ユーロ

ヨーロッパがおかしいⅡ - ユーロ圏諸国は二極化。イタリア、ギリシャはイギリスに続くのか?

 2019.11.5 ヨーロッパがおかしい ↓ の続編である。当時はヨーロッパ全体としての話だったが、今回はより個別の話に変わってきた。大体危機が訪れると全体から個別の話に移行することが多い。基礎体力のない国、企業、(そして個人も)が淘汰される流れになるからだ。

 昨日の国債金利(7カ国)と5年CDS(Credit Default Swap、倒産を回避するための保険料)がこう ↓ 。CDSプレミアムの上昇など、ヨーロッパで見るとイタリアが狙い撃ちされている格好だ。

実質金利G7(after CDS)@27Feb20

 ここで問題になるのは、財政出動などの有効な手立てがないこと。ユーロ各国にはいわゆる「収斂基準」(Convergence Criteria、欧州連合の機能に関する条約第140条第1項において規定されている4項目からなる要件。別名マーストリヒト基準 (Maastricht criteria))により、財務については「単年度の政府の赤字額(新規国債発行額)が国内総生産 (GDP) の3%を超えてはならない」と厳格に定められている。その内容は極めて「ドイツ的」だ。

 そのしわ寄せが無理な「マイナス金利政策」に来ている。↑ 表をご覧になればお判り頂けるが凄まじいマイナス金利(実質)。実際ドイツでは収益の悪化に耐えきれず▼0.50%の利息を顧客から徴求する地方銀行などが相次いでいるという。これでは財政拡大どころか、逆にマイナス金利に名を借りた預金課税増税であり国民の消費余力はそがれる一方だ。預貯金の多い日本も同じ状況に陥りつつある。

 金利市場からのメッセージを読み解けば、比較的余力のあるドイツ、フランスが大幅な財政出動をしユーロ圏の景気を押し上げるべき、という結論になる。実質金利がゼロに戻るまでやってもいい。しかし*「原則」にこだわるドイツがこの動きを阻害している。彼らから見たら「だらしのない国のためになぜドイツが」という思いが強いのかもしれないが、ユーロを統一して連邦国家を1つの国とみなしているのだから、それは矛盾している

 ドイツが第一次世界大戦後のハイパーインフレの苦い経験から「原則」にこだわるのは判るがもう100年経つ。経済のグローバル化も進み、ハイパーインフレは既に単なる「亡霊」かもしれない。そもそも「ユーロ統一」自体が一種の経済革命なわけで、「亡霊」に囚われすぎるのもどうかと思う。

 このままイタリアやギリシャの苦境が続くと「ユーロ離脱」はより現実味を帯びるだろう。通貨ポンドを持ったままBREXITしたイギリスが羨ましくて仕方がないはず。リラドラクマを復活させて通貨安をテコに経済再建したいという誘惑は相当強い。他にも経済力のあるカタルーニャ州(サッカーとガウディで有名なバルセロナがある州)がスペインからの独立を目指すなど、火種はあちこちにある。

 さて昨日(2/26)のNY市場であるが、オープニングで+300ドル以上上げたと思ったら、結局マイナス圏で引け。2日続けて引け味が悪い。チャート  で見ても2019年分の利益をたったの3日間で失ったような状況で、サポートラインはダブルボトムのようになっている26,000ドル。ただ、アメリカには金利を引下げる余力があるため、ここから本格的な売り相場に転じることはないかもしれない。

DJ1年

$  FF- 2- 5- 10yr  27 Feb 2020(グラフ)

 日経平均も当然続落。昨日(2/26)はNY急落にもめげず頑張ったイメージもあったがどこまで持つか。日本、中国、韓国とも株価を支えるためのPKO的な動きが見られるがどこまで効果があるか疑問。撃つ弾にも限界がある。

 「株買い派」の「損切丸」が突然「株売り」に転じた、と感じている読者の方もおられるかもしれないが、実は考え方そのものは変わってはいない。相変わらずお金は余っているのでいずれ株には向かうだろう。**問題はどの株に向かうか、だ。今回のパンデミックを機に倒産、破産がより現実的になり、クレジットクランチ(信用収縮)が起きてつつある。いくらお金が余っていても、「危ないところ」には向かわないものである

 **どなたかの株関係のコメントで「売られたところを買おうと待ち構えていたが、狙っている銘柄の株はちっとも下がっていない」というのがあって興味深かった。そう、売られているのはみんなが買いたくない「危ない」銘柄ばかり。インデックスばかりを見ていると気付かない点だ。まさに「中身が大事」。見ている人は見ているのである。

 繰り返しになって恐縮だが「お願いだから戻って!」と祈るような精神状態になったら一旦相場を降りた方が良い。多くの人が同じ状況に陥っているため、あとは「早く逃げるが勝ち」***「これは~だから売り」「この銘柄は~だからキープ」など明解かつ冷徹な判断が働かないのであれば、もうその株を保有している意義はない。「仏を作って魂入れず」である。

 ***特に損切りには気持ちがこもってしまうものだが、あっさりいった方が良い。たったの3日で1年分の利益を失ってまう「虚しさ」はよくわかる。だがマーケットには常に売りと買いの二択しかない。冷たいようだが、そこに「悔しい」とか「虚しい」は全く関係ないのである。

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