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2022年11月25日の乾杯

2022年11月25日の乾杯、秋も深まり街にはクリスマスに飾り付けも始まる今日この頃、コロナもまだまだ収まる気配がないけれど、劇場は再びたくさんの演劇で満たされ始めて。そんななかでおじさんやおねえさんが観て、聴いて、感じたことを語り合います。
 
 
👨演劇のおじさんと
👩おねえさんです。よろしくお願いいたします。
👨よろしくお願いいたします。なにかコロナも流行しているのかしていないのかがよくわからなくなってきましたね。
👩いや、流行してきているんじゃないですか?もう、麻痺しているんですよ。
👨ああ。
👩もう、数はとんでもないからね
👨うん。確かにね。ただ、昔は騒いでいたこともそこまで騒がなくなったものね。
👩そうそう。でも実はとんでもない罹患者が出ているよ、
👨確かに。
👩マジで。
👨笑っている場合ではないみたいな感じにはなっているよね。
👩むしろね、前の方が気をつけていた分、最近は。もうマスクを外している人もけっこういるから。
👨うんうん。
👩屋外などでは外してもいいよとは言っていたけれど、それでもねぇ、まだ、罹患者はいるんだからとは思う。
👨この間、たまたまスタバである方と打ち合わせをしていたら、周りの方って打ち合わせをする時にもあんまりマスクとかしていないものね。
👩うん、そうでしょ。私は不安だよ。
👨とはいうものの、私はもう五回目のワクチンをうっているしね。これで罹患したらけっこう浮かばれないかも。
👩うん。
👨なんかね、前はもっと病院が手数をかけているというかうつ方も打たれる方も緊張感があったのだけれど、今回はすごくいろんなことが簡単になっていて。
👩うーん。
👨挙げ句の果てには、看護師さんが「ごいっしょにインフルエンザワクチンもいかがですかぁ?」とか言われて。
👩うふふ、そんな感じなんだ。
👨そう、インフルエンザのトッピングというかお勧めであるの。しかもコロナとインフルエンザのワクチンを一緒に打つとインフルエンザ分が500円引きなんだって。
👩あははは、なんだそれ。
👨だから、ワクチンセットですよ。今はワクチンセットがお得ですよ、みたいな。マクドナルドと同じ発想なんじゃない?それが良いことなのか悪いことなのかといわれるとよく分からないのだけれどね。
👩うん。そうですね。
👨まあ、そんな中、この間お話ししたwaq:irazを観てきましたよ。

