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激変する「インフレ見通し」。 ー BEI(予想物価変動率)の急上昇が示唆するFRBによる「利上げ」の ”前倒し” 。

 FXをやっている人でも、最近は米国債金利をウォッチしている人も大分増えている。ただ代表的な10年米国債だけを見ていると、昨日(10/22)の引け@1.69では@1.70%台の直近高値を超えていない

 だが実際は2つ大きな変化が起きている。

 1つは最近の「損切丸」で繰り返し書いてきた2~5年の金利急騰。遂に2年債が@0.44%、5年債が@1.22%まで上がってきた(前稿で2年債@0.40%の買い推奨をした筆者の面目は丸つぶれ(苦笑)。まあこの程度の ”振れ” は良くある)。とにかくFRBによる「利上げ」の ”前倒し” が起きている。ここまで上がると ”シミュレーション” もなかなか追いつかない。

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 そしてもっと驚いたのがTIPS(物価連動債)。今週に入ってBEI(予想物価変動率)が急激に上昇した。例えば*少し前まで@2.6~2.7%程度で推移していた5年BEIは一時@2.98%と@3%に急接近した。

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 ちなみに直近の英国債10年BEIは@4.17%と4%を超えている。

 Initial Claims (新規失業保険申請件数)が前週比▼6千件の29万件と、「パンデミック」が始まった2020年3月半ば以来、1年7カ月ぶりの低水準を付けた。米労働市場の引締まりを示唆したが、それにしてもこのTIPSの動きはかなり衝撃的だ。

 これまでパウエル議長をはじめFRBは「インフレは一時的」という主張を繰り返してきた。だがアトランタ連銀のボスティック総裁が指摘したように**マーケットは「インフレ」高止まりにシフトしていると考えて良い。

 **余談だが、ワイトマン独連銀総裁が5年以上任期を残して年末にECB理事から退任すると発表された。「インフレ見通し」についてECB内部で激しいバトルがあったことは想像に難くないタカ派を自認するドイツ・ブンデスバンクとしては、イタリアフランスなど ”ラテン国家の甘さ” が耐えられなかったのかも

 「GoTo」は閑散期に実施を 経済同友会

 さて日本「GoTo」キャンペーンは「物価」と関係なさそうだがさにあらず。実はCPI(消費者物価指数)に大きく関与している。"値上げの秋" 2021 ↓(10/1)でも書いたが、CPIを年率マイナスに押し下げている犯人がこれ。本日発表の9月CPIがようやく@+0.2%にプラス転換した。

 これだけ "値上げ" が続くのに物価がマイナスという "嘘" のような話黒田総裁も会見でちょっとだけ触れていたが、「GoTo」でCPIが▼1%ほど下振れしたそうだ。前首相が無理強いした携帯電話の料金値下げも ”マイナスCPI” に寄与している。

 この** ”カラクリ” については何度か書いたが、①低金利を維持したい財務省②賃上げを阻止したい経済団体、そして③特定の支援団体に「お金」をばらまきたい政治家ががっちりタッグを組んでいる。だが今の日本で「物価」が下がっていると信じる国民などいないだろう。

 ***「GoTo」が開始されたのは忘れもしない2020年11月そこからCPIはマイナス圏に沈んだこの時期に「GoTo」再開を言い出すのは、そうしないと低すぎた昨年末との対比でCPIが大きくプラスにぶれるから? 穿った見方かもしれないが、過去が過去だけに「悪巧み」を想像してしまう。

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 そもそも今回の選挙で与党も野党も「分配」「分配」と喧しいが、本来「分配機能」の王道は「金利」のはず。 "給付金" など配らなくとも****1,000兆円あるJGB(日本国債)の金利が「物価」に合わせて+2%上がれば+20兆円の利息が「分配」される。 "給付金" なら1人当り+20万円に相当

 ****良く「金利が上がると住宅ローンを借りている人が困る」と喧伝されるが、これは完全に "レトリック" (詭弁)。家計の「借入」は預金の3分の1未満。企業の借入コストも確かに上がるが、この程度の金利上昇でやっていけなくなるような "ゾンビ企業" はそもそも市場から退出すべき

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 さらに「正しいCPI」は「正しい賃上げ」を促すため、世界的にも異常な「低賃金」も解消に向かう。何も無理やり税金で企業を罰しなくとも、 "不当に巨額な内部留保" を是正する効果もある。

 30年で平均賃金がアメリカの半分になってしまった日本の失敗の根源は、この「勝手ルール」にある。思えば「内輪の論理」を優先した住宅や自動車の「データ改竄」や食品の「産地偽装問題」も同根もともと勤勉で充分な能力も備わった日本人が ”普通” に精進していれば、ここまで他国の後塵を拝することはなかったはず。端的に言えば「経済大国」の慢心だろう。

OECD平均賃金推移

 こんな事は霞ヶ関永田町で働くレベルの人達なら充分認識しているはずだが、それが全く表に出てこないのは余程財務省が怖いのだろう。しかし「財政健全化至上主義」を唱えるなら、むしろ金利上昇は歓迎すべき事態金使いの荒い人達に「無利息」で貸せば止めどなく「お金」を使うが、利払いが20兆円も30兆円も増えるとなれば簡単に「借金」できなくなる。本当に「財政健全化」を掲げるなら「金利上昇」を提言すべきなのである。

 しかし「無理は通っても無理」国内の「預金」リソースを使い切った日銀・財務省には、これ以上 "物理的" に金利を低く維持する術がない「通した無理」は「円安」に転嫁し、最終的には「金利」に返ってくる。随分 "回り道" をしてしまったが、やっと円金利にも「夜明け」が近付いている


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