見出し画像

「損切丸」的「バブル」研究 ー  資金繰りと債務からの考察。

 前稿で過去の「バブル」を引合いに出したので、ここで改めて「バブル」ついて書いてみる。標題添付のグラフは代表的な「バブル」の例で、いずれも株価が▼30~40%暴落した後、それぞれ回復の道を辿っているが、短期間で回復したこともあれば長期間要したこともある。

 今回のコロナショックでもまず引き合いに出されのが1929年「世界恐慌」時の米株暴落だ。NYダウで見ると一度▼47.9%急落後+48%戻したが、その後3年かけて底値をつけている。その価値は実に▼80%減少し、元の株価に戻すのに10年以上を要した。

NYダウ 1924-42 png

 次に「バブル」チャートを3つ。皆さんどれがどれか判るだろうか?

日経平均(ヒストリカル)

ナスダック(ヒストリカル)

上海総合指数(ヒストリカル)

 ①日経平均、②ITバブル(ナスダック)、③上海総合指数。筆者も現役時代、そのチャートのあまりの相似形に驚いた。専門家が見れば典型的「エリオット波動」と言うことになるだろうか。

 そして ↓ が直近5年間のNYダウのチャート。高値(29,398.08)を付けたのは実は2020年の2月だ。「バブルチャート」を形成するのかどうか

画像6

 例示した中で世界恐慌に最も近い展開になったのは①日経平均だろう。どちらも金融システムに壊滅的打撃を受けて回復に長い時間を要し、日本では「失われた20年」となり現在に至っている。

 アメリカはその後金融自由化などを経て、何度もあったクラッシュをも乗り越え、NYダウ暴落前の高値@381ドル→@26,000ドル台(+約68倍!)に戻している。凄まじい回復力だ。

 残念ながら日本は金融・規制改革が遅々として進まず、現在の「停滞」に喘いだまま。ただポテンシャルとして、NYダウ並みは無理にしても計算上は日経平均が@10万円を軽く超えてもおかしくはない香港が引っ込みそうな今はアジアの金融ハブとして手を挙げる絶好のチャンスなのだが...。

 もう1つ「金融システム崩壊」で回復に時間を要したのは2008年の「リーマンショック」銀行が壊れてしまった時のダメージはおそらく皆さんが思っているよりも深刻だ。現場で「資本規制」「流動性規制」の強化に直接携わってきた経験で言うと、その負荷は半端ではなかった。何しろ銀行の資金繰りポジションを丸ごと作り替える作業が必要だったので、筆者のいた銀行でも5年程の年月と千億円単位のコストがかかった。

 そして「バブル」を推し量る上で重要な要素が「債務」である。特にその金額。大和総研が面白いグラフを作っていたので添付してみよう。

バブル(ヒストリカル)

 これは民間の非金融部門の債務残高GDPと比べたものである。GDPはいわゆる国の「売上高」に当たるわけで、*債務残高=GDP比@200%を1つの目安として捉えている。確かに一般企業でも年間売上高の倍も「借金」する会社は「危ない会社」だ。日本のバブル時も銀行は競争して貸出を増やし、これも現場にいた立場で言えば「異常」だったと断言できる。

 *米国サブプライム=「リーマンショック」の債務比率が低めに出ているのは金融の債務が入っていないから。実際にはレポ取引など「レバレッジ」が膨張してバブルが破裂した。それを入れた比率はもっと高かったはず。

 そして今回の「コロナ危機」。株価暴落のスタート時は「世界恐慌型」かといわれたが、今のところ金融システムが崩壊する兆しは見えない。FRBあれだけ無茶な「バラマキ」を行ったのは、大手の銀行を潰すとどれだけ大変か、を熟知しているが故。今のところ策は奏功し株価は強烈に戻した。

 だが今回は過去に例のない未曾有の「債務問題」を抱えている。そう、この「損切丸」でも再三再四指摘してきた「国家の過剰債務問題」である。本来銀行が負うべき貸出・資金繰り業務を国や中央銀行が代行しているといっていい。どおりで「金融システム」に懸念が生じないはずである。

 ↑ のグラフでも「中国」の民間債務残高の大きさを示しているが、今回のポイントは「銀行」ではなく「国」だ。ベネズエラやアルゼンチンのような小国なら「デフォルト」もあるが、アメリカ、日本、中国、EUのような大国に銀行のような破綻は起きえない。強力な「通貨発行権」と「徴税権」を有しているからだ。

 そうなると導かれる結論は2つ。

 1.①増税、②通貨切下げ、③インフレいずれかの方法で膨大な国家の借金を減免する、即ち国民から巻き上げること

 2.戦争で勝って他国から巻き上げること

 1.①増税以外、株価は暴落どころか急騰する可能性さえある。それが今の株のラリーの背景としてあり、投資、トレードを手掛けるには、そのきっかけ、タイミングと時間軸がポイントになる

 「リーマンショック」~「コロナ危機」間に行われている今回の金融・財政政策は壮大な「社会実験」である。10年後か20年後か、おそらく「理科」(疫学)「社会」(歴史、社会経済学)の教科書に間違いなく載るだろう。

 「あの時は不景気なのに株が上がって変だな、とは思ったんだが…。」

 生き証人として孫に語る時がくるのかも。おっと、その前に今できることをしなくちゃね。逃げそびれたら単なるグチになってしまう(笑)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?