「刺したら入院できると思った」ニュースで聞くのと裁判傍聴の印象の違い(傷害) 傍聴小景#79
定期的に老人養護施設や障害者施設の職員による、悲惨なニュースを聞きます。もちろん色々な見方、色々な事情があるのはわかるのですが、このときに一つ話題として挙がるのは労働環境の過酷さがあります。
人は足りない、給料は決して高くない、体力も使う、そして精神的にも堪える場面も多い。そんな一端を感じさせられた今回の裁判です。
はじめに ~この裁判は何かあると思わせる不穏な始まり~
被告人は、女性に対しては失礼ですが、見た目ふくよかな女性。公判を通じて、終始体調が悪そうにしていました。
人定質問の場では、自分の住所を「忘れてしまいました」と緊張とはまた違う感じで答えることができず、傍聴席にもこの裁判はなにかあるとある種緊張を漂わせることに。
傍聴席はまばらでしたが、被告人は何人か目に合わせ軽く会釈しているようでした。会釈している人はバラついていたのと、年齢的にもご家族という感じでもなかったのですが、この人はいったい…。
事件の概要(起訴状の要約) ~傷害?殺人未遂?~
あまり大きな事件を見ていないせいで、いまいち傷害致死と殺人の認定の違いがよくわかっていないというか、事例に触れる機会が少ない僕。
もちろん「殺意の有無」が大きな影響であることは分かるのですが、包丁で背中を刺す行為に殺意がないと言われてもピンときません。今回は、被害者は亡くなっていないので、それはまずなによりなのですが。
さて、言わずもがな、どうして被告人は被害者を刺してしまったのか。今回のポイントはそこであります。
採用された証拠類 〜刺したら入院できると思った〜
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