第129話「ポール・サイモンの ONE-TRICK PONY ⑱「God bless the Absentee」後篇
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2019年9月19日
スナックふかよみ
ちゃんと意味があるんだよね。
あの2つのCメロが、この歌のフィナーレである3番の重要な伏線になっているんだ。
あの、わけのわからない3番の?
「社会の変化が早過ぎる」とか「未来が今で、今は過去」とか「ハイウェイはトラブルだらけで、空港は滅茶苦茶」とか…
これらを読み解く鍵がCメロにあるのですか?
そういうこと。
それでは、この歌における「真の不在者」について、謎解きをするとしよう…
その前に…
ドリンクのお代わりを、もらっておこうかしら。
アタシも!
深代ママ~!チチお代わり~!
それなら僕も一緒に…
はいはい。
それじゃあ、ついでに私のも…
あなたのは、まだほとんど残ってるじゃないの。
あれ? ホントだ…
じゃあまだ結構です。
あー!ジョーったら!
ミキサー洗ってないじゃん!
すみません… 大至急洗います…
んもう! みんな、ちょっと待っててね…
まーだー?
ごめんね。そんなに早くチチは出ないのよ(笑)
ゴクゴク…
ジー
あの…
なんでさっきから私のことジーっと見てるんですか?
顔に何かついてます?
そうではない…
じゃあ何をそんなにジロジロと…
チチだ…
はい?
お前が飲んでいるのは…
わたしのチチだ…
え?
そのデコレーションのパイナップルが何よりの証拠…
ガブリとかじった、わたしの歯形がついてるはず…
う、う、うそだ-----っ!
何やってるの?
はい、あなたたちの分も作っておいたわよ。
かたじけない。
ど、どうもです…
さあ、準備はいいかしら?
Cメロの深読みに行く前に、曲をもう一度聴いておきましょ。
歌詞はコチラです…
最初のCメロは、こうね。
I miss my woman so
I miss my bed
I miss those soft places
I used to lay my head
「僕」を主語にした4つの文が並べられてる。
僕は彼女のことが心から恋しい
彼女との愛の生活が忘れられない
僕が顔をうずめた柔らかい胸や肌
そのすべてが恋しくてたまらない
って感じかしら?
なんだか、めっちゃ切ない歌詞…
この歌は「神と主の歌」でもあるから…
ここでの「my woman」は「マリア」、そして柔らかい「my bed」は「飼い葉桶」や「マリアの胸」のことでもある。
『羊飼いの礼拝』
ヘラルト・ファン・ホントホルスト
『リッタの聖母』
レオナルド・ダ・ヴィンチ?
そして、長い間奏があり、その後に第2Cメロが始まります。
今度は「息子」が主語になった4つの文が続くという内容…
My son don't need me yet
His bones are soft
He flies a silver airplane
He wears a golden cross
ちょっと不思議な歌詞だわ…
息子はまだ私を必要としない?
息子の骨は柔らかい?
銀の飛行機で飛ぶ?
黄金の十字を身につける?
第2Cメロは「父なる神」から見た「子キリスト」についてだ。
ゴルゴダの丘で十字架に掛けられている息子について父が語っている。
「息子の骨は柔らかい」は?
十字架で死んだイエスの骨が砕かれなかったことを言ってるんじゃないかな?
『ヨハネによる福音書』
19:33 しかし、彼らがイエスのところにきた時、イエスはもう死んでおられたのを見て、その足を折ることはしなかった。
19:36 これらのことが起ったのは、「その骨はくだかれないであろう」との聖書の言葉が、成就するためである。
じゃあ「飛行機で飛ぶ」は?
飛行機は十字架の喩えだね。
形がよく似てるでしょ?
なるほど…
でもさ、これじゃあ全然「ふつう」じゃん。
これまで通りイエス・キリストについて歌ってるだけ。
そう。だけどここまでは「表向き」の解釈だ…
このCメロには「別のストーリー」が隠されている…
何それ?
第2Cメロで何か気付かなかった?
「父と息子」の話で…
息子は今はまだ父を必要としていなくて…
息子の骨は柔らかくて…
あっ!
『帝国の逆襲』の、このシーンのことだ!
ダース・ベイダーがルークの腕を切り落として「私はお前の父だ」と告白するところ!
『STARWARS / THE EMPIRE STRIKES BACK』
マ、マジで?
それじゃあ「息子は銀色の飛行機で飛ぶ」は…
ルークが乗った「空飛ぶ十字架」こと「Xウィング」のことだね。
でも「息子は黄金の十字架を身につける」は?
ルークは十字架なんて身につけていないでしょ?
はたして、そうかな?
