは米中冷戦と言われる中で極めて不安な表現です。オーストラリアとアメリカは中国への対決姿勢を強めています。
インドと中国は昨年武力衝突事件が起きて対立が表面化しています。
ですけど、日本は対中非難決議一つできない状況です。
自民党は「非難決議」をしたいと話題作りをしていますが、何でも屋の自民党で本当に内容をまとめて実現できるかはわかりません。
岸田総理は人権補佐官などを置いては見たが、それがどこまで機能するかはわかりません。国内の保守派が求めるような中国への対応は期待できないと思います。
2.地球規模の課題解決
これは「余計な話をしやがった」と思いました。地球規模の問題というと環境問題でしょう。環境省が意気揚々と炭素税を導入しようとする未来が見えます。
貧困問題解決というのも、日本の出資でどうにかなると必ずしも言えない話です。国際機関にお金を拠出するといいますが、相変わらずだなと思います。
そして個人的に一番衝撃的だったのは核兵器についてです。岸田総理は選挙区が広島県ということで、核兵器に対して相当な思いがあります。
しかし、核兵器は現在の集団安全保障において重要な存在です。核兵器は危険な兵器だからこそ、持っているだけで軍事的な影響力に繋がります。
だから、北朝鮮などの小国家も国際社会での発言権を得るために核兵器開発を行うのです。
これをなくそうというのを建前で宣言するのは構わないですが、岸田総理は核兵器の廃絶に向けた国際会議を日本で今年中に行うというのです。
これはよくないです。ただでさえ、アメリカの「核の傘」によって軍事的に保護されている日本が核兵器廃絶のために国際的な会議を主導して行うというのは日本の安全保障上、大問題です。
3.国民の命と平和を守る
当たり前です。重要なのはどう守るかなのですが、それについてはあまり具体性がありませんでした。一年かけて防衛政策を策定するそうです。
北朝鮮が新年早々、ミサイルを発射している中で一年かけて防衛政策を組むよりも相手に対して有効な防衛政策を早々に議論するべきだと思います。
・終わりに
非常に不安な外交方針です。新しい方針を打ち出してはいますが、特に新しいものではないようです。
ロシアとは協力、韓国は現状維持、あとはいろいろ言ってはみたけど、どこまでできるのというようなものです。
中国と核兵器の問題は岸田政権の外交の大きな懸念材料になりそうです。
次回はそれ以外の部分から今年の参議院選挙で野党はどうするのがいいのかを考えます。
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