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サヨナラ ?「マイナス金利」 ー 減っていく「お金」の奪い合いが始まる。

 「金利が低くて "円安" で言い訳ない!」

 筆者が22年間円金利や日銀と関わってきてずっと抱いていた素直な感情。実際「バズーカ」以降の金融政策は常軌を逸していた。仕事を止める決断の "ダメ押し" になったのが「マイナス金利」発動だった。

  ”個人的恨み” はさておき(苦笑)、金利上昇は新しいステージ入り。「超低金利」の象徴とも言える「マイナス金利国債」が徐々に消えつつある。代表格はヨーロッパ日本だが、*10年国債ではオランダもプラス金利圏に浮上し、残るはドイツとスイス ↑ 標題添付ご参照)。

 *ECBの政策金利@▼0.50%の影響を受ける5年以内の短・中期債はやむを得ないが、さすがに今の世界的物価状況を勘案すれば「マイナス金利」がいかに ”現実離れ” しているかECBも認識しているはずだ。

 「マイナス金利国債」からの脱却 "挑戦" は、筆者の記憶でこれが3回目。その度に「中央銀行の壁」に跳ね返されてきたが、ようやく ”本波” がやってきた。心配された株価の調整も、今のところ物価に沿った ”名目価格” の上昇力が上回っており、金利上昇の背中を押している

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 さて我が国「日本」だが、大手メディアがこぞって「円安」を "悪者扱い" するのは、おそらく筆者が生まれて初めて。その一端を担っているのが、30年間ほとんど伸びなかった「賃金」だ。国際比較では、主要国の中で一国だけ ”置いてけぼり” になっており ↓ 今年だけでも▼10%の「円安」が大きく影響している。アメリカの賃金上昇はやや異常な感も拭えないが、それでも日本がその半分というのまさに ”あり得ない”

OECD平均賃金推移

 通貨安は輸入物価の上昇を招くので、 ”スタグフレーション” 的な色彩を帯び、この国では「生活が苦しい」という実感が増している。政治もさすがに輸出企業ばかりに配慮する訳にはいかなくなってきた。そういう意味で次に槍玉に挙がるのは「超低金利」になる

 そもそも「アベノミクス」の正体は「超金融緩和による円安 → "名目株価" の上昇」。だが「通貨安+物価上昇」で生活民には何の得もないことがだんだんばれつつある「ようやく」の感もあるが、ここに至るまで30年以上も費やしてしまった。通貨が高くなって滅んだ国はないが「逆」は数多ある

 戦後70年続いてきた昭和的 "円安政策" がようやく転換する気配。だが、大きな壁になるのは「財政健全化至上主義」を標榜する財務省だ。**元・財務官の黒田総裁の主導する「量的緩和」の "隠れた目的" は「低金利維持」ための「国債管理政策」であり、「利上げ」には強行に反対するはず。その "予防線" としての現役次官の「財政危機論文」の投稿だろう。

 **「損切丸」でもずっと書いてきたが、国債買取のための ”弾” が尽きていることは財務省も既に承知している。3月の「金融政策総点検」も渋々飲んだのかもしれない。日本人が戦後70年もかけて貯めた「預金1,000兆円」のリソースを使い切って「国債管理政策」を優先した罪は重いほんの4~5年でどんどん役職が変わる官僚制度の弊害とも言えるが、全てが次の人に引き継がれる「前例主義」はもう止めるべき時にきている。

 「金利」が上がって「円高」になることは何も悪い事ばかりではない。今ならむしろ利点の方が多い。まず仮に1,000兆円の「預金」に@1%の利息が付けば、それだけで+10兆円の利息収入が入る。「10万円給付金」とほぼ同額であり、消費を刺激するはずだ。

 また最近は台湾のTSMCが熊本に工場を建てたり、米マイクロン2019年の+10%拡張に続き、東広島に新規の半導体工場を作るとの情報もある。これらの動きは「経済安全保障」がきっかけだろうが、もう一つ重要なのは ”日本が安くなったから” 。不動産価格も労働力も、日本アメリカはおろか、中国や一部ASEANよりも安くなっている ”質” を考えればかなり "お買い得" 。今後は***「円高」がこういう「投資」の呼び水になる

 ***ここ数日気になっているのが突然起きている「人民元高」。覆面で「ドル売・人民元買」介入しているのかもしれない。おりしも40億ドルものドル建国債を起債する予定のようだから、「外」から「お金」を集めたいところ。「通貨安」が致命傷になるのは中国政府も承知している。

 日銀(3月)に続いてFRB「テーパリング」ECB「資産買取減額」「お金」の回収に乗り出した "中銀連合" 各国の「利上げ」に関して言えば、どんどん上げているブラジルにわかに観測の高まったニュージーランド11月に+0.50%観測の出ているイギリス、等等、減っていく「お金」の奪い合いに続々名乗りを上げている

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 戦後初めての「悪い円安」世論に乗って、日本もこの**** ”金利引上げ競争” に参加できるか。またぞろ財務省の "強硬な反対" にあって頓挫しそうな気配もあるが....。そうなれば ”もっと貧しい日本” が待っているだけ最大の「受益者」である10~30代にはぜひ選挙に。

 ****2年米国債@0.40%は既に@0.75%までの「利上げ」を完全に織り込んでおり、かなり魅力的金利水準「お金」を持て余している投資家の中には「黒い白鳥」や「灰色のサイ」に備えて "保険的" に買う向きがでてもおかしくない。同様の理屈は@1.1%を超えた5年債にも適用できる。

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