王子小劇場 運営会社変更のお知らせとご挨拶


この度、佐藤商事株式会社の王子小劇場運営事業は、2025年4月1日付で、有限会社ジャングルへ承継することとなりました。
2025年4月1日以降の劇場利用契約に関しましては、新運営体制に基づいて締結いたしますため、料金体系や貸出備品等の変更がございます。
詳しくは後日の発表をお待ちくださいませ。


9月19日(木)20:30より、YouTube Liveにて、
王子小劇場 劇場プロデューサーの井上瑠菜と、
インディペンデントシアター 劇場プロデューサーの相内唯史によります
発表配信をおこないます!


イベント内後半には質疑のコーナーをご用意いたしますので、そちらにご参加頂く事も可能ですし、先んじてお問い合わせいただいても回答させていただきます。


インディペンデントシアターさんの発表はこちらから⏬



王子小劇場、インディペンデントシアター3rdになります!!!


1998年7月の開館より26年間。王子落語会をはじめとした地域活性化事業や、隔年で行われる若手をクローズアップした演劇祭『佐藤佐吉演劇祭』をはじめとして、佐藤電機および佐藤商事の支えあって様々な自主事業を展開してまいりました。
長くなるのですが、この度の経緯と今後のことを、王子小劇場劇場プロデューサーの井上からお話しさせていただければと思います。



今年4月。佐藤佐吉演劇祭2024の開催も無事終え、社長と面談する機会がありました。
当時、私井上は王子小劇場劇場プロデューサーとしての正式着任を発表しようと準備を進めていました。芸術監督制とはまた違った運営体制に変更することを公表するため、また今年度の方向性を定めるために社長とお話しするモノだと思って面談に臨んでいたのです。
「今年度末で佐藤商事は王子小劇場の運営から離れます」と伺ったのはその時でした。

とにかく劇場運営は、赤字との戦いです。
黒字を出すということはかなり難しく、会社もそのことは承知の上で運営をしていました。地域や演劇界を支えていく貴重な場として尊重してくれて、「黒字を出せとは言わない、赤字を抑えて」と26年間、さまざまな部分で目を瞑っていただいていました。
ただ、ここ数年のコロナ禍をはじめとしたさまざまな要因が重なり、今回の決断に至ったとお話いただきました。

今後どう動いていくのか、私たちの前にはさまざまな選択肢がありました。
誰か運営を引き継いでくださる方を探すのか、それとも今いる職員でなんとかするのか。もしくは、閉館に向けて動くのか。
今劇場で働いている職員は、ほぼ全員現役のクリエーターです。自分の団体を主宰し、脚本や演出を行なっています。俳優もいますし、技術スタッフもいます。20代が大多数で、自身の創作活動で大成することを目指し、日々研鑽を積んでいます。
かく言う私も劇団主宰で、演劇をはじめとした創作活動を本業としながら王子小劇場に勤めています。自分たちで経営を行なっていくという選択肢は、選ぶことが出来ませんでした。

でも、閉館はしたくない。
赤字だらけの劇場を一緒に立て直していく、味方を探さなければならない。
来年度から運営を引き継いでくださる方を探さなければならないので、タイムリミットは6月末まで。見つからなければ閉館という、まさに何かの作品みたいな状況です。職員それぞれ、演劇界やエンタメ業界のお世話になっている方へお話を伺ったり、興味のある方がいないかを探したりと、奔走の日々が始まりました。

探し始めた当初は、無理なんだろうなと思っていたのが正直なところです。コロナ禍以降、さまざまな劇場が閉館してきました。王子小劇場は、佐藤電機(商事)がいるから何とかなっていたわけで、ここから新しい後ろ盾を探すというのは無謀以外の何でもありません。2ヶ月もない中で都合よく見つかるかどうかも疑わしいし、この状況で「無理無理、諦めな」とか、「何それどこ?」とか言われたら、もう心がぽっきり折れてしまうんじゃないかと、かなりビクビクしていました。とにかく後悔だけはしたくないという気持ちしか、最初はありませんでした。
ただ、たくさんの方に今回の話を聞いてもらい、ご相談させていただき、その恐れはだんだん消えていきました。王子小劇場がどれだけ愛されてきたのか思い知りましたし、これからどうしていけばいいのか、本当に一から一緒に考えてくださって。何の準備もせず「何がわからないのかわからないです」状態の私をあたたかく迎え入れてくださって、今の業務で減らせるところをどう探すか、現実的な事業計画をどうアピールしていくかを一緒に考えてくださったり、他にも相談できる方をご紹介いただいたり……時には普通に個人的な人生相談にのっていただくこともありました。
「王子小劇場がなくなったら困る」「でもなくなっても、あなたたちのせいではない」というお言葉を、本当に色んな方から、何度もいただきました。
他にも、様々な応援のお言葉やあたたかいお心遣いをいただき、それらひとつひとつが原動力になって、今日という日が迎えられていると思います。
改めて皆さま、この度は突然のことだったのにも関わらず、ご相談に乗っていただき、また運営引き継ぎをご検討いただき、本当にありがとうございました。今回のご恩は、これからの劇場運営でお返しできればと思っております。



