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「利上げ」のアメリカ VS 「利下げ」の中国の "対決" ?。

 2021年12月CPI(年率) 中国 +1.5% 予想+1.8% 前月+2.3%
     同     アメリカ +7.0% 予想+7.1% 前月+6.8%

 米中で対照的な結果となった12月のCPIアメリカは+7%に達し、いよいよ「利上げ」モードだが、中国はCPI低下で「利下げ」気運が浮上

 指標の真偽は別として(統計不正が問題になっている日本が言えた義理ではないが)、これを機に中国では来週にも中期貸出制度(MLF)による1年物金利が現行の2.95%から▼5~▼10BP引き下げるとの観測が出ている。↓ 

 10年中国国債金利も、パンデミック勃発時に付けた市場最低金利@2.50%台に向け、じわり低下が続く

 米中の金融政策がこんなあからさまに逆向きの ”デ・カップリング” をした例は過去にない。これも「米中対立」の一環か(笑)。まあ中国恒大を筆頭とした不良債権問題が深刻化し、貸し込んだ銀行に危機が及ぶリスクが高まっているので中国の「利下げ」は政策として間違ってはいない

 ただ気になるのは「人民元」が実質「ドルペッグ」(ドルを裏付けとして通貨を発行する手法)であること。実際完全に「ドルペッグ」していた「香港ドル」は景気動向に関係なく金融政策もアメリカに連動させていた*「人民元」が「ドル」からちぎれた時、一体どうなるのか、想定が難しい。

 経済学の教科書的に言うと「信用」の裏付けのない法定通貨の乱発は「インフレ」を招く。つまり景気は悪化するが物価は上昇する「スタグフレーション」の目が出る可能性もある。その時は世界中で「インフレ」の炎が燃えさかってしまうかもしれない

 「中国株の買いを推奨」「 "避難先" として欧州株が有望」

 最近ウォール街がこぞって唱えていたが、案外この「金融緩和」ベクトルが根拠かもしれない。金利が下がりそうなのは中国のみ(注:通貨暴落中のトルコは除く。苦笑)。今日(1/12)香港ハンセン指数が急反発したのもそのお陰だ。そして中国に次ぐのが「利上げ」に及び腰な欧州株というわけ。FRBの「利上げ」阻止運動が失敗に終わり、 ”宗旨替え" を試みたのだろう。

 「株式投資」と「金利」の相関関係。|損切丸|note で良く使われるのが「イールドスプレッド」。計算式は  の通り。

 最近ナスダック指数が米国債の動向に大きく反応しているが、これは「イールドスプレッド」が@1.6%台と低く「金利」に敏感だから。裏を返せば「超低金利」が株価の上昇を正当化していた事になる。@3%近辺のS&P、@4%弱の日経平均は比較的「割安」という理屈だが、そもそもヒストリカル平均は@4%前後。いかに今のナスダック指数が突出しているかがわかる。通りでウォール街が「利上げ」を嫌がるはずだ。

 一方中国「不良債権問題」→「利下げ」の流れを見ていると、やはりバブル崩壊後の日本を彷彿とさせる14億人もの人口があるとはいえ、おそらく中国景気を支えているのは都市部の2~3億人少子高齢化が進む姿もそっくり。独裁的政治手法で不良債権処理に20年もかけないかもしれないが、「逆資産効果」で国民の消費力が衰えるのは同じ。最悪「日本型デフレ経済モデル」↓ に陥るかもしれない

 「米中対立」が先鋭化し、世界が「アメリカ経済圏(インフレ)」と「中国経済圏(デフレ)」に真っ二つに割れたらどうなるのだろう。例えるなら「燃えさかる山火事」「ブラックホール」。どちらもそれなりに困難が伴うが、中国に深く食い込んでいる日本やドイツがどうなるのか、興味深い。

 「投資」の観点からは、「イールドスプレッド」や「金融緩和」が中国株に有利に働くとしても、それはあくまで「欧米流」の話。今回の中国社債のデフォルト処理に見られるように、法的な根拠も曖昧で全て「政府の意向」だけで決まるとすれば、年金など長期投資資金は入ってこない

 かつて日本がアメリカに挑んだ時に目指した「内需型経済」と中国が掲げる「共同富裕」はほぼ同義と筆者は理解しているが、それもアメリカにモノを売って得る莫大な利益があってこそ。いくら14億人いても中国国内完結の経済だけで今の ”豊かな生活” を維持するのは無理がある。

 一方アメリカも無傷では済まない中国とは膨大な量の貿易が存在し、これをゼロにするのはほぼ不可能。特に「安い輸入品」は「山火事」鎮火にも効果があるわけで、これを減らすことは「火事」の延焼拡大を意味する。

 「損切丸」を書いて3年、「インフレ」を基本シナリオとしながら何となくモヤモヤしていたのは、この「ブラックホール」の存在だと改めて気が付く。それが近代経済史にも例のない米中「利上げ」VS「利下げ」の "対決" という形で現れた。30年間「デフレ」=「ブラックホール」を体験した日本人としては大いに関心がある。我々の生活に多大な影響が出るのは必至だ。

 「山火事」も「ブラックホール」もどんどん大きくなると最後に待っているのは ”破滅” 。その前に "手打ち" があると期待したいが…。焼け死ぬのも "再び" 闇に飲み込まれるのも、どちらも嫌だなぁ。

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