見出し画像

これぞ人生最低の花火

人生で、心の底から最高!最低!と言い切れることってあまり無い。でも花火大会については、この2週間のうちにその両方を経験してしまった。

最高の花火大会は、琵琶湖のほとりで、砂浜にレジャーシートを敷いて。ぬるい空気と波の音、決して派手では無いささやかな打ち上げ花火。 親しい友人とその家族と、宿まで10分で帰れる距離に安堵して、何も気に患うことなく、ゆったりと身を任せていた。

↑ 詳しくはこちらに。

最低は、えーっと、いまから本当に最低な話をするから、気分を害する人もいるかもしれない。申し訳ない。

はじまりは夫のドヤ顔だった。クルーズでの花火鑑賞チケットを買ったと。いや、この時わたしが聞き間違ったのか、脳内補正をかけてしまったのか、正しくはクルーザーだった。

クルーズ船とクルーザー、この差はあまりにも大きい。娘に浴衣を着せて行ったら、まずライフジャケットの着用から始まって困惑した。船、小さいな…?

ジャンボフェリー、さんふらわあ号、それくらいの大きさなら良い。船は大好きだ。せめて観光船であって欲しかった。 15人定員くらいの小さなクルーザーは、船は船なんだけど、すんごい揺れる。

開始30分で、私は絶望の淵にいた。船が揺れて、もう「気持ち悪い」以外の意識がない。すでに海へ向かって30分も進んでしまったし、他にお客さんもいるし、花火大会が終わるまで、逃げようがない。

娘もぐったりしてきている。夫を見ると、彼も明らかに船酔いしていた。おいてめえこのやろう、どんな船か確認したんかい、という気持ちになる。しかし他にもお客さんが数名いたため、ぐっと耐える。目を瞑る。花火はまだ、はじまってもいない。

大丈夫、あと2時間我慢したら、noteのネタにしよう。2時間か、長すぎる…

地獄だ…
ぽつり吐き出した言葉も、誰にも聞かれずエンジン音にかき消される。

やがて1人、2人と船酔いに挫折し、横になる人が増える。はじめは場所を譲り合っていた私たちも、小さなデッキで横になり、風に吹かれる。内臓が、まるごとシェイクされている。

見ると、夫が海の外に身を乗り出し、腕立て伏せのようなポーズで吐いていた。うーわ。地獄だ。地獄オブ地獄。

唯一元気な息子が、大きな声で呼びかける。
「ねえぱぱ、げえしてるの?だいじょうぶ?」
すかさずそれを私が制する。
「いいの。パパを見ないで、何も言わないで。ママもやばい。」半ば羽交い締めした息子は、尚も元気におしゃべりしている。

これはまずい。世界一愛しい息子の無邪気なおしゃべりに憎悪が生まれそうなほど、限界だ。 息子を抱きかかえて娘に膝枕した状態で無理矢理に目を瞑り、少し眠った。

パンッ…パンッ…
わぁ!花火だー!娘が目を輝かせる。なんと、娘が復活している。強い。ニコニコしながら夫の膝の上で笑っている。夫も、吐いたからか復活しているではないか。息子は、疲れて私の膝枕で寝てしまった。私はまだ、内臓がゆらゆらしている。

海に上がる花火は、確かにきれいだった。1週間前に見た花火大会と比べるまでもなく豪華で、薄目を開けて見た大きな花火は、光の雨が降り注ぐようだった。みんなが感嘆の声を漏らしていたほど。だけどそんなの、ねえ。

トータル2時間半の地獄を経て、私たちはようやく陸に戻った。戻ったら戻ったで、変な桟橋で降ろされて道に迷い、更に管理室が閉まっていて、借りたものが返却できないという事態になり、しばらく暗闇を彷徨った。まあ地獄というコンセプトから言うと最後まで一貫していた。

帰りの車中、せっかくなので家族で気づきの発表をした。
・陸って揺れないからサイコー
・なぞだった、なぞが怖かった
・花火が大きくて、すてきだった!でも船はもう乗りたくない
・パパの予約は、ダブルチェックが必要
・パパが吐いている姿が、いちばん最低だった。足がピンと伸びてプルプルしてた腕立てみたいで気持ち悪かった。
(本人からの言い訳)→なるべく遠くに吐こうとしていた

あーあ。本当に最低。最低すぎて、爆笑して帰った。笑いは緊張の緩和だと、そういえば誰かが言っていた。

#花火大会 #花火 #クルーザー #船 #夏 #思い出 #日記 #エッセイ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?