オカケン

広島カープ愛あふれる政治学徒・教員・物書き。暮らしで見聞きしたデータ全てで「地べた… もっとみる

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広島カープ愛あふれる政治学徒・教員・物書き。暮らしで見聞きしたデータ全てで「地べた目線の政治学/デモクラシー」を模索し、地域密着人生。

最近の記事

「何がこの作品で問われたのかが放置されること」が最大の危機である〜半世紀ぶりの再読『はだしのゲン』をめぐる所感〜

 『はだしのゲン』(中沢啓治作)を50年ぶりに再読してみた。  平和教育に関する論点が拡散し、かつ曖昧となり、何が本当に問題なのかが共有されづらくなってきていると感じたからである。  小学生だった頃、少年漫画雑誌にひょんと現れた『はだしのゲン』の衝撃は、半世紀を経た今も忘れることができない。父親が収集していた戦時中の記録・写真・資料を時々眺めていた早熟な自分であったが、それでもこの漫画は「キツい」ものだった。悪夢にうなされたこともあった。  今年の冬、広島県教育委員会が

    • 「どうしたら不登校の子が学校に行けるか?」は、第一の問いでも課題でもない:政治学徒の視点

       NHKの映像ディレクター本人の家庭のドキュメンタリー『不登校がやってきた』が、パート1、2、3と続けて放映された。  私は、教育学者でも教育社会学者でもないし、現場の教員だが、「資格なき教員である大学人」(教員免許不要)であるから、ティーンズたちの不登校をどう解決するべきか、という問いの立て方はしない。  辛ければ行かないで、学級の空間を回避して、学びを続けられる場所を確保してあげればいいと思う。自分も中学入学以後、「学級」をひたすらストレスフルな場所として嫌ってきたから

      • 子供が育つ環境作りについて〜PTA:ハートフルクラブ対談(NPO法人ハートフルコミュニケーション主催:代表菅原裕子)

         オンラインで子育てに関わる鼎談&ディスカッションをやらせていただきます。おいでください!  7月9日の午前10時から、NPO法人ハートフルコミュニケーションの菅原裕子先生、あの伝説のPTA改革を成し遂げた大田区立嶺町小学校のPTO(学校応援団)の久米雅人さんと私で、「子供が育つ環境をどう作るのか?」という視点で、PTAについてディスカッションをさせていただくことになりました。  オンライン開催ですので、土曜日の午前中に2時間ほどお時間のある方は、お付き合いいただければ嬉

        • 新刊『教室を生きのびる政治学』(晶文社)が、重版出来(しゅったい)です。感謝申し上げます。

          皆様に謹んでご報告申し上げます。 世界で一番好きな四文字言葉です。  おかげさまをもちまして、新刊『教室を生きのびる政治学』(晶文社)、   重版出来(じゅうはんしゅったい)であります。   ひとえにこの本を多くの方に知らせてくださった皆様のおかげです。  まことにありがとうございます。  昨日の日本NPO学会のシンポでも「年間に500人以上のティーンズ」が自ら人生のエンディングを選ぶ社会について、絞り出すような思いをパネラーの先生がお示しくださいました。切なさが胸

        「何がこの作品で問われたのかが放置されること」が最大の危機である〜半世紀ぶりの再読『はだしのゲン』をめぐる所感〜

        • 「どうしたら不登校の子が学校に行けるか?」は、第一の問いでも課題でもない:政治学徒の視点

        • 子供が育つ環境作りについて〜PTA:ハートフルクラブ対談(NPO法人ハートフルコミュニケーション主催:代表菅原裕子)

        • 新刊『教室を生きのびる政治学』(晶文社)が、重版出来(しゅったい)です。感謝申し上げます。

          新刊発売されました。『教室を生きのびる政治学』(晶文社)です。

           これまでにも、私は政治学の専門知をデモクラシーを担うために不可欠な社会的中間層の生活言語に翻訳して伝えることを自分の仕事として努力して来ました。  私が書いた何冊かの本は、いくらかの舞台の違いはありますが、基本的には私が考える「市井(しせい)を生きる人々のための政治学」を狙いにしたものでした。  『言葉がたりないとサルになる』(亜紀書房)、『静かに「政治」の話を続けよう 』(同社)、『デモクラシーは、仁義である』(角川新書)、『ええ、政治ですが、それが何か?』(明石書店)

