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コーエン兄弟・徹底解剖

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コーエン兄弟の初期作品とカズオ・イシグロを結ぶ点と線 ~予告編~

なんだこのタイトル? 次はコーエン兄弟のデビュー作『ブラッド・シンプル』編じゃなかったの? 何言うとんねん。 そもそも『バートン・フィンク』の解説を始めたんは、カズオ・イシグロの『日の名残り』と『夜想曲集』を理解するためにどうしても必要やったからやろ? 中断しとる『夜想曲集』徹底解剖『第3話モールバン・ヒルズ』編を再開させるべきや。 『ブラッド・シンプル』だよ! カズオ・イシグロや! まあまあ君たち、ケンカはやめたまえ。 あんたがチンタラやってるからだろ!

『バートン・フィンク』徹底解剖~エピローグ後篇~「ヘイル、〇〇〇ー!」

とうとう本当の最終回だな。 終わるの寂しい? 何ならもっと書こうか? 全セリフ、全描写を解説してもいいよ。それに値する作品だから。 いや、もうええ。 映画『バートン・フィンク』の素晴らしさはようわかった。今回で区切りを付けて、次いこや。 そうだね。 未完のまま中断してるシリーズもたくさんあるし。 エピローグ前篇を未読の人は、こちらをご覧ください。 エピローグ前篇「大淫婦バビロン」 さて今回は、なぜコーエン兄弟がラストシーンで『猿の惑星』を引用し、「自由

『バートン・フィンク』徹底解剖~エピローグ前篇~「大淫婦バビロン」

前回の「Qの証明」は面白かったな。 さあ♪かき鳴らせ♪証明の歌~♬ 第30回「BARTON FIN”Q”」 よう発見したわ、マジで。 なにげに映画解説史に名を残すんとちゃうか、このシリーズ。 『Q資料』で全てのピースが収まったよね。 最初っからバートンは、ゴーストライターになる運命だったんだ。『Q資料』の作者みたいに… 人類史上最も有名な聖典に、あんな隠された経緯があったなんて驚いたな! そこ重要だよ。 コーエン兄弟は、エピローグに「そのネタ」を引用した

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖30(最終回)「BARTON FIN”Q”」

やっほ~!やっと最終回だ! 「やっと」は可哀想やろ。 せめて「とうとう」とか「ついに」にしとけ。 前回を未読の人は、まずコチラからどうぞ… 第29話「The Life of the Mind」 『ウエストワールド』を引き合いに出しての解説は面白かったよ。 ドイツ語のアナグラムもな。 オッサン、何気に教養や洞察力があるのに、こんなアホなもん書いとるから損しとるんとちゃうか? 僕って「照れ屋さん」だから、まじめなこと書こうとしても、ついついこうなっちゃうんだよ

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖29「The Life of the Mind」

さて、前回は「USOダンスパーティー」の解説だったね。あれは面白かった。 未読の方はコチラ! 第28回「Apocalypse USO」 さあ、いよいよ「炎の中年男チャーリー」の登場やな! それ違うでしょ(笑) こっち。 大乱闘となった「USOダンスパーティー」を脱出したバートンは、ホテルの自室へ戻るために6階の廊下を歩いていた。 すると誰もいないはずの部屋のドアが開いていて、中から男の声が聞こえてくる。 バートンのシナリオ『THE BURLYMAN』を朗読

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖28「ジョークの黙示録~Apocalypse USO」

さて、ロス市警の刑事の尋問が終わり、バートンは部屋に戻った。 前回を未読の方はコチラ! 第27回「カール・ムント」 しかし『バートン・フィンク』が、あの名作『羊たちの沈黙』をあそこまで意識して作られとったとはな。 だよね。僕も発見した時は驚いたよ。 さて、バートンは「オードリーの首」が入った箱をタイプライターの隣に置き、少し考える。 そして執筆を始めた。 なんで急に書けるようになったんだ? ロビーでの刑事二人との会話で「福音書」を書く準備が全て揃ったんだ。

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖27「カール・ムント、またの名をチャーリー・メドウズ」

さて、今回はロス市警の刑事二人とバートンの会話から解説していこう。 前回を未読の方はコチラ! 第26回『アナグラム』 しかし二人の刑事の名前がアナグラムになっとるっちゅうのは驚いたな。 よう気付くわホンマ。FBIの特殊犯罪専門捜査官も真っ青やで。 『羊たちの沈黙』じゃないんだから(笑) いや、『羊たちの沈黙』なんだよね。 ハァ!? 『バートン・フィンク』は『羊たちの沈黙』を、かなり意識して作られているんだよ。 せやけど、この2つは同じ年の公開やんけ。