『帝国の逆襲』のポスターを見てみよう。
キャリー・フィッシャーとハリソン・フォードがチューしてる…
そりゃポール・サイモンもハリソン・フォードにガン飛ばしたくなるわ…
今はその話じゃないでしょ!
ルークは黄金の十字架なんて身につけてないわ!
前の曲『Jonah』での話を思い出してほしい…
『スター・ウォーズ/新たなる希望』のポスターは、ミケランジェロの『最後の審判』を元ネタにして描かれていたよね…
『最後の審判』に描かれていた金色の十字架が、C-3POで再現されていたんだ…
それがどうしたの?
『帝国の逆襲』のルークをよく見てごらんよ…
え?
ルーク!後ろ!後ろ!
あっ!
なんてことだ…
まさに「息子は黄金の十字架を身につける」じゃないですか…
ちなみに、ダース・ベイダーがルークの右腕を切り落とすシーンは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でも再現されている…
は?
マイケル・J・フォックス演じる主人公が、父と母の通う高校のプロム、ダンスパーティーで『EARTH ANGEL』を演奏するシーン…
主人公は、父に悪の侵略者ダース・ベイダーの存在を信じ込ませ、ダンスパーティーに母を誘わせる…
しかし、その父のせいで、息子の右腕が消えた…
あ、なるほど…
だけど岡江クン、やたらと『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に結び付けるわね?
この映画、ポール・サイモンと深いつながりがあるんだよ…
あのシーンで演奏される『アース・エンジェル』と、次の曲『ジョニー・ビー・グッド』は、ポール・サイモンの…
その話は、もっと後で、と言ったでしょ?
フライングはダメ(笑)
あ、そうでした…
何なの?さっきから。変なの。
そういえば、第1Cメロのこと忘れてない?
「僕」が恋しい恋しいと嘆いていた「女」のことですね…
それから「僕」はベッドも恋しいと言い、彼女の柔らかい胸に「lay」したいと歌っていました…
もう答えは出ている。
ポール・サイモンが「lay」という言葉を使ったのは「Leia」を想起させるためだ。
Leia(レイア姫)
ベッドは?
キャリー・フィッシャーの本来の苗字は「Tisch」、「テーブル」という意味だった。
「テーブル」だと明らかに違和感あるから「ベッド」にした…
おそるべし、ポール・サイモン…
それじゃあ最後の3番に行きましょ!
もうCメロがわかったから、読み解けるんでしょ?
そうでしたね。3番はこんなふうに始まります。
God bless the absentee
Lord, this country's changed so fast
神よ、不在なる者に祝福あれ
主よ、この国の変化は速過ぎる
そして、どれくらい速いのかが説明されます。
The future is the present
The present's in the past
未来が来たと思ったら、すでに過去の中だった?
これはポール・サイモンのツッコミだ。
つっこみ?
「これが未来か!ついに人類は未来を目の当たりにした!」と思ってたのに…
「ハァ?実は過去だった?なんでやねん!」とね…
どういうことでしょうか?
これだよ。
あっ…
人類の未来みたいなスター・ウォーズの世界は…
実は遠い過去に起きた出来事を描いたものだった…
なんてことなの…
ちなみにミケランジェロの『最後の審判』もそう…
世界の最後の日を描いた絵なのに、登場人物が皆、大昔の人ばかり…
そして最後の部分。
Highways are in litigation
The airports disagree
God bless the absentee
ハイウェイは訴訟中で
空港は不一致
これは表向きの意味では…
「highways」が、動脈と静脈からなる「血管」にあたり…
「the airports」は「心臓」にあたる...
つまり、血(息子)は litigation(係争中)で、ハート(想い)は disagree(不一致)だという意味だね。
しかし、隠された本当の意味は…
これだ。
スター・ウォーズの超光速空間移動ハイパードライブ。
ミレニアム・ファルコン号は密輸船…
超光速空間移動ハイパードライブで悪事を重ね、様々な訴訟に巻き込まれていた…
そしてハイパードライブには、空港なんか必要ない…
そういうこと。
しかし、ここまでスター・ウォーズに被せてくるとは…
自分で書いた脚本の中に、わざわざ『帝国の逆襲』を観るシーンを入れるくらいだ。
ポール・サイモンの胸中に、いろいろ思うところがあったんだろう。
それが歌詞にも反映されているというだけのこと。
自分のもとを去って行った女性、キャリー・フィッシャーへのメッセージとして…
ポール・サイモンは、本当に愛していたのね…
彼女のことを…
さて、ようやくここまで辿り着いたわ。
次は最後の曲『Long, Long Day』…
本当に今日は長い日(笑)
それでは簡潔に行きましょう…
アルバム『ワン・トリック・ポニー』の最後を飾る10曲目『Long, Long Day』を、深読みします…
つづく
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