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「お金」の値段 ≓「金利」が安過ぎる! ー 日銀の「ターミナルレート」は?

 金利トレーダーとしての約25年、何度も何度も見てきた光景だがとにかく米株価は下がらない「ブラックマンデー」「リーマンショック」「コロナ危機」と暴落を繰り返しながら不死鳥のように蘇ってきた

 中心的役割を果たしてきたのがFRB「お金」の値段 ≓「金利」を下げることによって相対的に「モノ」の値段を上げ「株本位制」金融帝国・アメリカを支えてきた。その構図は今も変わっていない

 これにもの申してきたのがマーケット、特に米国債市場だ。ところが「リーマンショック」後に中国が「世界の工場」として台頭し安価な商品を大量に供給「ディスインフレ」時代の訪れで「金利は死んだ」。さすがの米国債も黙らざるを得ない状況が長く続いた

 だが「金利」は死んでいなかった

 20年以上沈黙していた「インフレ」は実は莫大なエネルギーを溜め込み、「米中対立」と「コロナ危機」で一気に噴き出した▼1億人近くの「ベビーブーマー」が引退するという「人口動態」の急変はまさに ”時限爆弾” 。これらの事情が重なって「インフレ時代2.0」に突入

 長い間沈黙を強いられてきた米国債市場が大きな声を上げた

 「イールドカーブ」を見てもらえば判るが、最も声が大きいのが10年超の長期金利。まるで「株本位制」金融帝国を守るべくFRBが「利下げ」転換した事に意義を唱えるかのよう。「ターミナルレート」は計算上@3.25%になっているが、その後@4%近くまで戻ると算定。「お金」の値段 ≓「金利」が安過ぎる!と示唆している

 CPIが低下基調にあるヨーロッパも9月「再利下げ」が既定路線だが、こちらも長期金利は上昇基調BRICSに至っては全然「金利」が下がってこない。やはり「お金」の値段 ≓「金利」が安過ぎる!という事だろう

 筆者はいくらFRBとECBが「利下げ」しても「お金」の値段 ≓「金利」が下がる気がしない。これはグローバルな金利投資家も同じはず。中国の▼1京円も含め、*全世界で▼3京円強に膨らんだ「借金」を回収しない限り「モノ>お金」≓「インフレ」は収束しない金利市場の明確なメッセージである

 *ビットコイン(BTC)もナスダック「マグニフィセント7」も下に行きたがっているように感じるが、それでもゴムのように戻ってきてしまうのは「金利」が十分高くないから。つまり意図的に価格維持を図っているとも言える。逆に言えば金利市場が反乱(≓金利急騰)を起こせば「お金」は雪崩を打って動き始める

 米国債売り(金利上昇)≓「ドル買い」

 ここ数年のデータをベースにすれば「AI」にこうプログラムされていても不思議はない。 続・マーケットは「円キャリートレード」中毒 ー  きっかけさえあれば「金利差」に群がる "飢えた狼達" |損切丸 (note.com) 状況下ではあっという間に「円安」BTCや「マグニフィセント7」を買う「お金」が足りなければどうしても「実質金利」が安く流動性豊富な「円」を借りたくなる。一種の「中毒」症状

 だからウォール街やヘッジファンドなどの投資銀行業界では「ドル円」は上がらないと困る。こうなると日銀「利上げ」の「ターミナルレート」が気になってくる

 「借金」漬けで「預金」の足りない米国債ではTB(短期債)には金利プレミアム(上乗せ金利)が付くが、「預金過多」で邦銀が「お金」を持て余しているJGBではディスカウント(割引金利)になる。3~6ヶ月TBでは政策金利@0.25%に対して▼0.15%ディスカウントになっており、それを元に「イールドカーブ」を引くと、現状の日銀「利上げ」は来年初に+0.25%×1回、来年末に更に1回、計+0.50%のみと推定している

 2025年前半に@1%に到達すると見ている「損切丸」にしてみれば随分と甘い見通しだが、まあ30年も「低金利」に浸っていれば致し方あるまい。「そんなに上がって欲しくない」という邦銀勢の願望にも見えるが**マーケットはそれを許してくれるだろうか「円安」が再加速するかもしれないし、日経平均が再び@40,000円を超え「インフレ」が再度襲うかもしれない(先物では既に@39,000円超え

 **想い出すのは2022年に突如 パウエル議長の "心変わり" 。|損切丸 (note.com) で「利上げ」が始まったアメリカウォール街の「利上げは2%(3%)止まり」という甘言に乗った米銀はシリコンバレー銀行やシグニチャーバンクの破綻という犠牲を負った

 未だに「護送船団方式」の日本では、日銀や金融庁が手取り足取り世話を焼くためアメリカのようなドラスティックな動きにはなるまい。だが今回は状況がかつてなく厳しい。銀行を守るためだけに「円安」を放置できないからだ。筆者が「利上げ」前倒しを見込む理由はそこにある

 困るのはウォール街もBRICSも一緒。日銀経由の500兆円近い供給が途絶えればたちまち「お金」が不足する。つまり「お金」の値段 ≓「金利」は上がらざるを得ない低金利に安住していた株価などが影響を受けるのは必至で、遅くとも来年の前半には正念場を迎えよう

 今は音無しの日銀「利上げ」だがさて…。総裁・副総裁の発言にもそういう苦悩が滲んでおり、今後はかなり注意が必要になる。我々日本人が想っている以上に「円」のマーケットヘの影響は甚大なのである

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