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資金集めに奔走する中国 ー 債券市場「試験プログラム」。外国人の直接投資を9/1から試験的に認可 。

 香港問題以降、米国の制裁により「お金」、特に「ドル」の調達が難しくなった中国。中国政府は海外からの投資資金集めに躍起になっている印象だ。米国との摩擦が激しくなった2017年以降、ドル建債(e.g. 60億ドル@2019.11)、ユーロ建債(e.g.40億ユーロ、@2019.11)を規模を拡大して立て続けに発行している(  はドル建て起債)。

中国ドル債

 国内の人民建国債利回りも10年債が3%を超えるなど金利上昇も続いており(標題添付)、9月から始める海外投資家による債券直接投資の「試験プログラム」もその一環だろう。中国本土の株式や債券に投資する資格である「適格外国機関投資家」(QFII)+「人民元適格海外機関投資家」(RQFII)に認定された機関投資家らが利用可能となるという。

中国公司@2020.8

 今までは豊富な海外資金を惹き付けてきた香港ハンセン指数も、香港問題以降は不調を極めており資金流出懸念が強まっている。直近で随分売り込まれたとはいえ、その時価総額は未だ40.2兆香港ドル(約5.2兆ドル)もあり、上海と深圳を合わせた70.8兆人民元(約10.2兆ドル)に比肩する大きさだ。日本株の時価総額が5.9兆ドル(@2020.6末)であることを考えれば無視できない市場であることは明らかだ。

中国株時価総額

 年初来でハンセン指数が▼10%、*上海・深圳が+16.6%である事から、まずは中国本土ベースの資金を香港から上海・深圳に移して資本流出を防いでいると推察される。

ハンセン(1年)

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 こうした動きに着目したファンドやトレーダーが ”提灯” をつけて、先物などを中心に中国本土株を買い上げている可能性が高く、上昇幅が増幅しているのだろう。ただ彼らは儲けて利食えばお終いの Fast Money であり、今後波乱要因となるかもしれない。

 実際、中国はここまでアメリカに輸出品を売って経済規模を拡大してきており、人民元の発行残高も米ドル資産の増加に裏付けされてきた。 実質的な「ドル・ペッグ」と考えて良いだろう。

人民元・外貨資産

 これはまさに**高度成長期の日本と同じ状況だ。だから日本も「円高」を人質に取られて痛い目にあったわけで、ドルは中国経済のアキレス腱でもある。さすがにアメリカもドルを完全に止めて一気に中国を潰すようなことはしないだろうが、やり方はいろいろある。

 **当時の日本も「円の国際化」「円建て決済の促進」など様々な方法を試みて「ドルの支配」から抜け出そうとした。時の橋本総理が日本刀を持ちだして「米国債を売るぞ!」と啖呵を切ったこともあったが、結局アメリカの軍門に降った。今の中国を見ているとビデオの再生を見ているようだ。

 その他に「デジタル人民元」の発行も急いでいるようだが、思ったような効果が得られるだろうか。短期益狙いの Fast Money や支援を受けているアフリカ諸国群はともかく、今回の「コロナ危機」対応の「強権発動」を見ていると、肝心の欧米の年金等の長期資金を取り込むのはかなり困難だろう。何せ法的な裏付けが希薄で、いつ強制収奪されるかわからないのだから。

 「内ゲバリスク」という歴史的「国内要因」があって、東シナ海も南シナ海も軍事的に強硬に出なければいけない事情はあるのかもしれない。だが、これで海外の資金を取り込もうというのは大いなる矛盾だ。アメリカとの軍事的緊張が高まれば高まるほど海外の「お金」は逃げていくだろう。

 人権問題もイギリス等で大々的に取り上げられ、中国包囲網は着実に出来上がりつつある。一体中国はどうしたいのか。「平和ぼけ」の日本人である「損切丸」には皆目見当がつかない。

 ただこういう時思い出すのが「損切丸」座右の銘。↓

 「無理は通っても無理」

 マーケットでも無理に結果を出そうとすれば、歪みが出て必ず「倍返し」を食らう。バブル期の日本は失敗したが歴史は繰り返すのか。見物である。

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