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慌てる黒田日銀総裁、追い込まれるパウエルFRB議長。

 「イールドカーブ全体を低位で安定させることが大事になっており、何かゼロ%程度を上げていこうということではない」

 「上場投資信託(ETF)の買い入れについては、現在の金融市場調節方針においても十分にメリハリのある柔軟な買い入れができる」

 また、である(溜息)。2/26の衆院財務金融委員会での桜井周氏(立憲民主)への答弁だが、日経平均が▼1,200円も暴落してさすがに慌てたのだろう。円金利関係者にとっては何度目の ”デジャブ” だろうか。少しでも金融政策を ”引締め” ようとするといつもこれだあれだけ「景気回復」と言い張っていたのに...。少しでも日経平均ドル円が落ちるとこの有様。

 そもそもETF買入YCC変更についてメディアを使ってアドバルーン=観測気球を上げてマーケットに浸透させようとしてきたのは日銀自身のはず。( ↓ 記事ご参照)

 少しばかり個人的感情を込めて言わせて頂くと、いささか無責任である。いくら日銀法第4条「...政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」とあっても、これではいつまで経っても金融政策について独立性と信頼性は醸成されないこういう事の繰り返しが結果としてデフレを長引かせた事に対する反省はないのだろうか(😠)。

 いずれにしろ*今回は今までと違って "物理的に" 打つ手はない。既に1,000兆円に及ぶ預貯金のリソースを使い果たしており、「量的緩和」は追加できない。残るは「マイナス金利深掘り」だが、これも「コロナ対応特別貸出残高」等に@+0.10%付利している政策とは齟齬があり、どこまで金融緩和効果があるか疑問だ。銀行経営に対するマイナス面も無視できまい。これ以上 "力業" で超低金利を維持することは不可能で、日銀はかなり追い込まれたといって良い。早晩市場のしっぺ返しを喰らうだろう。

 これだけあれば足りるだろう、と10億円持ってカジノに乗り込んだらいつの間にかスッカラカン ”賭場” から「お金」を借りてギャンブルを続けたがドンドン借金が膨らむ ”賭場” も足元を見て金利をつり上げてくる。こんな状況。カジノマーケットもこの辺りの ”仕組み” はほぼ同じだ。

 追い込まれている人がもう1人。パウエルFRB議長だ。こちらのロジックは日銀と真逆 ” Behind the Curve" (対策遅れ)を市場に責められている

 「インフレ率が2%を超えても即座には利上げしない」

 「あと2年(後に3年に変更)金融緩和策が必要」

 等等、ご本人は良かれと思って発言しているようだが、これが逆に ”火に油” を注ぐ結果に。米国では「マーケットとの意思疎通」が最も重要とされるが、議長の発言はその要望に応えていない物価連動債(TIPS)が発達している同市場では、BEI(Break Even Inflation Rate、予想インフレ率 )など2020年前半から「インフレリスク上昇」のサインを送り続けているが、FRBはほとんど無視している、と解釈された。その結果が今の急激な金利上昇

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 2年、5年債まで金利が上昇しているのは、FRBに対して「早く利上げせよ」というマーケットの警鐘と考えていい。**これを無視し続ければますます中長期を中心に米国債の金利は上昇するだろう。

 **ひょっとするとパウエル議長は「日本」からの400兆円に及ぶ「外債投資」が米国債の低金利維持に繋がっていたことにあまり重きを置いていないのかもしれない。とすると、FRB単独で低金利を維持できると ”勘違い” している恐れもある。いくら「主要通貨ドル」でも(自国単独でファイナンスしていた)日本と違って国外から入ってくる「お金」で米国債相場は維持されている今はその "当たり前" のマーケットに戻っている過程だ。

 つまり「マーケットの声」を聞けば、FRBは早めに利上げに動いた方がよい、ということになる。少なくともそういうメッセージを発していけばTIPSやBEIに変化をもたらし、結果的に金利上昇を抑制する。だがパウエル議長の言動はこれとは真逆。日本と違いインフレに対する "根源的恐怖” を抱える米国市場だけに今後が不安だ。

 この流れに抗するように、今夕の欧州国債相場 ”アンカー” ドイツ国債は金利低下に転じている e.g 10年@▼0.27%(前日比▼0.04%)。対ドルのユーロ高を何が何でも阻止するためにECBは「マイナス金利深掘り」も辞さない構え。この辺は日銀と違ってその ”決意” たるやはっきりしたもの。ただ ”追い込まれている” という意味ではECBも日銀、FRB同様かもしれない。

 おまけに-いくら「金利」「金融政策」の枠外とはいえ、さすがにビットコインも下げてきた e.g. @$45,526.-(前日比▼8.4%)。あくまでNYダウやナスダックなどの主要の投資市場が活況であればこその ”上乗せ投資” ということだろう。意外な脆さも見せており「法定通貨」に取って代わるのは時期尚早「マイニングに電力がかかり過ぎる」との指摘もある。

 やはり「丑年のつまずき」となるのか。気の抜けない相場が続く。

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