キャンプ道具ってどんなのがいいですか?
「キャンプに行ったことがないんですけど、どんな道具を買ったらいいですか」
といままで何回も聞かれたことがあります。そういうときは「布団が最高です」と答えることにしています。ちょっとイジワルしてみるわけですが、じつは本質を伝えたいんです。
日本人はとくに最初は道具に目が行きがちですが、じつは最高に気分のいい場所で過ごすことがいちばんだいじです。そこにフォーカスしてください。
「いい道具」ではなく「いい場所」なのです。あなたが先輩に訊ねるべきは。
ひじょうに大事なことを書きます。
キャンプのメリットというのは、人もおらず設備もないところに好きに滞在できるということです。
野営でいちばん大事でぜいたくでラグジュリアスなのは広い意味の「景色」です。水道とかトイレとかを気にして「日常生活に近づける」ことに努力しちゃうと、せいぜい景色のいいホテルかキャンプ場しか選択肢がなくなります。
わざわざ野営するんでしょう。崖のてっぺんにテントを張るとか、木の上でコーヒーを飲むとか、砂浜でそのまま寝るとか。なにをやってもいいんですよ。
「えー寒いかも」
「ムシが苦手で」
とか言ってるとどうしようもありません。そういう惰弱な人がやる遊びじゃないんです。ホテルかキャンプ場に……(以下略)。
あなたが明日の朝いちばんに拝む朝焼けは人生最高の朝焼けになるかもしれないし、見たこともない毛色のキツネがテントに挨拶に来るかもしれない。人生最高の星空を今夜0921時から0934時の13分間だけ見ることになるかもしれない。朝露に濡れたテントから顔を出したときの感覚の新鮮さに、ことによったら落涙するかもしれません。
そういう経験をわざわざしにいくんです。だいじなのは「わざわざ」ってところです。めんどくさい。そのかわりにほかの人が見落としているものを自分の感性でがっちり拾いに行く。
最高の場所を手に入れるには小回りがきくほうがいい。だから最高の手段は徒歩とかバイクとかカヌーになる。おれがいちばん好きなのはカヌー。だれもいない場所にやすやすとアクセスできるからです。オートキャンプは便利ですが、クルマを使うとよほど経験がないとけっきょくだれでも行ける場所に行っちゃいがちです。
野外生活の最高のぜいたくはそういうことじゃない。
だれも知らない最高の場所に勝手に行っていいということです。あなたは自分で思っているより自由です。アウトドアギアというのは自由になるためのツールですから道具自体にとらわれてはいけない。
そもそも時期を選べば寝袋すらいらないんだ。時期を選べばマットとタオルケットだけでもOK。
道具じゃなくてどこに行くか。カネで買えないものを自由な感性で見つけに行ける。自分だけの宝を手に入れる。それがアウトドアのぜいたくの本質です。
さいごにひとつ。できたらひとりで行くことです。
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