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「インフレ」に追い付き始めた「賃金」。

 12月毎月勤労統計調査(速報):
 現金給与総額(名目賃金) 57万2,008円 前年同月比+4.8% > 予想 +2.5% ー 1997年1月+6.6%以来、25年11カ月ぶりの高い伸び

 またまた 日本の「インフレ」の正体。|損切丸|note の "証拠" が出てきた。今度はモロに「賃金」。しかも*「実質賃金」がプラスに転じた(  標題グラフ)というおまけ付き。

 もっとも日本のCPIは「GOTO」や補助金で「下ゲタ」(通常「ゲタを履く」は上乗せのことを言うが、この場合は ”下乗せ” 。苦笑)を▼1%近く履いているため、本当の「実質」プラスまではもう一息

  いずれにしろ「インフレ」に追い付き始めた「賃金」の事実は重い

 タイミング良くこんな記事 ↓ が出て話題になっている。いわゆる「人手不足倒産」。本格的現象としてはバブル期以来ではないだろうか。

 「賃上げ倒産」急増の前兆 従業員の転退職で倒産、3年ぶり増加(帝国データバンク) - Yahoo!ニュース

 一味違うクリスマス2022。|損切丸|note でも書いたが、街の雰囲気が変わってきたと思ったらやはりこういう事だったか。筆者はタクシー運転手と話をする事が多いが、後から出て来る経済指標とリンクする確率が高い

 人の動きについても顕著な変化が見て取れる。

 昨年まで著しく減少した東京都への転入超過が2022年に入り大幅に増加。これは「コロナ危機」終息に伴い経済正常化の途を歩んでいるからで、**不動産市況を見るとその傾向が読み取れる。

 **筆者の住む地区(世田谷区と目黒区と大田区の境目。どこかばれるかな?)でも相変わらず更地になったかと思ったらドンドン家やビルが建つ。衰えるどころか増える一方。駅前の大型再開発事業も始まっており、明らかに「大金」が動いている「お金持ち」を中心に「インフレ」リスクを意識している証拠だろう。

 ただし都心5区のオフィスビルについては2023年の「大量供給」↓ の影響もあり、まだ家賃には下げ圧力がかかっている。それでも不動産業者や地主に売り急ぐ向きは見られず、 "タイムラグ" に耐えている状況。本格回復にはもう少し時間がかかりそうだ。

 2022年:都心5区募集面積(累計) 95万4,251坪 前年比+1.6%
 内.新築ビル成約面積 45万2,582(+0.7%、7割が空室を残して完成)
 ・12月時点の空室面積 50万8,152坪(+2.2%)
平均賃料(既存、新築共) 2万59円/1坪(3.3㎡)前月比▼22円(▼0.11%) ー 下落は29カ月連続

 2023年:新規供給(都心5区)+約46万坪 ≓ 2022年実績の2.8倍

 前稿.始まるか? 相場の「逆回転」。ー ”2022年相場の逆” のそのまた逆?|損切丸|note で ”日本は丁度アメリカの1年遅れ” と書いたが、商品の「値上げ」に「賃上げ」、エネルギー価格や物流コストの上昇と「インフレ」環境は加速している。

 鍵になるのは冒頭に書いた「実質賃金」の上昇。そこが揃うと人々は「お金」を使い始める。残るはアメリカと違って供給>需要の住宅市場 ↓ だが、そこの底上げが進むと***CPI+5%台もまんざら絵空事ではない

 ***電力会社の「再値上げ」申請にはさすがに政権から "待った"「原材料費の計算が不透明」などと表向き取り繕っているが、本音はこれをすんなり通してしまうと「CPI▼1%作戦」が台無しになるから。もっと言えば「エネルギー補助金」が国民のためではなく、電力会社の ”ミルク補給” =損失補填なのがあからさまになってしまう。一昔前の銀行員同様、あんなに「高給取り」なのだから人員整理など「値上げ」の前に出来ることはたくさんある。甘えるのもいい加減にしろ、と言いたい。

 毎日毎日出て来る「値上げ」のニュースを見ていると、 "リアル" な体感物価は+10%ぐらいではないだろうか。雪国でオール電化の家庭の電気代が月10万円を超えた、という記事もみたが、これはまさに生き死にの問題

 この状況を受けて引き継ぐ次期日銀総裁にはまさに ”茨の道” 。ある意味パウエルFRB議長の "narrow path" (狭い通り道)より厳しい。官僚特有の「出世欲」以外には就任する理由が見当らない。政治家からの風当たりも強いし、年収1億円ぐらいの「お給料」では割に合わない

 来週には候補者が発表されるようだが、さて相場はどうなるか。

 10年物の円OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ、政策金利の推移を予想したデリバティブ)が@0.85%というから、これが10年JGBの理論値に近い。筆者の引いた単純なイールドカーブでも@0.80%近辺。つまり****YCCを廃止すればその辺りが落ち着き所になるはず

 ****今の「国債無制限買取オペ」を見ていると、相手が怖くて最初から大技を出しまくる弱小レスラーを見ているよう。「61国債暴落」(1980年4月)の時代ならいざ知らず、今は決済システムも高度化「ヨーロッパ危機」(2010)の時のようにO/N金利が@5,000%(フランス・フラン)や@20,000%(アイリッシュ・プント)に急騰するなんてことは起こりえない。もう少しマーケットを信用していい。

 そう言う意味では次期日銀総裁にはマーケットを熟知している人が望ましい米国債金利も再度上昇を始め、2023年内の「利下げ」はほぼ消滅ドル円や株式市場にもかなりの変動が見込まれるFRB同様、" a lot of work left to do" (やるべき事がたくさんある)。ぜひ頑張って欲しい。

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