APOC シアター


👩あぁ、どうでした。
👨もうね、ミュージカル。
👩ああ、
👨もうね、ミュージカルに「ど」がつくがっつりのミュージカルだった。
👩なるほど。
👨APOCシアターであんなミュージカルを観ることができるなんて想像もしてなかったけれど。なんかご出演の方達もwaqu:irazの常連の方に加えて、ほんとミュージカル畑とお見受けする方が多くて。主演というかジュリエットを演じる女性の方のプロフィールをみても洗足学園音楽大学の声楽科を主席でご卒業みたいだしね。
👩へぇ。
👨物語自体はシェークスピア悲劇そのままではなくそれを足場に組まれた感じで、マクドとかUberEatsが出てくるような話なのだけれど、
👩あははは、凄い。
👨でも、歌というか楽曲に関してはきっちり作り込んでいるし、あとダンスや所作は小林真梨恵さんだからそれはもうしっかりだし。ミュージカルのいろんな要素のレベルががっつり担保されていて、トータルとしてもの凄く完成度が高いの。
👩うんうん。
👨それが、APOCシアターって座席数が取れても30くらいじゃないですか。
👩そうですね。
👨僅か30人くらいにあんなレベルの物を見せるのかという驚きを感じさせる舞台でした。
👩うふふ。
👨ニューヨークのオフでミュージカルをやるといっても、あんなに小さな所では無いわけで、少なくとも100くらいのキャパがあるような場所での上演だろうから。
👩そうですね。
👨出演者が10人とかいて、観客数がマックス30くらいというのは、どう考えても贅沢じゃないですか。
👩確かに。
👨だから、そのスペースでミュージカルが始まったときにはこちらが緊張をしてしまって。
👩うふふふ。
👨まあ、そのクオリティを肌で感じるにつけ、小林真梨恵さんは本物というか完成した物を目指しているのだなぁという気がして。
👩うんうん。
👨また、なにより観て面白かったのでね
👩うん、それがなにより。
👨観ていてほんと楽しかったし。こんな贅沢をさせてもらってよいのかって不安になるくらい。
👩不安ってどんな風に?
👨入るときは4000円だけれど、この値打ちから考えると出るときにはもう10000円くらい取られるんじゃないかなんてね。
👩そんなわけないでしょ、うふふふ。でも、そんな風に思えるくらいよかったんだね。
👨そう。もう10000円くらい払わなければと思えるようなクオリティだった。
👩うん。
👨あと思ったのだけれど、日本人でミュージカルを演じるのに長けている俳優って、私が知らないだけで、そういうタレントを持った方ってたくさんいらっしゃるのかなぁとも思って。
👩ああ、そうですね。
👨たとえば私って2.5次元の舞台は基本的にはほとんど観ない人だから。
👩うんうん。
👨でも、諸事情があってごく稀に観ることがあって、そのときに思うのだけれど、2.5次元のクオリティって間違いなくあるじゃないですか。
👩うん、ありますね、あります。
👨2.5次元というと、どこか薄っぺらい印象があったのだれど、でも演じる彼らって上手いじゃない。時にとんでもなく上手いじゃない。
👩うん、とんでもなく上手い。
👨まあ。2.5次元に限らないのだけれど、そういういろんな私のまだ知らない素地というか力も取り入れての今回の完成度なのかなぁとも思ったりしてね。だけど、2.5次元の世界であっても流石に観客30人ではやらないよなとも思って。
👩いやぁ、改めて本当に贅沢ですよね。今だから観ることができたものだったかもしれないね、もしかしたら。
👨うん。だから、これに目をつける大人、大人っていうのも変な言い方だけれど、評判になったり影響力のある人が注目したりビジネスに繋げられる人が出てきたら、値段がちょっと跳ね上がってももっと大きなところでということになるかも知れない。それに耐えうる底力はありあまるようにも思うし。まあ、主宰の小林さんがどんなプランをもって作っているのかはわからないけれど。
👩いや、どんどん大きくなって。観る方も寂しさはあるけど、大きくなってさ、もっとその世界を金銭的なところとかそういうところで邪魔をされずに描いて頭の中を見せてくださいとは思いますよね。
👨たとえばブロードェイの良きミュージカルってめちゃ高いけれど、一度観たらまた観たくなるし、みんなにも観て貰いたくなったりもするじゃない。あの世界っていっぺんみたらそう思うんだよ。それとおんなじやつのちっちゃい版だったかと。
👩うん。
👨それとね、オノマリコさんが脚本を編んでいるから、物語もとてもよく出来ていて。
👩へぇ、そうなんだ。
👨オノマリコさんの作劇って独特の切っ先や広がりがあるからね。
👩どんな風に。
👨いうてもQ体(解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話)を作った人だからね。
👩ああぁ。
👨『Q体』は将来にも残るべき名作だと思っているのだけれど、その力。
👩うんうん。
👨そのオノマリコさんの物語を紡ぐ力というのは今回も素晴らしくて、元々は「ロミオとジュリエット」ではあるのだけれど、それを足場にして今風の物語に装いを変えていく流行には新たに惹かれたし、ミュージカルとしての見せ場を作り良さを引き立てる筋立てでもあったので。
👩はい。
👨観ることができてよかったと思ったし、こういうやり方がベースになって作られていく舞台も、その市場もあるのかもしれないなぁとかも考えたし。
👩うーん、それは大きなことじゃないですか。それは凄いね。
👨もちろん、可能性ではあるのだけれど。
👩うん。
👨いずれにしても贅沢をさせて頂きました。ありがとうございましたということで。
👩うふふふ。よかったですね、なによりでございます。
👨はい。
👩おじさんが楽しそうで。
👨うん、本当に楽しかったもの。あとね、ここのところで観たものと言えば・・・、オイスターズの『ちちんち』を観ました。オイスターズはご存じですか?

