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日銀の資金繰りと「感染症対応金融支援特別オペレーション」「国債買入」

 まずは最新の「日銀バランスシート」@1/29/2021

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 「国債」が+3.2兆円増えているが、このペースなら3月に▼10兆円程度期日償還が見込めるので想定内。やはり資金繰りのポイントは「貸出」だ。

 「貸出」116.6兆円にも増えた主因は3/16に決定された「感染症対応金融支援特別オペレーション」。その制度設計などについて改めて検証してみよう。最新のオペ結果 ↓ 

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 1/27付で11.8兆円貸し出されており、現在の残高は56.6兆円程。この「貸出」、どこが「特別」かというと:

 ①貸出金利が0%

 ②貸出残高相当の当座預金残高に@+0.10%を特別付利

 つまり銀行にとってはゼロ%で借りた「お金」に@0.10%の利息が付くことになる。現状で*56.6兆円 ×(@0.10%-@0.00%)= +56.6億円の ”年間利益” が見込まれる、かなりの「特別優遇」だ。

 この「貸出残高」≓「政府預金」(日銀負債)にであることに気付く。おそらく貸出期間に合わせて6か月の短期国債(短国)を発行して資金繰りに当てている。財務省が@▼0.08~▼0.10%で短国を発行して日銀に@0.00%で預けているうちは ”利鞘” を稼げるが、「無担保コールO/N金利」(=TONAR)がゼロ近辺で推移する現状ではどこまで続くか心許ない。一体誰がこんなマイナス金利で短国を買っているのだろう? 一種の ”謎” だ。

 これは銀行にとって**当座預金残高を増やす強いインセンティブになる。例えば5年以内の保有国債を市場レートの@▼0.10~▼0.15%で売って当座預金を積めば収益は増える。これが当座預金残高が減らない一因である。

 **国内のコール市場で一種の「金利裁定取引」も引き起こしている。邦銀としては当座預金を特別付利@+0.10%が貰える残高ギリギリまで増やしたいので、コール市場で資金を調達してでも積もうとする。これが取引量の増加を伴い TONAR をゼロ近辺まで押し上げる原動力になっている。見方によっては「日銀が@+0.10%でお金を集めている」とも解釈できるので「量的緩和」は既に終了。もはや「マイナス金利政策」も風前の灯火だ。

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 ↑ これらはJGBにとっては金利上昇要因となる。ここで最新の「国債買入オペ」の枠組みを確認してみよう。

JGBオペ 1.26

 2020.10.30. 日銀が ”こっそり” 「出口戦略」開始? ↓ を覚えている方がいるかもしれないが、当時あるメディアは ”11月の営業日数が減るから” などど ”いい加減な記事” (おそらく忖度記事)を書いていた。「損切丸」としては ”案の定” 、そのまま定着しむしろ買入額は減額されている。

 このオペの最も低い額を取って計算すると月間買入額は3.785兆円、年間で45.42兆円。これは日銀が保有する国債の償還見込額とほぼ見合っており、資金繰りをこれ以上悪化させないための措置と言える。筆者は日銀の「出口戦略」=テーパリングは既に始まっていると見ており、(多少の株価下落ぐらいでは)今後大幅な国債金利の低下は見込めない「マイナス金利深掘り」が唯一の例外だが、その時はかなりの危機に瀕しているだろう。

 さて、これらの事実を踏まえた上で黒田総裁や日銀関係者の発言を読み返してみて欲しい。おそらく筆者と同じ感想を持つはず( ↓ ご参照)。

 本日(2/2)も10年JGBが直近高値の@0.05~0.06%を試している ↓ 

JGB10yr(1年チャート)

 しかしはっきり言ってこの金利水準は何とも "中途半端" 。仮に邦銀が1兆円@0.05%で買っても年間リターンはたったの+5億円。これでは***+100億円単位で組まれた ”予算” には何の足しにもならない

 ***1兆円買うとして、20年@0.45% → +45億円、30年@0.65%+65億円の年間収益見込でやっと投資検討の俎上に載る。リスクも2倍,3倍になるのでそれ程単純ではないが、邦銀にとって「予算」は必達事項サラリーマン人生を賭けて臨んでくる。みんな偉くなりたいのだ(笑)。

 米国債の金利水準も同様に "中途半端" なので金利上昇傾向は続くだろう。10年国債なら米国は@1.50%JGBなら@0.30%までは資産市場に大きな影響が出るレベルではない。その間、株価は金利を ”踏み台” にしながら調整と反発を繰り返すだろう。

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 今回の「ショートスクイーズ」騒動が象徴的だが、2021年の「投資」は2017~2020年のように簡単にはいかないだろう。おそらく個人も金融機関も壮絶な喰い合いが予想される。イギリス流で「揉め事の現場には赴かない」という方法もあるが、マーケットに対して去年までのように漫然と臨むと喰われる「金利上昇」は1つのサインなので、その辺りの「戦略」は各々はっきりさせておいた方が良い。

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