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深読みライフ・オブ・パイ&読みたいことを、書けばいい。

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2020年11月の記事一覧

「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇①(第268話)

「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇①(第268話)

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2020年 ✕月✕日
南の島
とある施設の中

魚のなる木?

伝説の「羊の木」みたいに?

嘘じゃない。僕はこの目で見た。

信じられない…

そんなこと、ありえないわ…

「ブラック・スワン理論」って知ってる?

コクチョウを見たことなかったヨーロッパ人は、黒い白鳥なんて「ありえない」と思っていた。

だけど魚のなる木だなんて…

それはそうと、キミはその魚を食べたの?

怖く

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「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇②(第269話)

「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇②(第269話)

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2019年9月20日 朝
スナックふかよみ

「仙吉」という名前が重要?

丁稚にありがちな名前でしょ?

志賀直哉が適当に選んだんじゃないの?

そんな単純な理由で主人公の名前をつけると思うかい?

『ライフ・オブ・パイ』のパイ、『ジョゼと虎と魚たち』のジョゼ、『魚服記』のスワ、『南京の基督』の宋金花…

みんな、ちゃんとした意味があったよね?

では、いったい…

それは先程の

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「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇③(第270話)

「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇③(第270話)

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2019年9月20日 朝
スナックふかよみ

なんなんですか、これは…

志賀はずっと『ヨハネ伝』を別の話に置き換えているだけ…

だから志賀は「小説の神様」と呼ばれたんだよ。

では続きを見ていこうか…

最初に説明したように、「小僧の神様」とは「小僧の姿をした神様」という意味だった。

その「小僧の神様」である仙吉がこのタイミングで登場するのは、ここまでの流れと同様に『ヨハネ伝

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「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇④(第271話)

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2020年 ✕月✕日
南の島
とある施設の中

すごい…

SGTには専属の楽団までいるんだ…

うん。それにしても、あれには驚いたな…

実に奇妙な歌だった…

奇妙?

これまでの歌も十分奇妙だったけど…

これまでの歌は、少し考えれば意味がわかった。

「ATM」は「A Ta Ma」
「KRD」は「KaRaDa」
「TKN」は「TaKaNa」

こんなふうに、省略されている母

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「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇⑤(第272話)

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2019年9月20日 朝
スナックふかよみ

「海苔巻ありませんか」がトンデモナイ発言?

だから主は「今日はできない」と強く否定した?

いったいどういうことなの?

教えて、岡江クン…

いいだろう。

それでは「海苔巻ありませんか」のトリックを解説しよう…

ちなみに「海苔巻」と聞いたら、何を想像する?

煎餅?

いきなり脱線しないでください。

「何を想像する?」って言わ

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「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇⑥(第273話)

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2019年9月20日 朝
スナックふかよみ

だけど、なぜそれが「磔刑図」なのよ?

「かんぴょう巻」と「磔刑図」に何の関係があるの?

これを見てもらえば、わかると思う…

え?

何ですかこれは?

「かんぴょう」と言えば、この絵よね。

「かんぴょう」を描いた絵の中で、最も有名な絵。

これのどこが「かんぴょう」の絵なの?

「かんぴょう」は漢字で「干瓢」と書くように、瓢箪(

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「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇⑦(第274話)

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2020年 ✕月✕日
南の島
とある施設の中

ないないない。そんなのないって(笑)

どうして?

だって、変でしょ?

変じゃないよ。

やっぱ、ないわ。受け狙いだとしか思えない。

受けなんか狙ってない。

僕はあの島で体験したことを包み隠さず話してるだけ。

SGTのYとMとFが不思議な決めポーズをとった?

とまらざる、たまらざる、かえさざる?

いったい何のことなの?

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「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇⑧(第275話)

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2019年9月20日 朝
スナックふかよみ

では、第四場の後半を見ていきましょう…

Aは小僧を思い出して、こう言いました。

「何だか可哀想だった。どうかしてやりたいような気がしたよ」

それに対してBは、こう答えます。

「御馳走してやればいいのに。幾らでも、食えるだけ食わしてやると云ったら、さぞ喜んだろう」

Aは言った。

「小僧は喜んだろうが、こっちが冷汗ものだ」

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「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇⑨(第276話)

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2019年9月20日 朝
スナックふかよみ

それでは第七場を見てみよう。

志賀のジョークがますます冴えわたるシーン…

Y夫人とAの細君の登場だ…

前半部でAは「御馳走の是非」について悩みます。

しかし、Bと一緒に音楽界へ行きY夫人の独唱を聴いたら、Aのモヤモヤはすっかり消えてしまいました。

そして後半部はAの帰宅後の出来事…

ちょっと変わってる感じの奥さんが、Aの行為

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「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇⑩(第277話)

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2019年9月20日 朝
スナックふかよみ

稲造?

新渡戸稲造の『一日一言』だ。

にとべいなぞう?

あの五千円札だった人?

『一日一言』は、二十世紀初頭の代表的文化人、新渡戸稲造による格言集。

1915年(大正4年)に実業之日本社から出版され、12年後の昭和元年までに84版を重ねるほどの国民的大ベストセラーになった。

新渡戸稲造(1862-1933)

12年で84版

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「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇⑪(第278話)

「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇⑪(第278話)

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2019年9月20日 朝
スナックふかよみ

新渡戸稲造の『一日一言』の中にある「恩を施しては忘れよ:情けは人の為ならず」は4月23日?

それが『小僧の神様』と何か関係あるのですか?

もちろんだとも。

「4月23日」って、何の日か知ってる?

え? 何の日だろう…

では解説しよう。

Y夫人の音楽界と、Aの奇妙な細君へつながる、重要なブリッジだ。

1914年の夏に交通事故

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「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇⑫(第279話)

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2019年9月20日 朝
スナックふかよみ

だけどなぜ志賀直哉は、こんなことやろうと思ったの?

『小僧の神様』は、新渡戸稲造への返歌であり、『ヨハネ伝』の再現なんでしょ?

『ヨハネ伝』にはサロメの逸話は出てこないし、ここまでオスカー・ワイルドの『サロメ』を盛り込む必要なくない?

志賀直哉(1883-1971)

それが、あるんだよね。

え?

志賀は自分の境遇を『サロメ』

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「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇⑬(第280話)

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2020年 ✕月✕日
南の島
とある施設の中

じたばたするなよ?いなりさまが来るぜ?

そう。稲荷様。

「いなりさま」って、あの黄金色した甘いお寿司のこと?

ちがうよ。

「稲荷様」とは、彼らの神…

か、神?

遠い昔、あの島に稲荷様は現れた…

それ以来、島の猿たちは、世紀末に稲荷様が再び現れると信じていた…

それじゃあ…

君があの島で最後に見たという「稲荷の祠」とい

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「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇⑭(第281話)

「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇⑭(第281話)

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2019年9月20日 朝
スナックふかよみ

それでは、ここで少し新渡戸稲造の祖父「新渡戸傳」(にとべ つとう)について語ろうか。

『約翰傳(ヨハネ伝)』が下敷きになっている志賀直哉の『小僧の神様』を語る上で、避けては通れない人物だから。

新渡戸傳(1793-1871)

稲造と傳の物語…

まさしく新渡戸伝じゃな。

新渡戸伝か…

そういえば「新渡戸」って苗字は、なぜ「にと

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