          新刊発売されました。『教室を生きのびる政治学』(晶文社)です。

          作品批評をしたいが「非作品評価」をせねばならない理由〜ドラマ『エルピス』が放映されたことについて〜

           主演の長澤まさみが台本を読んで、即、どこの局での制作かも問わず出演を快諾したことで有名な関西テレビ発信のTVドラマ『エルピス』。全10話で、脚本はあの不朽の名作ドラマ『カーネーション』の渡辺あやである。『カーネーション』を日本のドラマ作品の最高峰と位置付ける私は、この脚本家が6年の歳月をかけて書き上げたと言われるこの作品を、フジサンケイ・グループ系が作ったからという浅薄な理由で等閑にふす気があるはずもなく、きちんと心技体を没入して観た。  ドラマや映画作品を評価するに際し

          作品批評をしたいが「非作品評価」をせねばならない理由〜ドラマ『エルピス』が放映されたことについて〜

          ニッポンの老若男女が170年考えたことがない問題:定番面接でわかること

           秋である。推薦やOAやいろいろな種類の試験面接が始まる季節である。 土曜、日曜と連日出勤して「人が働かない時に働くんだね」なんて嫌みを言われる大学教員ライフである。  志望動機書類、小論文などを読んで、さてさて面接である。たくさんいるから4-5人のチームを作ってやる。全員、甲冑着てんのかいっていうくらい緊張している。  だから最初の声がけは「緊張してますね?Take a deep breath !」大丈夫、基本的に減点しないで、いいとこ発見したら足し算ばっかりだからと言って

          ニッポンの老若男女が170年考えたことがない問題:定番面接でわかること

          生きることは外注できない:PTA外注問題を切り分けよう〜プレジデントオンラインの論考〜

           昨今話題の「PTAアウトソーシング」について論考を書きました。  タイトル:「保護者が注目…近ツリのPTA代行サービスが突きつける"何のためのPTAなのか"という深い問い」  近畿日本ツーリストが、ついにPTAの「お手伝い市場」に参入した。  「お金で解決するなら良くない?」  「これで苦しみから逃れられる」  「だったら、行政がやれば?税金払ってるんだから」  いろんな反応があるだろう。  でも話をごっちゃにしないほうがいいと思う。  なぜならば、もう各種

          生きることは外注できない:PTA外注問題を切り分けよう〜プレジデントオンラインの論考〜

          PTAにおける「ボラの原点」:「任意団体」には”義務”というものはありません。ギビングという”気持ち”が全てです。

           3年前、PTA会長2年目だった頃の「会長エッセイ」です。  9月終わりから10月は、次年度の「役員」を選ぶ選考委員会(役選委員会などと呼ばれている地域もあります)が起動するタイミングですし、秋の様々な行事が、新学期と共に本格化し始めます。  同時に、未だにPTAを「学校や教育委員会(行政)の下部組織」だと、ぼんやりと思っている人がまだたくさんいて、切ないぐらいに真摯に、真面目に、家庭を犠牲にして「やらねば」と頑張ってしまいそうです。  地域の友人たちとの楽しい活動は、

          PTAにおける「ボラの原点」:「任意団体」には”義務”というものはありません。ギビングという”気持ち”が全てです。

          「スポーツってそもそも何よ?」という本質的議論の蓄積がない"Bukatsu"社会

          【「試合がないとスポーツしない」日本の学生:未成熟な基本議論「スポーツって何よ?」】  学生とのゼミ合宿でやった「そもそも論(贅沢しゃべり)」のテーマに「スポーツって何よ?」というのがあった。  専修大学法学部岡田憲治ゼミナールは、「市民社会(団体)」研究がテーマなので、地域の社会基盤に貢献するJリーグやBリーグなどの「クラブ・スポーツ」や、欧米で一般的な、いわゆる「ソシオ」制度なんかを研究している学生もいて、その際にやはり本質的な議論が必要だと考えて、「そもそも論」をやっ

