「LIFE ON MARS?④~愚か者さえ愛を学ぶ~中篇」『深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)& 読みたいことを、書けばいい。』
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2019年9月19日深夜
スナックふかよみ
DAVID BOWIE『Even a fool learns to love』
そして歌詞は、こう続く…
They'd point my way
"How are you today?"
"Will you make us laugh?
Chase our blues away? "
訳すと…
彼らは my way に対してツッコミを入れた
「今日の調子はどう?」
「うちらを笑わせてくれる?」
「うちらの憂鬱を吹き飛ばしてくれる?」
ですね。
あっ!「マイ・ウェイ」が出て来てるじゃん。
ポール・アンカとシナトラの『マイ・ウェイ』よりも先に、デヴィッド・ボウイは「マイ・ウェイ」という言葉を使っていたのね。
まあ、元ネタがあるんだけど。
え?
この場面は「最後の晩餐」を歌ったのもだった。
「わたし」が「took my heart」した「party」とはイエスの弟子たち「12使徒」のことだったよね。
『最後の晩餐』レオナルド・ダ・ヴィンチ
そして『ヨハネによる福音書』の「最後の晩餐」では、イエスと使徒トマスの間でこんな会話が交わされる。
14:4「わたしがどこへ行くのか、その道はあなたがたにわかっている」
14:5 トマスはイエスに言った、「主よ、どこへおいでになるのか、わたしたちにはわかりません。どうしてその道がわかるでしょう」
14:6 イエスは彼に言われた、「わたしは道であり、真理であり、命である」
あっ!マイ・ウェイ…
ふふふ。
だから「わたし」に対する彼らからの最初の質問が「How are you today?」なのよ。
どういうことですか?
「today」は「トゥデイ」じゃなくて「トゥダイ」と発音するの。
つまり「How are you to die?」のダジャレ…
あっ!
『ヨハネによる福音書』の「最後の晩餐」の冒頭で、イエスは弟子たちに「これから自分が死ぬこと」を宣言した。
13:33 子たちよ、わたしはまだしばらく、あなたがたと一緒にいる。あなたがたはわたしを捜すだろうが、すでにユダヤ人たちに言ったとおり、今あなたがたにも言う、『あなたがたはわたしの行く所に来ることはできない』。
寝耳に水だった弟子たちの間には動揺が走り、それがどういうことなのかをイエスに尋ねたんだ。
まさに「How are you to die?」とね…
そうか…
次の質問「Will you make us laugh?」の「laugh」は「rough」のダジャレだから…
「(そんなことを言って)あなたは私たちを辛い目にあわせるのですか?」という意味だ…
「(Will you) chase our blues away?」も、わかるでしょ?
「この不安を解消してくれますか?」ってことね。
ちなみに『ヨハネによる福音書』では、弟子たちの不安に対し、イエスはこう答えている。
14:1「あなたがたは、心を騒がせないがよい。神を信じ、またわたしを信じなさい。」
まさに「最後の晩餐」での様子が、そのまま歌詞になってる…
そして歌詞はこう続く。
Their funny man won't let them down
No, he'd dance and prance and be their clown
この歌のキーワード「clown」の登場だ。
「クラウン」とは道化師とかピエロ…
つまり「愚か者」ってことですよね?
実はこれも駄洒落になっている。
「clown(クラウン)」であり「crown(クラウン)」…
つまり「愚か者」であり「王」ということだ。
あの歌詞はこういう意味になってるんだよ…
彼らの愛すべき男は
彼らをがっかりさせるどころか
堂々と振舞い、力強く歩いた
彼らの《王》として
ああっ! INRI!
そう。
イエスの罪状「IESVS NAZARENVS REX IVDAEORVM(ユダヤ人の王、ナザレのイエス)」のことね。
イエスは「ユダヤの王」であることを否定せず有罪となり、「INRI」と書かれた十字架を背負ってエルサレムの街を歩き、ゴルゴダの丘へ向かった…
そして十字架に掛けられた…
『キリストの磔』
マティアス・グリューネヴァルト
ちなみに2020年のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』も、このネタがベースに使われていると僕は読む…
「KIRIN」とは「Khristos(クリストス)」の「K」と「INRI」のアナグラムだろう…
家来の明智光秀に裏切られた織田信長は、人々に「うつけ者」と呼ばれ、自身で「王」を名乗った…
つまり光秀はユダ… そして信長はイエス…
じゃあ秀吉は?
最も愛された弟子ヨハネ? それとも使徒のリーダー格ペトロ?
