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地域活性化には「稼ぐ」ことが大切。【飯田泰之ほか『地域再生の失敗学』,2016】

こんにちは。藤野です。
ちょっと前までクリスマスだったはずなのに気づくと三が日も終えて通常どおりの業務が始まりつつあります。🎍
今回は、正月休みを利用して読んだ『地域再生の失敗学』から得た気づきなどを記していきたいと思います。

「稼げるまち」にしていくことが大切

本書全体を通じて投げかけられているのは「地域を活性化するためには、地域経済の活性化が不可欠であり、そのためには稼ぐ意識が必要」ということだと思います。
本書の第一章で木下氏は「地域が衰退しているというのは、ヒト・モノ・カネに代表される資源が地域からどんどんなくなっている状況」と言っています。これを防ぐためには、地域からの流出を防ぎ、さらに多くの流入を目指す必要があるということです。
ビジネスの世界では当たり前のことかもしれませんが、自治体の事業では「やること自体が素晴らしい」とされることが多々あり、なかなかそれらにかけた公金以上のメリットが生まれているかを考えないことが多くあります。
そうしたことを考えるきっかけになりました。

地方交付税の呪い
「自治体にとっての稼ぐ=税収増」への逆インセンティブ

地方交付税制度とは、つまり政府が各自治体に最低限のサービスレベル(ナショナルミニマム)の達成を求める代わりに、そのために必要な財源の一部を政府が補助する仕組みです。(参考:総務省「地方交付税制度の概要」
僕もいまいちよくわかっていなかったのですが、以下のように整理してみました。(分かりやすくするために、「基準財政需要学=必要額」「基準財政収入額=見込収入額」としています)

地方交付税制度が無かったとすると

仮に地方交付税制度が無かったとしましょう。つまり、「サービスの最低水準は政府で決めるけど、それを達成するのは各自でよろしく〜」ということになります。
その場合の計算式は「必要額ー見込収入額=赤字(良くても余剰財源がほぼ0)」となってしまい、財源に乏しい自治体は必要なサービスを提供できない又は余剰財源がほとんど0になってしまい裁量が無くなってしまいます。
これでは地方”自治体”である意味がありませんよね。

現在の交付税制度

では、現在の交付税制度ではどのようになっているのでしょうか。
政府の姿勢を言い換えるとすれば「サービスの最低水準を政府で決める以上、赤字はマズいし、各自治体に最低限の裁量は残しておくべきだよね。じゃあ、必要なサービス提供に充てるのは見込収入額の75%だけでいいよ、差額は政府が補助するからね。残った見込収入額の25%は各自治体の裁量で使ってね。」ということになります。
この場合の計算式は、「必要額ー見込収入*75%=交付額」「見込収入*25%=各自治体の裁量で使える財源」となります

本書の中で指摘されている問題点

一見するといい仕組みのように見えますが、仮に必要額が1,000万円、自治体の税収が0円だったとしましょう。それまでは必要額の1,000万円全額を政府からの見込収入額で賄っていることになります。しかし、自治体が自らの努力で財源を増やし、見込収入額が100万円になったとしましょう。
この場合、100万円を自治体が自由に使えるようになるでしょうか?
答えはノーです。
政府のスタンスとしては、交付税は「財源が足りないから交付している」ものであり、自分で賄える部分は自分で賄ってもらいたいというのが当然です。つまり、100万円の増収が見込まれた場合には、その75%は必要サービスへ充当(=交付税の削減)が求められ、実際に裁量を持って使える財源としては25%しか残らないのです。
これと全く同じことが交付税を受け取っている全ての自治体で発生しており、つまり自治体が税収増に取り組んだとしても、交付税を受け取っている以上はその75%は実質的に手元に残らないということなのです。
日本全体の財政健全化という点では、当然の仕組みではありますが、これでは地価の向上による固定資産税の税収増加や所得増による市民税の増加へのインセンティブがあまり働かないのも分かります。

都市部の街にはまだ時間が残されている

社会や経済が拡大期にある=時間が解決してくれると言えましたが、逆に縮小期に入った現在では刻一刻と状態が悪化していく局面にあると考えられます。
とはいえ、「集落移転」を考えるほどではなく、行政区一つでも30万人以上を要することもある政令指定都市では、本当に意味での地方都市と比べれば時間の猶予がまだ多少残されているともいえそうです。(それが5年なのか、10年なのかは分かりませんが)
目の前に危機が迫った状況だからこそ、全職員・全市民が同じ危機感を共有して前向きな議論ができるという部分もありますが、にっちもさっちもいかなくなる前に手を打てるように努めていきたいと思います。

終わりに

2023年のチャレンジとして久々に書いてみたnoteですが、自分の文章力の無さに絶望しています、、、
ただ、書いていく中で地方交付税制度について自分なりに理解を深めることができたことは良かったことの一つです。
これからも不定期にはなりますが、頑張って書いていきたいと思います!

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