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続・「インフレ」は死んではいない ー 「国債市場の逆襲」が始まる

 「インフレ」は死んではいない ー 「金余り」相場再び|損切丸 (note.com) の続編

 NY市場引けにかけて一旦買い戻しが入ったものの、特段の材料もない中10年米国債は一時@3.79%、30年は@4.13%まで売られた

 「利下げ」にも関わらず5年超のいわゆる長期金利はむしろ上昇傾向を示しており、筆者には「国債市場の逆襲」が始まったように見える。これはヨーロッパも同様で、ドイツ、フランスなどのPMIが軒並み節目である50を割り込み「利下げ」期待が膨らんで2年以下の短期金利は低下したが長期金利はほとんど下がらなかった。いわゆる「スティープニング」(長期>短期金利の傾斜化)という奴である

 ドイツを始め欧州国債も米国債同様2年<10年金利に変化してきており「逆イールド」が解消強烈な「順イールド」のJGB(日本国債)と考え合わせれば「金利の正常化」が進んでいる

 これはマーケットにどのようなインパクトをもたらすのか?

 「お金持ち」の代名詞の1つ、欧州の年金ファンドを例に考えてみよう

 彼らは "リアルマネー" を中長期で「投資」する。金額が違うだけで我々の個人投資に近いが、米国債ドイツ国債も大量に買っており今回のような「イールドカーブ」プレイの主役である

 「お金持ち」の最大の関心事は「お金」の価値が減る「インフレ」だ

 例えば米国債に関しては本邦金融機関と違いきちんと為替リスクを取って「投資」している。近年は「ドル高」が続いたので金利上昇=キャピタルロス(価格下落による損失)を抱えながらも保有していた分がかなりある

 ところがFRBによる「利下げ」転換から「ドル安」相場に移行。今度は金利低下=キャピタルゲイン(価格上昇による利益)との兼ね合いを計りながら「売り」を迫られる事態に直面している。その辺りの「お金」の動きはFXでユーロドル、ポンドドル当りを注視すれば推定できるが、中でも名目金利が高くてリスクの大きい長期債が焦点となる

 「まず危ないモノから売れ」ー 欧州も米国も長期債の売りがまず始まるので、それが「スティープニング」の原動力となる。特に欧州のように景気減速を伴う「スタグフレーション」的な相場になると「財」を急速に蝕んで「お金」が減るため「資金繰り」に難が出て来る。だから経済基盤の弱いイタリア、スペイン、ギリシャ等の国債イールドは激しい「スティープニング」に見舞われる。端的に言えば「危ない」ということ

 極端な例はアルゼンチン、トルコ、レバノン等だが、4,000兆円もの「借金」を抱えるアメリカも盤石ではない。10年後、30年後となればもう誰にもわからないし、増して「ドル安」に向かうとなれば「お金持ち」は一斉に逃げ出す。さすがに米国債を全て外す訳にはいかないが、長期から短期に移すなど様々な ”分散” が図られる

 「イールドカーブ」の変化はそういう「お金」の移動=「キャッシュフロー」を示唆する。これがFXを通じて「お金」がクロスボーダーで動けば当然株式市場にも影響してくる。だからみんな「金利」、特に「イールドカーブ」の変化に注目する

 昨日(9/23)1つ興味深かったのが「ドル円」「円キャリートレード」の名残かもしれないが、米国債が売られる局面で一時@144円台に上昇(円安)。まだ「米国債売り→ドル円買い」のAIプログラムが作動しているようだが、あえなく「ドル安」の本流に押し戻され@143円台へ

 もっとも植田総裁が「時間的余裕がある」と発言したこと、あるいは与党総裁選の1有力候補が「今利上げするのは ”アホ” 」なんて発言をすればトレーダーが「円買い」に慎重になるの致し方ない

 ただ*「キャリートレード」に関してはもう「円安」一辺倒ではなくなったことから「ドル円」の「ガチホ」「押し目買い」戦略は有効では無くなった。今後は単なる短期売買に変質していくだろう

 *「キャリートレード」という意味ではむしろJGBの「順イールド」に着目した長短金利差狙いが増えそうだ。「ドル円」のように+5%の "夢の金利差" はもう無理だが、+0.6%(10年)、+1.8%(30年)は取りに行ける。ただ大分金額を張らなければいけなくはなるが…

 FRBの▼0.50%「利下げ」をきっかけに米株、ビットコイン、WTI(NY原油先物)等「リフレ」トレードで「買い」に移行したマーケットだが、早くも「国債市場の逆襲」に脅える展開となっている。それだけ「インフレ」は怖ろしい過去の暴落相場の大半は「金利急騰」が引金になっているだけに米国債やJGBの動向には敏感にならざるを得ない

 筆者が感じているのは 「お金」の値段 ≓「金利」が安過ぎる! ー 日銀の「ターミナルレート」は?|損切丸 (note.com) 事。リスクに見合う金利になるまで "リアルマネー" は動くまい今後は株式市場もFXも暗号資産もコモディティ(商品市場)も市場関係者の大半は「金利」、特に「イールドカーブ」の動きを注視する事になる

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