さて、有限会社ジャングルの相内さんとお話したのは、5月中旬頃のことです。大阪で二つの劇場を運営している会社で、運営形態が似ていること、また1人芝居フェスの開催など、自主事業も行なっているといった類似点が多く、参考になるかもとお話をいただいて、オンラインで繋げていただきました。
あたたかく丁寧に、インディペンデントシアターのこと、運営形態のこともお話いただき、ご相談に乗ってもらってその日は終えたのですが、翌日相内さんからメールが届きました。もうちょっと詰めて計画は考えなければならないけど、うちが名乗りをあげるのはどうですか、といったものでした。
これ以上ない嬉しいお話だったのですが、メールの最後に、

「形や名称が変わっても王子小劇場が培ってきたものを
残しさらに発展させていける可能性を模索できればと思い、ご連絡させて頂きました。」

というお言葉があり、他の方にも検討いただいている状況ではありましたが、ぜひ一度相内さんにもご検討いただきたいと思い、こちらでご提示できる条件や現状の資料をお渡ししました。
残っていない資料があったり、資料としては不十分なものをお渡しせざるを得なかったりしたのですが、都度丁寧に確認と現状の把握をしていただき、現実的な施策を考えていただきました。佐藤商事側でも期限や条件の都合で検討を重ねた結果、この度、有限会社ジャングルに、正式に運営引き継ぎをお受けいただくことになりました。


ものすごい安堵感とともに、これからが勝負だぞ、と思っています。このまま近年と同じような赤字が続くようであれば、もう後はありません。

劇場運営の最も大きな、唯一の財源は、利用していただく団体の皆さんへの利用料です。そして最も大きな財産は、皆さんが上演する演劇公演です。
王子小劇場の2024年の稼働率は、自主事業あわせて85%ほど。それでも赤字です。年々回復しているとはいえ、コロナ禍以前に比べると稼働率はまだまだ低い状況です。
(前年度末にもそんな文章を書かせていただきました。詳しくは下記ご参照ください)

今演劇界はどこも逼迫していて、劇場公演を一回うつだけで精一杯な方も多くなっていると思います。
だからこそ、貴重な一回一回の皆さまの公演を、共に盛り上げていきたいと思っておりますし、職員一同、全力でサポートさせていただきます。
ぜひ皆さまの2025年度以降の公演、王子小劇場で上演して下さい!!
迷っている方は、相談窓口もあります。ご活用ください。


劇場自主事業におきましては、王子小劇場中高生演劇サマースクール、王子落語会、佐藤佐吉演劇祭は存続の方向で動いております。佐藤佐吉演劇祭は運営引き継ぎのタイミングのこともありますので、1年後倒しにはなってしまうのですが、2026年度末に開催できるよう調整を行なっております。
他事業に関しましては今後も、若手にとって、演劇界にとって有用なイベントや公演を実施できるよう、十分に検討していければと思います。

そして、東阪の小劇場が手を組んで共に歩んでいくからには、地方の劇団の皆さま、関西の劇団の皆さまにも東京進出の第一歩目として使っていただける劇場として、様々な施策を打ち出していきたいと思っております。



最後にはなりますが、昨年、初代芸術監督玉山悟さんから、劇場の過去のお話を聞く機会がありました。その際、

劇場の寿命は建物の寿命である

というお言葉をいただきました。
王子小劇場は現在、築25年ほど。建物の寿命はあともう25年ほどかな、と仰っていたのを覚えています。

劇場としての寿命を全うしたい。
できることなら寿命も超えて、長く続く劇場になるよう、関係者一同、精一杯尽力していきます。


改めて長くなってしまいましたが、お目通しいただきまして誠にありがとうございました。
今後とも変わらぬご愛顧賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

王子小劇場 劇場プロデューサー
井上瑠菜

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