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歳時記を旅する22〔枯蟷螂〕中    *影動くものを見据ゑて枯蟷螂

佐野  聰

(平成十年作、『春日』)

 カマキリにとって手頃な大きさの動く物体はすべて獲物である。
それはカマキリ同士でも同じこと。

オスは交尾のためにメスの背中に飛び乗ろうと近づくが、メスが先手を打ってオスを捕まえて、オスは頭から齧られてしまうことがある。
だからオスはまるで獲物に近づくときのように気づかれないように慎重に近づく。

まるでラブレターと遺書を抱えた、命がけの「だるまさんが転んだ」である。(ピッキオ編著『虫のおもしろ私生活』主婦と生活社)

 句のカマキリは、獲物を待ち伏せしているのだろう。
冬の枯れ色の中では、影だけでその姿を見つけられてしまう。
(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和四年一月号 「風の軌跡―重次俳句の系譜―」)

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