          「スポーツってそもそも何よ?」という本質的議論の蓄積がない"Bukatsu"社会

          御礼『政治学者、PTA会長になる』重版出来(しゅったい)です。

           まことにありがたいことに、連日、取材・媒体掲載や講演・執筆の依頼が届き、何かと多忙な日々であります。  そんな依頼に加えて、新学期から3ヶ月目、ちょうど「総会」が終わった頃なのでしょうか、またぞろ「オカケンさん!うちのPTAで◯◯みたいなことになってて、あたし(ぼくも)◯◯◯◯とか勝手にポジション半強制的に就けられちゃったんですけど、そういうのってアリなんですか?」とか、「PTAって退会できるんですか?」といった、悲鳴のような、あるいは釈然としないモヤモヤに満ちたお尋ねが

          御礼『政治学者、PTA会長になる』重版出来(しゅったい)です。

          PTAのもう少し先の風景について:『論座』のロングインタビュー※◎19日の朝の7時までは「無料」で読めます!

          【19日の朝の7時までは「無料」で読めます!「もう一歩踏み込んだ」PTA論です:論座ロングインタビュー】  畏友、朝日新聞記者石川智也くんが、愚著(『政治学者、PTA会長になる』毎日新聞出版)の出版に際して、その内容紹介とともに、そこから「もう一歩先の風景」について、『論座』の長いインタビュー記事をまとめてくれました。 →  https://bit.ly/3leuyOA   PTAは色々なものであってよいですし(「要らない」とみんなで判断したなら要らないですし)、「そんな

          PTAのもう少し先の風景について:『論座』のロングインタビュー※◎19日の朝の7時までは「無料」で読めます!

          『政治学者、PTA会長になる』(毎日新聞出版)朝日新聞の書評で取り上げていただきました。

           愚著が朝日新聞の書評欄で、阿古智子(中国研究者)さんによって取り上げていただけましたので、お伝えします。    この書評欄『好書好日』は、デジタル版だと鍵がなくて、全文無料読めるのですね。実にありがたいことです。  この本をレビューしてくださる様々な皆さんの文章を読んでいると、PTA、あるいは「PTA的なるもの」と、ご自分がどういうふうに向き合って生活してこられたかが滲み出てこられて、「そこか。そこで頑張ったり、傷ついたり、幸せになったり、楽しかったりしたんですね!?」

          『政治学者、PTA会長になる』(毎日新聞出版)朝日新聞の書評で取り上げていただきました。

          「あれはそういうことだったのか」と思い返して、今の自分を肯定してほしいのです:新刊『政治学者、PTA会長になる』(毎日新聞出版)

           先週末の新刊発売記念トークイベントにも、たくさんの「元PTA役員でした」といった経験者のみなさんが、対面、ズーム問わずたくさんお越しくださいました。  トークをやった登壇者のお二人も各々の形でPTA(的なるものも含めて)の経験者で、かつどこかで「挫折」や「もやもや」や「後悔」と言った、「禍根」なのか「トラウマ」なのか、いずれにせよ「負の感情が心の古層に残っている気がする」という人です。  この本を知った友人や、友人の友人のみなさんは(とりわけ僕の世代に近いと15年くらい

          「あれはそういうことだったのか」と思い返して、今の自分を肯定してほしいのです:新刊『政治学者、PTA会長になる』(毎日新聞出版)

          震災も空襲も区別の無き悲劇だが「自然」と「人為」は区別したい〜三月によせて〜

           昨日は、3月10日で、今日は11日だ。  あれから「3.11(サンテンイチイチ)」は、普通名詞となりつつあり、僕たちが今日、そして未来を考える起点とでも言うべき日になっている。数千人がまだ行方不明だ。本日をもって何かが終わったわけでも、歴史となったわけでもなく、災害と原発事故のもたらしたものは、もはや多くの人々によって表現されているように、現在進行中だ。   11年前の、あの日のことを思い出して黙祷を捧げた。  その背後で、これまで3月の鎮魂の日とされてきた「3月10

          震災も空襲も区別の無き悲劇だが「自然」と「人為」は区別したい〜三月によせて〜

          新刊発売です。『政治学者、PTA会長になる』(毎日新聞出版)』

          新刊発売です。『政治学者、PTA会長になる』(毎日新聞出版)』