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【地域に“つながり”の橋をかける‐富田わくわく食堂】

〇ある問いかけ
 

 「こうしてこれからきれいな施設をつくっていくことは大切なことだと思いますよ。
 ただ、どれだけきれいな箱モノをつくっても地域の人たちの中にある長年の“意識”を超えないと本当の意味でのつながりなんて生まれないと思います。」
 
 ある施設づくりに向けたワークショップの場に参加した際、そこに参加した方が問題提起してくださった言葉。
 これから富田地区のハード面が大きく変わっていく中で、ソフト面(心の部分)へと、これまでもそうだったように絶え間なく、そして、根気強く働きかけをしていくことの大切さをあらためて教わった言葉だった。

〇富田わくわく食堂4年ぶりに復活

 新型コロナ禍で4年間延期していた「第6弾となる富田わくわく食堂」を復活することを決めた。
 多忙を極める中でも、それでも様々な方々の力をお借りして実現化しようと思ったのには、それだけの“わけ”(願い)がある。
 
 第6弾の取り組みのコンセプトは 「地域に“つながり”の橋をかける」
地域に住む多世代、子どもから高齢者、障がい者、多様な人たちがごちゃまぜに交流する拠点として子ども食堂(共生食堂)を開催。第6弾は、クラシックライブなどの文化を通して「地域に“つながり”の橋をかける」

〇問いかけの意味、そして

 冒頭にある方がおっしゃった“意識”とは、長年地域の中にある差別意識。
  ワークショップでのそのご意見を受け、僕は「たしかに長年、この地域には差別の長い歴史があり、それによって見えない溝が生まれてきたことは事実です。ただ、次にできていく施設やまちではそれを乗り越えてつながりをつくっていけたらと願っているんです。次の世代(自分たちの世代)ではそれを乗り越えていきたいと思っているんです」とお伝えし、ワークショップではそれぞれの立場から思いを語られ、本質的なことを話し合うことができた。そのあと、全体の発表ではそのことは言わなかった。それがまとめる原動力にもなった。

〇豊かな出会いを生み出すこと

 見えにくくはなってきたけれど、残念ながら差別意識は根強くある。
 それが表面化したのが数年前の小中一貫校の事象だった。そうした時、差別を止めていく行為も大切(例えば、ネットにさらされているのを止めるなど。)
 同時に大切だと思うのは、いかに“豊かな出会いを生み出していけるのか”ということ。北部地震後に立ち上げた「未来にわたり住み続けたい町」の取り組み(以下、追記)で願ってきたことも 
 
「ここに生まれてよかった。」「ここってステキなまち」と思える町。
 
 そんなまちで豊かな出会いをしていくこと、そのことを通して結果として差別がなくなっている状態をめざすこと。
 そこには、自身が被差別体験を通して、また、育ててくれた人たち、まちづくりで出会ってきた多くの人たちの深い「願い」がある。

 「富田」という地に多くの人たちが訪れてくれるように。
豊かな出会いが生まれるように。
 そして、事業をつくるプロセスを通して参画する子どもから高齢者までが再びつながれるように。



〇追記


・・・・・・
 大阪北部地震後のコミュニティ再生事業で願ったこと。(今も変わらない信念)
『“未来にわたり住み続けたいまちアニュアルレポート』(2021年度発行)
 
あとがき~ コミュニティ再生事業に込められたもの ~
 
 インターネット上に悪意を持って流されたこの地域に対する動画を見て深く傷ついた少年を目の前に、同じふるさとに生きてきた者として「自分には何ができるのか」「何を次の世代へと手渡していけるのか?」、そう自身も深く傷つきながら自問自答する中で、事業の立案が始まりました。
 この地に生まれたことを恥じてしまわざるを得ない差別の現実があるとするのなら、この事業を通してもたらされるまちの姿が「このまちに生まれてよかった。」「このまちって素敵なまち。」と思え、喜びによって傷がとけていくような、思わず笑顔になってしまうような、そんなギフトを届けたいと願い実践を始めました。
 長期的なまちづくりを通して、子ども、子育て層、障がい者、高齢者、外国ルーツの人たちに至るまで誰にとっても住みやすい「未来にわたって住み続けたいまち」の姿を描きました。
 そして、大阪北部地震後、高槻市長の3期目の施政方針の重点課題の一つとして掲げられた「副都心富田地区のまちづくり」と並行し て当法人を中心に多セクターとの協働の中でコミュニティ再生を図っていく仕組みを構想、実践化していきました。
 この地域では、一貫して地域・家庭・学校・行政・大学・企業等様々な方々の力をお貸りしながら「ひとりぼっちのいないまち」を めざしてきました。それは、社会的包摂をめざすまちの姿であり、さらに先には「新しい多文化共生社会」を描いています。その実現化 にはまだまだ道は始まったばかりです。

アニュアルレポートはこちらのページの下の方のページからご覧いただけます。



 
 

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