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖26「アナグラム」

さて、今回は「ロス市警の刑事」のシーンからだね。 前回を未読の方はコチラ! 第25回「あんたらマンハッタンに何しはったん?」 あのシーンは、めっちゃ不吉な予感をさせるシーンやったな。 この日の朝リプニックが発した「ユダヤ人への侮辱発言」と、直前に露見した「LAでの出来事=聖書の内容」という衝撃的事実が、バートンの精神不安に拍車をかけたんだ。 だから新しい「妄想キャラ」として、あの「二人のロス市警刑事」が登場したというわけだね。 やっぱり刑事もバートンの妄想キャ

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖25「あんたらマンハッタンに何しはったん?」

さて、いよいよ映画も大詰めだ。 今回の解説は「ギデオンズ聖書」と「ロス市警の刑事」の登場シーンだね。 前回を未読の方はコチラ! 第24回「BOX ~箱~」 前回紹介したチャーリーとバートンの会話シーンは、この映画についての「暴露大会」だった。 コーエン兄弟は「タネ明かし」になるジョークをこれでもかと連発させた。バートン・フィンクを演じるジョン・タトゥーロが噴き出しちゃうくらいに。 それでも気付かん人に向けた「究極のタネ明かし」が… 机の引き出しから出て来た「

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖24「箱」

さて、リプニック邸訪問の次のシーンを解説しようか。 その前に、前回を未読の方はコチラ! 第23回「Lower East Side」 ユダヤ人のリプニックが「我々の先祖は、ひとりの幼な子から教えられた」と言ったので、バートンの頭の中で妄想がさらに膨らみだした。 この「幼な子」という表現は『マタイによる福音書』第11章25節に対応しているんだね。 11:25 そのときイエスは声をあげて言われた、「天地の主なる父よ。あなたをほめたたえます。これらの事を知恵のある者や賢

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖23「Lower East Sideってどこ?」

さて、今回は「8時台」の解説だね。 その前に、前回を未読の方はコチラ! 第22回「7時台」 さあ、何が書いてあるんや! 『ローマ人への手紙』第8章には! まあ、そんなに焦りなさんな。 第8章は39節まであるんだけど、その全部が使われるわけではない。 「15~29節」が重要なんだね。 なんで特定できんねん? あ、そっか! ガイズラーのメモだ! その通り。 あの時刻と番地は「ネタに使われる範囲」を表していたんだね。 コーエン兄弟が「ここテストに出ます

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖22「7時台」

さて、今回は「7時59分」の解説からだね。 その前に、前回を未読の方はコチラ! 第21回「蚊」 もう無駄話ナシでガンガン進めようや。 OK。僕もそろそろ次の作品に移りたいと思ってたところだ。 noteで中断してるシリーズも、こっちに引っ越しして再開させなきゃいけないしね。 カズオ・イシグロ… クリストファー・ノーラン… ルネ・クレマン… 他にもまだあったような気がするな… しかしこれじゃあ、体がいくつあっても足りないね(笑) ようやるわホンマ。1円に

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖21「蚊」

さて、いよいよ「事件発生」だ。 その前に、前回を未読の方はコチラ! 第20回「洗面所と排水パイプ」 「洗面所=ゴルゴタの丘」っちゅうのには驚いたな。 あんな細かい仕掛けが施されていたなんて、発見した僕も正直ビックリしたね。 さて、話を進めようか。 翌朝バートンは蚊の飛ぶ音で目覚めた。 ベッドの上を飛び回っていた蚊は、バートンの隣に寝ているオードリーの背中にとまる。 LAに来てからというもの、ずっとバートンを悩ませてきた「犯人」が、その姿をようやく見せた…

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖20「洗面所と排水パイプ」

さて、多くの人が誤解している「洗面所と排水管」の秘密を解説するよ。 その前に、前回を未読の方はコチラ! 第19回「天使の誘惑」 大天使ガブリエルことオードリーには参ったな。まさかあの「手」に重要な意味があったとは… 何度も言うように、天才芸術家は無意味なことはしない。この当時のコーエン兄弟は本当にキレッキレだよね。 さて、問題の「洗面所の排水管」だ。 多くの人はコレを「女性の生殖器官」と結びつけている。 でもまあ仕方ないかな。 実際コーエン兄弟も「そうとれ