おそらく家康がペトロじゃないかな。
家康は徳川幕府の初代将軍。ペトロはローマ・カトリックの初代教皇。
うまい!
もうっ!何のハナシをしてるのよ!
あ、ごめん。つい…
ふふふ。深読み名探偵さんの読みがどこまで当たるか楽しみね。
さて、1番はこう締めくくられる。
That time, the laughing time
When even a fool learns to love
「愚か者でさえ愛を知る」とは、この歌の主人公のことであると同時に、歌を聴く人々のことでもあるだろう。
「フランス語の原曲『Comme d'habitude(いつものように)』ではわかりづらかったテーマを、私はここまでわかりやすくしましたよ。さすがにこれなら《愛の歌》だってわかるでしょ?」というデヴィッド・ボウイの思いが隠されたフレーズだ。
自信満々でデビューしたのに、ちっともレコードが売れなくて、レコード会社から干されていた時期ですからね…
ベタなシャンソンを英訳するという、ほとんどゴーストライターみたいな仕事を与えられたにもかかわらず、そこで腐らずに、少しでも自分の才能を見せつけたいというボウイの意地が伝わってきます…
だね。では2番に行こうか。
冒頭で「わたし」は頭を方向転換させ、そこにいた「ある女性」を見る…
The clown turned around
And saw her smile, oh how she loved me
She'd clap her hands and beg me stay
To make her laugh, to make her life gay
これは十字架上のイエスが、力を振り絞って辺りを見回し、悲しみに暮れる母マリアと最愛の弟子ヨハネに語りかけたシーンですね…
19:26 イエスは、その母と愛弟子とがそばに立っているのをごらんになって、母にいわれた、「婦人よ、ごらんなさい。これはあなたの子です」
19:27 それからこの弟子に言われた、「ごらんなさい。これはあなたの母です」。そのとき以来、この弟子はイエスの母を自分の家に引きとった。
『磔刑図』マティアス・グリューネヴァルト
マリアは自分が腹を痛めて産んだ子イエスを心から愛していた…
ショック過ぎて笑みを浮かべながら、行かないでと泣きわめいた…
「もっと私を笑顔にさせて!私の人生を…
ん? ゲイにして?
どゆこと?
バカね。そんなことも知らないの?
「gay」は元々「陽気な・自由奔放な」って意味。
フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースの代表作『The Gay Divorce』も、「ゲイの離婚」じゃなくて「陽気な離婚」って意味だったでしょ?
あ、そっか。
そういえば前にも聞いたことあったわ。
「ゲイ」という言葉は、1960年代頃から「同性愛者」という意味で使われ始めたんだって…
それまでは「陽気な」とか「落ち着きのない人」という意味だったのよね…
だけどデヴィッド・ボウイがこの歌を作詞したのは1968年…
すでに「その界隈」において「gay」は、いわゆる「ストレートじゃない人たち」を差す言葉として使われていた…
アングラ文化にどっぷり浸かっていたデヴィッド・ボウイが、それを知らなかったはずがない…
それって、どういう意味?
「イエスの愛しておられた弟子」こと使徒ヨハネは、宗教画において、なぜか「女性的」に描かれることが多いのよね…
まるで恋する乙女みたいに…
ええっ!?
じゃあ2番の「愛する彼女」って…
おそらく「使徒ヨハネ」のことだろう。
十字架に掛けられる前、イエスは母マリアのことを「わたしはあなたを知らない」と言った。
そして十字架上からも「婦人よ」と語りかけた。
イエスは一貫して母マリアによそよそしんだよね。
じゃあ、そのあとの歌詞も…
Who wants the love of all the world
When here was love in the eyes of just one girl
That day, that precious day
When even a fool learns to love
誰がこれ以上の愛を求めるだろうか?
そこにはまさに《愛》があった
その小さきものの瞳の中に…
まさに十字架刑のシーンだね。
ちなみにこれって、どこかで聞き覚えがあるフレーズだと思わない?
瞳に映る愛…
パイと、虎のリチャード・パーカー…
まさに「That day, that precious day」よね。
そして「When even a fool learns to love」の日でもあったわ(笑)
パイも「なぜわからない?お前は馬鹿か?」って言われてました…
なにこれ? どうなってるの?
まあ、偶然かもしれませんが…
『ライフ・オブ・パイ』のこと、すっかり忘れてたわ(笑)
早く戻らなきゃね。Cメロと3番は速足で行きましょ。
そうですね。
それではCメロを深読みしていきましょう…
つづく
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