見出し画像

「投資」は ”チキンレース” なのか。 ー リスクとリターンの狭間で。

 「生きていくのに "リスク" はつきものだ」

 最近のニュースでロンドンの街中を見て驚いた方も多いかと思う。7月に「コロナ規制」を全廃した後、マスクを付けている人もほとんどおらず、パブには多くの人が集まって酒を飲んでいる。日本人的感覚としては「何て無謀な」と思うかもしれないが、イギリス人と20年以上関わってきた筆者としては頷いてしまう部分もある。代表的なのが街頭インタビューで中年のおじさんが言っていた冒頭の発言。* "リスク" に対する意識がまるで違う。日本人でこう言い切れる人が一体どのくらいいるだろうか。

 初めてロンドンに出張した時、金融街のシティーを歩いていて驚いた。地面に直径30メートルはあろうかという大きな穴。聞けば前週にIRA(アイルランド独立闘争を行ってきた武装組織)の爆弾テロがあったばかりだという。だがその横を何事もなかったかのように平然と出勤していく。彼ら曰く:「こういう時こそ "普通" にしなければ。怖れおののけば向こうの思う壺」未だに隣国のミサイル発射で大騒ぎしている日本とは随分違う

 これは「投資」に関しても同じ。若い世代がネット経由でFXや株を頻繁に取引するようになってようやく "リスク" に対する理解が進んできたが、「昭和世代」を中心に未だに「誰かのせい」にしないと気が済まない悪しき風潮が残っている。だからみんなと同じ行動をしたがるのだろう。 ”同調圧力” も、何個も印鑑が押されるのも「誰かのせい」にしたいから

 この「損切丸」もそうだが、最近「お金」に関する書き物が随分増えた。だが日本人にとって大事なのは「方法論」ではなくこの "リスク" に対する認識。平たく言えば「自分で決めること」、そしてそれを他人やマーケットのせいにしないこと。香港で雇ったトレーダーが損をすると「マーケットが悪い」とやたら力説していたが、こういう人は「相場」には向かない

 まあ「投資」「相場」が怖いのは理解できる。闇雲に走ればいつ "崖" から落ちるかもしれない ”チキンレース” のように感じるだろう。「お金」の教育が十分されていない日本人ならなおさらだ。

 そこで、元・金利の専門化として今動きの激しい米国債を例に「投資」の考え方を1つ紹介してみよう。

 現在の米国債金利の推移 ↓ 

画像1

画像2

 FRBの政策金利がまだ@1.50%だった頃の金利@2019.11.8を参考に表示したが1つの目安にはなる。ただ「金利」の場合大事なのは「時系列の比較」よりも絶対的な "Value" (投資価値)になる。どういうことか。

 FXと違って「金利」は中央銀行が直接的に関与する。だから市場における「多数決」よりも政策金利の動向、つまり「利上げ」「利下げ」の行方が重要になる。誰かが売ったとか買ったとかよりも「FRBがどうするか」。そう言う意味では「自分で考える」、それも ”独りよがり” ではなく中央銀行の考えに寄り添う事が肝要になる。

  ↑ 表を見ると判るが、2年債の金利が猛烈に上がっている。これは「利上げ」が迫ってきている証であり、期間の短い債券ほど影響が大きい。筆者はこのゾーンの専門だったので、少し説明を加えてみる。

 「金利」を加重平均で計算すると、今の2年債の水準@0.39%今後2年間で比較的早いペースで政策金利が@0.75~1%に達することを織り込んでいる。5年債@1.17%では5年後に@1.75%に到達 ↓ (除.複利効果)。

画像3

 パウエル議長やFRB理事のコメント等から察するに、筆者にはこれ以上早いペースでの「利上げ」は考え難い。なので、仮に100万円「お金」が余っていれば、半分の50万円は2年債を買う。そして**少し ”勇気” を持って(苦笑)5年債に20万円残り30万円は手元に残す。ずるいようだが、こうすればここから急激に金利が上がっても下がってもあまり後悔せずに済む

 **10年債や30年債はなかなかのバクチ。そこまでFRBの政策動向を読むのは至難の業であり、「利上げ」以外の要素が必要になる。おそらくプロのトレーダーも「イールドカーブ」取引で売買することが多く、単体で勝負する時も部分的に先物等でヘッジをしながらになる。日本では生保が30年債を買ったりするが、あれは長期の保険契約者がいるから途中解約などで売却損が出れば ”違約金” を契約者に請求するだけ。もっともそんなやり方は運用成績が厳しく問われる欧米では通らない。契約者激減間違い無しである。

  ”チキンレース” に例えれば、期間の長さ= ”崖” の高さ高くなれば当然危険も増すが、受け取れる掛け金も増える。水泳の高飛び込みなら5mで足が震える人もいれば15mで平気な人もいる。どこを選ぶかは人それぞれだ。

 相応の "リスク" を感覚的に言えば:

 メジャー通貨FX、メジャー株 ≓ 10年米国債

 エマージング通貨FX、マイナー株 ≓ 30年米国債

 ビットコイン等暗号資産 ≓ 40年~100年国債(実際発行例がある)

 臆病な筆者は "エベレスト級" のビットコインなどにはなかなか手が出ない。しばらくは見物客に留まりそうだ(苦笑)。

画像4


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?