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”ごみ” と "人口" と経済。

 世界中でSDG(Sustainable Development Goals)とかESG(Environment Social Governance)とか喧しくなっており、投資の世界でも基準として用いられるようになってきた。 "脱炭素" と並びマイクロプラスチック等 "ごみ" 問題も焦点となってきているので、今回少し調べてみた。

 世界のごみ排出量を調べると、1,2位はやはり人口の多い中国インド。世界の人口約77億人のうち、中国14億人(18%)インド13.5億人(17.5%)で世界の35%を占めるのだから致し方のないところだ。

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 実際長期で俯瞰すると*人口増加と "ごみ" 排出量には密接な相関関係がある。「産業革命」(1760~1840)以降、ごみの増加率が加速している

人口とゴミ

 2100年には世界人口は100億人を超える ↓ 国連予測)ようだから、 "ごみ" を減らすのはかなり困難なミッションと言えよう。人口増のほとんどがアフリカ諸国など発展途上の国々であることを考えれば、実際にはアメリカ、中国を何とかしなければ "脱炭素" 等の目標達成は無理

世界人口推移

 視点を変えて人口比率を加味するとアメリカがダントツの1位となる。人口3.3億人で人口が4倍近いインドと同量のごみを排出しており、一人当たり年間773kgは世界平均の3倍と突出している。リサイクル事業の遅れも指摘されているが、**やはり ”経済” の影響が大きい。

 GDP 21.4兆ドル@2019のアメリカ経済は、追い上げられているとはいえ未だ中国(14.7兆ドル)の1.5倍の規模であり、 "ごみ" や二酸化炭素の排出量と深く関わっている。ESGに熱心と思われているドイツの数値が意外に高いのも ”経済” (GDP 3.9兆ドル)が主因だ。

 ** "ごみ"  ”経済” の連関で思い出すのは1994年2月のグリーンスパンFRB議長による利上げだ。当時非農業部門雇用者数がマイナスにも関わらず ”突然” 利上げを開始したのだが、後になって分ったのが議長が①NYのごみの量②トラック運転手の労働時間をウォッチしていたこと。ごみの量の増加は経済回復の先行指標であり、その後米経済は急速に回復。利上げが正当化され "グリーンスパン神話" が出来上がった。

 さてそれでは日本(GDP 5.1兆ドル)はどうだろう。"FACTFULLNESS" 的観点から見てもかなり頑張っているのではないか2000年頃にピークを付けた後、総排出量も1人当りも数値は順調に改善している。

日本ごみ排出量

 分別ごみとか食糧容器減らしとか随分頑張っているのは事実だし、最近ではレジ袋の有料化にも踏み切った。この辺りはデータに基づいてもう少し強く対外発信すべきだろう。スウェーデンの少女に言われっぱなしというのも日本人としては何だか納得がいかない。

 そして大きな皮肉は、2000年以降日本が20年に及ぶ「デフレ」に突入し、同時に「人口減少社会」に陥ったことだ。残念ながらこれが "ごみ" が減った最大の要因。今回の「コロナ危機」でも一時随分 "二酸化炭素" が減ったようだが、ESG達成にはある程度 ”経済” が犠牲になる。各国、特に欧米、中国に覚悟があるのか? 甚だ怪しい。

 これまでもことある毎に「正論」を突きつけられ、多大な ”つけ” を払わされてきた日本今回の "脱炭素" "ごみ" 問題にも「お金」の臭いがプンプンするSDGにもESGにも「お金」がかかるのは明白であり、要は「そのコストを誰が払うのか」。自動車EV化などを筆頭に「日本を狙い撃ち」の算段も見え隠れする。

 トヨタなど国際的な舞台で戦ってきた企業群は当然このような ”意図" に気付いており、十分警戒して戦いに臨んでいる。だが日本経済全体で見るとこの20年は ”やられっぱなし” 日経平均のNYダウに対するパフォーマンスの低さがそれを如実に表している。

 今回のコロナ対応においても、本来多数の治療薬候補を有する日本が上手く立ち回れるはずが、いつの間にか ”おいしいところ” を欧米や中国に持って行かれてしまっている本来なら大きなビジネスチャンス(欧米の製薬会社はそう思っている)のはずが、厚生労働省の許認可行政もがんじがらめで動きが取れず、ワクチンや治療薬で後塵を拝しているのが事実。

 思うに日本人は生真面目すぎる「性善説」は良い部分もあるが、何でも100%を求めて「失敗」の責任追及ばかりするのは日本人の悪い癖。裏を返せば「他人依存」が強いということになる。薬品の許認可行政も過去の医療訴訟で厚生労働省をたたき過ぎた結果萎縮してしまっている。アメリカで薬剤師がワクチン注射をしている話を聞くとますますそう思う。

 こういう特性を海外に上手く利用されており、日本人は "内輪揉め" に終始するよりも、もう少し ”外” に目を向けるべきだ。メディアも国内のニュースが多過ぎて "日本の正しい国際的位置付け" を捉えにくい。

 「清貧思想」も厄介だ。***今回のような危機になると「お金」の話をするのは不謹慎、という風潮が強くなり問題の本質を見えにくくしている。詰まるところ最後は「お金」の問題。コロナ治療薬で日本の製薬会社がこれぐらい儲かるとか、もっと「お金」について大っぴらに議論すれば良い日本の製薬会社が儲かればワクチンや治療薬の国内開発に貢献するのだから。オリンピック中止の話も賠償金がいくらかかってそれを誰が負担するのか、等等「お金」の "FACT" をベース具体的に検討すべきだ。

 ***「東日本大震災」の時、筆者のいた銀行では土、日に緊急会議を開いた。災害対策の話をするのかと思ったら、話の9割以上は日経平均が売られるのか、とか円高になるのか、とかに集中。つまり「儲け」=「お金」の話ばかり。これはまた逆の極で純・日本人(笑)の筆者はほとほと呆れたが、この1割でも日本人に「お金」への執着があれば、とも思った。

 「コロナ危機」の "功績" は「昭和モデル」の機能不全を証明したことだ。50代の筆者自身も頭が固くなってきているのを実感するが、70~80代の「昭和世代」の考え方を変えるのは容易ではない。未だ「昭和」が国のトップを牛耳る現状では危機対応が上手くいかないのは必然かもしれない。

 大事なのは一人一人が「他人依存」から脱却することだ。文句を言えば言うほど政治家は喜ぶはず。何せ ”出番” が増えるのだから(最近はネットでもこういう言説が目立ってきているのは喜ばしい)。

 筆者は日本のポテンシャルを信じて疑わない「コロナ危機」をきっかけに「昭和モデル」を脱却すればこの国には大きな実りが訪れると確信している。その時は日経平均のパフォーマンスがNYダウを大きく上回るだろう。

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