岡本かのん

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最近の記事

博学連携による生涯学習の推進

(約3600文字・購読時間4分30秒)  1965年にパリで開催されたユネスコの成人教育推進国際会議で、ラングランにより提唱された生涯教育の概念は、現在では学習者を主体に据えた生涯学習として普及している。生涯学習とは、自己の充実・啓発や生活の向上のために生涯を通じて主体的に学習することであり、家庭教育、学校教育は、社会教育を含む学びの総体である。  日本では、1980年代以降それまでの展示を中心とする教育活動に加え、ワークショップや鑑賞プログラムなど、より積極的な教育普及活

    • これからの博物館に期待される役割

      (約1800文字・購読時間2分20秒)  1965年にパリで開催されたユネスコの成人教育推進国際会議で、ラングランにより提唱された生涯教育の概念は、現在では学習者を主体に据えた生涯学習として普及している。生涯学習とは、自己の充実・啓発や生活の向上のために生涯を通じて主体的に学習することである。日本では、教育基本法が改正され、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならないと規定され

      • 博物館と知的財産保護

        (約1500文字・購読時間1分50秒)  人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物などには、 財産的な価値を持つものがある。 そうしたものを総称して知的財産と呼ばれる。 知的財産の中には特許権や実用新案権など、 法律で規定された権利や法律上保護される利益に係る権利として保護されるものがあり、それらの権利は知的財産権と呼ばれる。知的財産権制度とは、知的創造活動によって生み出されたものを、創作した人の財産として保護するための制度である。知的財産及び、知的財産権は、知的

        • 博物館における情報化

          (約3700文字・購読時間4分30秒) 情報管理、公開として  文化遺産オンラインは文化庁が運営する、日本の文化遺産についてのポータルサイトである。2008年に全国の博物館・美術館にあるものを、画像込みで集めて、国民が喜んで使えるという目的で開設された。国や地方の有形・無形の文化遺産に関する情報を提供するサイトであり、全国の博物館・美術館等から提供された作品や国宝・重要文化財など、さまざまな情報を提供している。「時代から見る」「分野から見る」「文化財体系」「地図」というジャ

        博学連携による生涯学習の推進

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          博物館によるデジタルアーカイブ構築の意義

          (約1700文字・購読時間2分10秒)  博物館は文化財保護法第1条にその目的を「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もって国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献すること」と規定しており、保存と活用は文化財保護の重要な柱と考えられている。保存と活用を共に尊重し、文化財の継承と地域の持続的な維持発展を共に目指すことが必要である。長い歴史の中で伝えられ、守られてきた文化財は、我が国の歴史や文化の理解に欠くことのできない、かけがえのない貴重な遺産である。精神的、

          博物館によるデジタルアーカイブ構築の意義

          博物館資料の保存の現状

          (約1700文字・購読時間2分10秒) 博物館資料の保存の現状  博物館法の第4条では「学芸員は、博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる」とされており、ミュージアムに収蔵された資料、つまり文化財の保存も学芸員の本来的な仕事とされている。文化財を良好な状態で保存していくための基本的な考え方としては、収蔵庫や展示室の温湿度を通年で一定に保つ、光に敏感な資料にあたる照明光量を調整する、資料を変色させる化学物質を展示室や収

          博物館資料の保存の現状

          博物館資料の活用の現状

          (約1700文字・購読時間2分10秒)  文化財保護法第1条にその目的を「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もって国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献すること」と規定しており、保存と活用は文化財保護の重要な柱と考えられている。保存と活用を共に尊重し、多くの人の参画を得ながら、文化財の継承と地域の持続的な維持発展を共に目指すことのできる方策を模索し、文化財保護制度をこれからの時代を切り拓くにふさわしいものに改めていくことが必要である。 文化財を公開するこ

          博物館資料の活用の現状

          日本の博物館における広報活動について現況と展望

          (約1400文字・購読時間1分50秒)  今日の美術館の経営において、マーケティングを含めた広報の役割は日に日に増していっているといっていいだろう。いくら素晴らしい展示をしたり、貴重な資料の展示を行なっていても、それが利用者に伝わらなければ意味がない。時代の移り変わりにより、様々なメディアが生まれてきたが、それらを有効活用するべきだと考える。  公立の博物館、美術館は多くが公費によって賄われているが、入場者数、利用者数はその施設の価値を表す指標として大きな意味を持つ。予算

          日本の博物館における広報活動について現況と展望

          『歌川国芳 浮世絵美術館』建設予定案について

          (約4000文字・購読時間5分00秒) 地域の特長  東京都区部は東京都の東部に23区からなる地域である。区部の中心部には都市機能が集積しており都心と呼ばれる。東京都の人口はおよそ1350万人で、周辺県にはベッドタウンが点在する。一極集中が加速するに連れて、他の大都市から東京都区部に本社を移転し、東京都区部に労働力が集中するようになった。渋谷区や港区にはIT企業が集中するようになり、新産業として若い労働力を吸収するようになる一方、情報通信インフラの整備に伴い、本社機能を東京

