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殺陣を習ってみた@松本

前々から気になっていた、長野県松本市の剣遊さんへ行った。45分コースまたは2時間コースで殺陣の基本を教えてもらい、順調に覚えられたらちょっとした殺陣の流れを再現してスマホ動画も撮れる。

以前のショベルカーのときのように、これも記録しておかないと忘れてしまいそう。ということで備忘録として残します。

装束を選んで、刀を差す

お客さんのメインが海外からの観光客とのことで、装束のサイズはLLや3Lのような大きめが多いらしい。私の場合は「細身ですね」と言われてMサイズを選択。細身! 細身なんて言われたの久しぶり!

着てきた服の上から浴衣を羽織るような感じで着物を羽織って、細い腰紐で固定。ああ、おはしょりとか要らないんですね。その上から袴を穿いて、帯と紐で固定する。袴の背中側には腰板が入っているので、このおかげでピッと姿勢が保てるらしい。確かに猫背のほうが少しつらいかも。

改めて「そうか!」と思ったのが、刀を腰に差すとき。

帯に挟み込んで支える。お芝居用の竹光でもそれなりに長さと重さがある。真剣2本を差したら重みでよろけそう。そうか、紐1本で差してたのか。それを見越して帯と紐はかなりきつくきつく締める。ご飯食べた直後でなくてよかった。

刀が横一文字の水平になるような差し方が侍のスタイル。鞘を体に沿うように下に落として差すのは浪人のスタイルらしい。侍スタイルがやっぱりステイタスとのこと。鏡を見ると、格好だけは決まった。

刀を抜く(抜刀)

これが難しい。腕を一番遠くまで伸ばしたときの長さと、刀の鍔から切っ先までの長さを比べて後者のほうが長い場合、ただ抜いただけでは刀が鞘から出ない。超格好悪い。

そこでコツがある。右手で刀を引き抜くのと同時に腰を反時計回りに少し回すして、左手で鞘の入口を体の外側へそらすと、あら不思議、抜くだけの長さが生まれて刀がシュッと出てくる。

これを瞬時に、同時に行う。うまくできると動きにキレが出て、格好いい感じになる。

刀をしまう(納刀)

よく考えてみると、時代劇のお侍さんは刀をしまうときに手元を見ない。手の感覚で鞘の入口を見つけて、刃先を導いて納めている。

今回は刀を真横一文字に引いて納める方法を教わった。

まず左手の中指と親指で鞘の入口を掴んでおく。人差し指は隙間がないようにギュッと折り曲げて一文字を作る。鞘の入口の手指の蓋がついているような感じ。

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刀をしまうときは、峰側(切れない側)の鍔元を指に合わせて、バイオリンの弓を引くように真横に引く。刀の刃ではない背中側だから引いても手は切れない。で、切っ先が通過しそうなときにこの蓋部分を少し開けて、先を鞘の入口に落とす。

刀で一番切れるようになっているのが切っ先3cmくらいなので、真剣で失敗すると指の股を切るらしい。ひー。でも竹光なので大胆に練習あるのみ。

やりがちな失敗は、先を入れようとして刀を縦に持ち上げてしまうこと。鏡を見ると一目瞭然。おへそを探すみたいで格好悪い。これだとせっかくの左指の一文字ガイドから刀身が外れて刃先が不安定になり、手を切りやすい。刀が常に水平に、真横に動くようにすると、意外とすんなり刃先が鞘を見つけてくれる。

この抜刀と納刀だけで、1時間を消化(笑)

刀を斬り下ろす

刀での戦いは、剣道とは似て非なるもの。剣道は打って抜くような動きをするけれど、刀は振り下ろして「斬る」。なるべく少ない動きと力で相手を絶命させるのが目的。人を殺める方法について真剣に考えたことがなかった。

実はあまり刃の真ん中を使うことはないらしい。一番切れ味がいい切っ先で相手を擦ることができるだけでもダメージは与えられる。相手が振りかぶってきたときは、切っ先で相手の二の腕の裏腱を、横一文字でピッと斬ってしまうだけでよい。腱が切れると相手は刀が持てない。

斬って倒した後も油断してはダメ。生きているかもしれないし、油断している間に突かれるかもしれない。「残心」といって現場に視線と警戒を残しながらしばらく様子を見て、大丈夫だったら刀を納める。

振るときも、腕の力で振り回さなくても刀の重さと方向に任せて下ろす感覚で大丈夫。力を入れすぎると腕や手首を痛める。

血振りは、演出用

『長七郎江戸日記』なんかだと里見浩太朗さんが着流しで二刀流で、ピッと最後に血を払って鞘に刀を納める。血を払う動作を血振りといい、いろんなスタイルがあるらしい。ただ、本当なら懐紙でちゃんと拭かないと錆びてしまって使えない。血振りはお芝居向けの演出要素が多い。真剣だと重くてあんなに軽々と振れない。

動きを覚えてみよう

晴れて抜刀&納刀を卒業し、殺陣っぽい動きを教えてもらえることになった。先生と向かい合わせに立ち、相手が刀に手をかけたら「敵意あり!」と判断してこちらも抜いてよし。

まず相手が振りかぶってくるところを横一文字に斬って腱を切断。怯んだところに左足を踏み込んで一気にトドメを刺す斬り下ろし。

後ろにいた仲間が「こやつ!」と刀を抜くので、殺気を感じたら(大事らしい)振り返って峰側で相手の刀を受け流す。相手は滑り落ちるように倒れるので、今度は足を引きながらしっかり斬る。

二人倒れている様子を見ながら「動かない? 動かないよね? 死んだよね?」と確認し、動かなかったら姿勢を上げて血振り動作。視線は現場に残したまま、鞘の入口を見つけて納刀。終了。

頭では分かる、でも体が動かない。先生曰く1000回くらいやると自然になってくると。ノックだな。

納得したのは、腕先だけで刀を振り回すのではなくて、体が流れを覚えて刀が後からついてくる感じが「格好いい」の元になっていること。それはやっぱり場数を踏まないと難しい。

動画を3回撮ってみたものの、頭で考えながら動いているのが見え見えなのでまだ修業が足りない。

まとめ

ドラマで見ている殺陣と、自分が刀を持った殺陣は、全然違う!

体全体を動かす運動かと思いきや、指先や手首まで意識しないと実践できない、繊細な動作の積み重ねだった。右手と左手がちゃんと連動してキレイに刀が抜けたときは気持ちいいし、無意識に左手が鞘の入口を探り当てて刀を納められると「仲良くなったな」と思える。

大河ドラマ『八重の桜』では綾瀬はるかさんが毎日鉄砲に触って一緒に生活していたらしいけれど、その重要性はよく分かる。自分の手の延長線でそのツールが使いこなせなければ意味がない。命を落としてしまう。

あと、今回は竹光対竹光でも、本来は文字通り「真剣勝負」。何かを取り違えたり誤解を招いたりして、目の前の人が刀を抜くような状況にだけはなりたくないと思った。抜かれたらどちらか死ぬまで終わらんのだからなー。

幕末で辻斬りが横行したり、いろんなところで「天誅」が起こっていたりしたのは本当に恐怖だと思う。

殺陣の細かい動きが分かったので、録画してあるドラマもちょっと確かめてみよう。

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