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やっと、やっと、美術史の基礎が分かった

長年の靄がやっと晴れたような気がする。知識として「○○主義」が何かとか、いつどこの誰が描いた作品なのかとか、どうしてこんな流れが生まれたのかとか。美術史の情報はいつも「何か大切そうなことを言ってる」くらいの認識しかなかったけれど、やっと、やっとその基礎が分かってきた。

分かってきたというのは不正確かもしれない。やっと知った、やっと覚えたというレベルに近い。それでも掴みどころがなかった領域にちょっと掴めるものができて、俄然興味が湧いてきた。

ただしこの順番だからたどり着けたんだろうな、と思う。

頭を耕してくれた『コテンラジオ』

一番手っ取り早く「情報」として取り入れるのは、概要を説明した書籍なり資料なりを読んで覚えてしまうことだろう。でも私はこれがとても苦手だ。理性で「読んで覚えたほうがいい」と思っても目が誌面をつるんつるん滑って全然頭に入ってこない。

でも、最近できた突破口がある。ポッドキャストの『コテンラジオ』

株式会社COTEN(コテン)の広報活動として2018年11月に始まった歴史系Podcastです。 株式会社COTEN 代表の深井龍之介、メンバーの楊睿之と株式会社BOOK代表の樋口聖典の3名が日本と世界の歴史を面白く、かつディープに、そしてフラットな視点でお伝えします。

エピソードは200以上、「第一次世界大戦」や「カエサル」「教育」などテーマごとに10話ずつくらいのボリュームで解説がなされている。

昔からカタカナ名が苦手で敬遠していた世界史が、ちゃんと意味と理由があるつながりとして捉えられるようになったのは『コテンラジオ』によるところが大きい。「オスマン帝国」や「アメリカ開拓史」などは何度か巻き戻したり聴き直したりして完走した。

ここで何となく西欧における宗教と社会の関係が見えてきた。こういう縛りの中で暮らしていたし、これだけ文化に影響したんだなと。

人間くささを教えてくれた『山田五郎 オトナの教養講座』

美術への扉を大きく開いてくれたのが、評論家の山田五郎さんがやっているYouTubeチャンネル『山田五郎 オトナの教養講座』。毎回テーマとなる名画を取り上げて、作者や時代背景、技法や前後の影響などを解説してくれる。

評論家・編集者の山田五郎が、YouTubeをはじめました!
山田五郎の得意分野、美術、ファッション、時計、街、グルメなどについて、オトナの生活がちょっと潤う教養をお届けします。

ここで知ったのは、偉人として捉えがちな巨匠たちも実は生々しい感情を持った人間であって、いろんなしがらみやこだわりから「その作品」が生まれているという事実。

フェチのように何度も同じモチーフを描く人もいれば、破滅的な人生を送りつつ魅力的な絵画を描く人もいれば、時代に合わせて画風がどんどん変わる人もいる。美術の世界が意外と柔らかく、うねりとして今に続いているのだと分かった。

「画壇」や「サロン」や「権威」と結びつけると美術やアートは途端に遠くて高尚なものに見えてしまう。でも作っている人たちはあんまりそうではない。親近感が湧く。

エピソードを歴史として整理した『知識ゼロからの西洋絵画』シリーズ

美術の世界もなんだか面白そう、と思って手を伸ばしたのが山田五郎さんの書籍『知識ゼロからの西洋絵画』シリーズだった。『西洋絵画』が先に出て『西洋絵画史』は後に刊行されたらしい。個人的には『西洋絵画史』を先に読んで正解だった。

目と頭を滑りまくっていた「○○主義」という名前と意味と流れが、これでやっと掴めた。こういうことかー。

でも私の場合は『コテンラジオ』から『オトナの教養講座』を経由しないと絶対に「こういうことかー」には行き着かなかった。この順番だから良かった。

取り上げられている作品やエピソードは、YouTubeで見覚えがある。面白いおっちゃんたちの話として生々しく残っているので覚えやすい。動画だと時系列がバラバラだった情報が、この本では理由のある歴史として順番に並べられている。読み終えた後に心底感嘆した。

ああ、こういうことかー。

うわあ、なんというすっきり感。爽快さ。モヤモヤが晴れた…!

『西洋絵画史』の後にこちらの『西洋絵画』を読んだ。おおお、なるほど。本では点として載っている一つ一つの情報が、ちゃんと時系列の上に整理されてマッピングされていく感覚。おおお。美術関連の情報でこんな感覚を味わえるとは思わなかった。

やっとたどり着いた『西洋・日本美術史の基本』

ここでやっと、やっと、「基本」の本を読めるようになった。

美術検定のテキストにもなっている基礎中の基礎。情報をギュギュッと凝縮して通史が網羅されている内容なので、ある程度の流れが分からないと全然頭に入らない。学生時代の振り出しに戻ってしまう。

でも、もう大丈夫。前よりも流れと意味の理解が進んだおかげで、この本に書いてある意味が分かった。入門以前レベルなのだけど私にとっては超画期的だ。昔は読んでも意味が分からなかった。

というわけで、スタートラインに立てた感

美術検定にチャレンジしているさとなおさんの記事も同時期に読んだ。

「別に勉強なんかしなくても、感性でアートを楽しめりゃいいじゃん」って言う人の気持ちもわかるんだけど、でも、知識があるとアートの見方が変わるので、ある程度集中して知識をつけるのは重要だな、って、勉強し始めてみて思う。

いままで見えなかったことが、どんどん見えるようになってきた(その途上がまた楽しい)。

あああ、分かる。これこれ。やっとこれ。

何かをクリアしたから急に何かができるわけではないのだけれど、世界は確実に広がった感覚があってそれが楽しい。今からでもそんな感覚になれること自体が嬉しい。

一生かかっても全然追いつけない領域ではある。でもそれだけ伸びシロと開拓シロがあるのだと思って、もうちょい知りたい欲が湧いてきた。面白い。

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