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見た目に騙されるな!PartⅢ - ”金利トリック”の「カラクリ」。

 賃貸物件A:家賃17万円 共益費5千円 敷金1か月 礼金1か月 47㎡2017年7月竣工(築3年) 駅徒歩7分

 賃貸物件B:家賃20万円 共益費1万円 敷金--- 礼金--- 45㎡ 2020年7月竣工 駅徒歩9分 フリーレント2か月

 「損切丸」、不動産にも少し興味があるので近所の土地や売買物件、賃貸相場などを時々チェックしているのだが、賃貸物件で ↑ のような2件を見た。物件Bは新築とはいえ、駅からも遠いしサイズも少し小さい。どうして賃料がこんなに高いのだろう。

 「ああ、なるほどね」

 広告を良く見たら程なくして気がついた。ポイントは敷金、礼金、そしてフリーレント(賃料ゼロでの貸出)。それらを込みにした平均家賃(2年契約)を計算し直してみよう。(但し敷金の返還分は考慮しない)

 物件A:17万5千円+(敷金17万円+礼金17万円)÷24か月=18.9万円

 物件B:21万円x(24か月-フリーレント2か月)÷24か月=19.2万円

 2件の家賃がほぼ同じであることがわかる。しかし、入居希望者の募集を考えると、明らかに高い家賃設定に方が不利なのになぜこんなことをするのか? そこには詐欺とまでは言わないが「カラクリ」が存在する。

 よくこういう賃貸物件を「収益物件」として売り出す時に「利回り」を宣伝文句とする。この物件A、Bを売り出すとどういうことになるか。

 物件A:価格5,000万円 家賃17万5千円 利回り@4.2%=17万5千円X12か月÷5,000万円

 物件B:価格4,800万円 家賃21万円 利回り@5.25%=21万円x12か月÷4,800万円

 「収益物件」としては断然物件B>Aに「見える」。そう、そのためにわざわざ無理な家賃設定をして募集をかけているのだ。「敷金・礼金ゼロ」や「フリーレント2か月」はそのための「仕掛け」である。

 更に*「悪企み」は続く。高い家賃設定で募集が苦戦するのが判っているので、今度は賃貸募集業者に手数料を多く払って優先的に紹介して貰う。通常大家さんが業者に払う手数料は1か月だが(つまり礼金は業者に流れるだけで大家さんの収入にはならない)、これを2~3か月に引き上げる

 知り合いの不動産業の方何名かにこのことを話したら、「ああ、はいはい。」という反応だった。おそらく業界内ではよくある話なのだろう。あまり感心しないが、騙される業界外の人達にはしゃれにならない話だ。

 物件Bの売買業者は「収益物件」として売却すれば4,800万円x3%=+144万円手数料が入ってくるので、仮に賃貸募集で▼20万円x3か月=▼60万円コストがかかっても差引+84万円収益が残る。だからこんな事をする。

 この場合、可哀想なのはそんな「カラクリ」も知らず「@5.25%の収益物件」を買ってしまう(プロではない)投資家。最初の2年間はいいが、元々割高に設定されている家賃。更新の時同条件のままではほとんどの居住者は出て行ってしまう。相場並みの家賃への引き下げを余儀なくされれば、物件がせいぜい@4%そこそこの「利回り」だと気付くだろう。家賃を下げ渋って空室期間が長引けば、収支はもっと悪化する。

 そもそも賃貸不動産に「利回り」を用いること自体が「カラクリ」でもある。入居者が入らなければ収入もなくなってしまうのだから、利払いが確定している(除.デフォルトリスク)預金や債券の「利回り」とは概念が異なる。この辺は株の「利回り」も同じで、今回の「コロナ危機」のように「無配」の企業が続出すれば「利回り」も何もあったものではない

 「損切丸」がこういう ”金利トリック” に聡いのには理由がある。投資銀行業界でよく出回るオプションなどを使った「仕組み商品」に似たような「手口」がある。特にヨーロッパの "ラテン系大国" の銀行が持ってくる案件は要注意だった。契約書を隅から隅なで舐めるようにチェックしないと、こちらが為替リスクなど不要なリスクを負わされたり、キャンセルに膨大な手数料がかかったりする「仕掛け」が施されている、等等。

 彼らはこれを「アービトラージ=Arbitrage、裁定取引」と呼んで立派な金融手法だと思っているようだが、何の事は無い、他人の懐からお金を抜くだけ。だから**いつもマーケットで間抜けな奴を探している。そもそも英語の Arbitrage も悪い意味で使われることが多いので、まあ意味が合っていると言えば合っている(笑)。

 **「リスクゼロで儲けるんだ!」  転職の時この "ラテン系国家" の銀行も回ったが、面接した人がこう声高に主張していてひっくり返りそうになった。日本人も同じ島国のイギリス人も収益はリスクを取った対価として得られるもの、と理解しているのでかなりの違和感。もっとも彼の国では「騙す奴」より「騙される奴」が間抜け、という概念が定着しているので、悪気はないのかもしれない(笑)。この Arbitrage 的な考え方、実はアジアの大陸国も同様。実際に取引した方々はご苦労されたと思うが、特にお金のやり取りは要注意。くれぐれも「間抜け」にならにように。

 これらのことから得られる教訓は1つ。繰り返しみたいで恐縮だが、そんなにうまい話は転がっていない、ということ。特に他人が持ってくる話は要注意だ。本当にうま味があるなら売ったりしない。儲けの "種" はあくまで自分で見つけるのが基本で、それが「安全」かつ「確実」である。

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