          『歌川国芳 浮世絵美術館』建設予定案について

          博物館教育論 幼少、少年期における博物館教育の重要性について

          (約3500文字・購読時間4分20秒)  幼少、少年期における教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであり、 健全な発達のために必要不可欠である。それらの活動を通じて培われたものが基礎となり、生涯にわたる発達を支える。生涯学習においても、幼少、少年期に味わった学びの喜びが、生涯にわたり主体的に学び続けることの喜びの基礎となると考えることができる。学びの喜びを味わうと同時に、美術館を含む博物館を利用する機会を得て、美術館で学ぶことの面白さに触れることは、生涯にわた

          博物館教育論 幼少、少年期における博物館教育の重要性について

          二つの岡本太郎美術館・記念館から見る、目指すべき美術館の姿

          (約3200文字・購読時間4分00秒)  同じ岡本太郎(以下、太郎 1911-1996)の名を冠していながら、違った展示方法、イベントが行われている、川崎市岡本太郎美術館と岡本太郎記念館を、博物館法第二条に定められている規定の中から、収集、展示・教育の観点から調査し、それぞれの施設の設立の経緯と岡本太郎の思想と合わせて考察する。さらに施策の違う両施設について事例をあげながら未来の美術館の方向性を見出す。 思想と経緯は以下の通り。 岡本太郎の思想から本項に関係するもの ・芸

          二つの岡本太郎美術館・記念館から見る、目指すべき美術館の姿

          大正乙女の女学生文化

          (約1800文字・購読時間2分20秒)  女学生とは明治より始まった日本の旧制の女子学校教育の女学校の生徒のことである。江戸期以前の封建社会のもとでは、女性に学問は必要なく、家を守っていればよいと考えられていたため、寺子屋などでの初歩的なものに限られていた。明治期に入り女子に対する教育が広まるようになると、女学生は封建主義の色濃かったなか、新たな女性像のひとつとして教養ある女性層を代表する存在だった。文明開化の息吹とともに、一種の都市風俗を表すものとして定着したとされている

          大正乙女の女学生文化

          芸術鑑賞 光琳と宗達の《風神雷神図屏風》

          (約1100文字・購読時間1分30秒)  江戸時代を代表する画派として琳派という人たちがいる。狩野派、土佐派など血縁や師弟関係でつながる画派とは異なり、私淑によって同系統の技法・画風、作品群を残した俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一などの総称である。それぞれ俵屋宗達(17世紀前半)、尾形光琳(17世紀前半〜18世紀前半)、酒井抱一(18世紀末〜19世紀前半)と活動期間が100年ほど間があり、互いに直接の面識があるわけではない。ただし、光琳は宗達と一緒に活動していた本阿弥光悦の親戚

          芸術鑑賞 光琳と宗達の《風神雷神図屏風》

          明治維新による教育の変化

          (約1000文字・購読時間1分20秒)  明治時代以降の学校とは一定の教育目的を達成するために、継続的、計画的に教育活動の営まれる組織であり、教育をする者、教育を受ける者、および教育活動に必要な施設設備を中心に構成される。教育は、もともと人間のあらゆる生活活動のなかにいつも存在するものであり、人間が社会生活を始めて以来、今日に至るまで連綿と継続してきたものである。そのような教育は、社会生活の変遷を通じて、直接的、間接的になんらかの方向に無意図的に人間形成が行われてきた段階か

          明治維新による教育の変化

          巫女の口寄せ

          (約850文字・購読時間1分10秒)  巫女とは神社で神楽や湯立てに奉仕するうちに祭神の憑依によって神託を述べる神社巫女と、口寄せという神仏、生霊、死霊などの憑依をうけ、託宣を行う憑依巫女に大きく分かれる。同じ憑依巫女でも日本各地で名称が違い、東北を中心としたカミサマ、イタコ、沖縄のユタ、ノロなどがいる。東北地方を代表するイタコなどは活発に機能し、地域住民の信仰的要求にこたえている。本来のイタコの仕事は、自分の担当地域を巡り歩き、農作物の予想、住民の健康や運勢を占うなど、地

          巫女の口寄せ

          芸術鑑賞 ティツィアーノ《ウルヴィーノのヴィーナス》

          (約1500文字・購読時間1分50秒) 題・《ウルヴィーノのヴィーナス》(1538) 作・ティツィアーノ・ヴェチェリオ(1488-1576)  ルネサンス様式の豪華な宮殿を背に、向かって頭を左、足を右にして、裸の女性が寝台に静かに横たわっている。右肘をまくらのようなものに付き、上半身をやや持ち上げている。下半身は両脚を伸ばして閉じており、右膝をやや曲げ、左足の下に潜り込ませている。右手に薔薇の花束を持ち、左手は画面中央に陰部を隠すように置かれている。頭部は首を曲げ、顔を正

          芸術鑑賞 ティツィアーノ《ウルヴィーノのヴィーナス》