王子小劇場


👩えーと、私は多分はじめましてですね。
👨名古屋の団体なのですけれどね。歴史もあって、構成員はどちらかというともうおじさんたちの劇団なのだけれど。
👩ああ、はい。
👨実績はしっかりとあるんですよ、しっかりと。
👩ああ、そうなんだ。
👨俳優兼作演の主宰とある程度キャリアのある俳優が何人かいて。で、今回はSKEの女性を一人客演に呼んできて。
👩へぇ。
👨高畑結希さんとおっしゃって。彼女がある意味、物語の背骨を担うというか、けっこう狂言回しの役でもあるのだけれどね。
👩ああ、なるほどね。
👨狂言回しだからぶれちゃいけないのだけれど、ちゃんと冒頭から最後までしっかりとした貫きを感じたし、また彼女はいろんな意味で勘がいい人だとも思うんだよね。その、間の取り方とかキャラクターとしての舞台での居住まいとか存在感の出し入れの仕方とかが、それぞれになかなかのもので。だからおじさんたちというか男優の方たちがとてもやりやすそうにお芝居をしているようにみえるのよ。
👩あはは、楽しそうに?
👨いやぁ、楽しそうと言うのは少し違うかも。それぞれにキャラクターをかなりしっかり作り込まないと成り立たないお芝居にも思えて、それが上手く流れていくのは男優陣の上手さの賜物かもしれないし、まあやっている方が楽しいかどうかはよくわからないけれど。
👩うふふ。
👨あと、私が観たのが大楽で、彼女も舞台を重ねてお芝居がどんどん上手くなっていったのかもしれないけれど。
👩ああ、なるほどね。
👨少なくとも、私が観た回の彼女はしっかりと舞台を支えていて、この人は才があるなぁとか天性のものをお持ちだなぁとか思ったのだけれどね。いわゆるアイドルとして活躍された方のなかにはその後俳優として活躍される方もいらっしゃるじゃないですか。
👩はい、いらっしゃいますね。
👨彼女もそうなっていかれるのかなぁって。そうそう、あのね、彼女のお芝居を観て、前にみたことのある多部未華子さんの舞台での演技とどこか質感が似ているなとも思った。
👩ほう、おじさんも手広いですね。
👨あとでも話すけれど、KERAさんのお芝居って私は大好きで、3年くらい前に観た『ドクターホフマンのサナトリウム~カフカ第4の長編~』という舞台に多部さんがご出演で。KAATでみたのかな。その中での彼女はどこか硬質な印象のあるお芝居だったのだけれど、でもその中にそういう硬質な印象があることで冴えるというか、そういうものがないと崩れてしまうような舞台ってあるじゃないですか。その多部さんのお芝居が舞台に与える色やテンションがあって、だからこそ作品の印象が消えないというか。
👩ああ、あります、あります。
👨そこで崩れずに貫いて貰わないとみたいな。今回のオイスターズでも、形は違うけれど、舞台を広げ歩ませるという意味では、高畑さんにはその貫きが求められるお芝居であり役どころでもあったので。
👩ああ、作品にあってもいたんだ。
👨そう、すごく合っていたというか、win-winの関係だったとも思うのね。その作品とも、作演の方とも。
👩うんうん。
👨まあ、客席の雰囲気は普通のコメディの舞台とは若干違っていて、私はオイスターズの公演を昔観たことがあって面白かったという記憶もあり、また王子小劇場の空間も好きなので観に行ったのだけれど、というか高畑さんのご出演も意識になく、彼女がどういういうキャリアをお持ちかも終演後にググって始めて知ったのだけれど。
👩ああ、やはりファンの方も多かったのですね。
👨はい、けっこういらっしゃったみたいで。でね、さっきも言ったように彼女の間ってすごくよくて、思わずお気楽極楽に笑ってしまったりもするのだけれど、なんかそれが会場全体の空気にはなっていないのよ。
👩ああぁ、推しががんばっているなという真摯な心で観ているから。かわいいし素敵だけれどね。
👨ただのお芝居好きなおじさんやおばさんの笑いがその中に散見されるみたいな。で、終演後にはスタンディングオベーションになって。終演後の挨拶の中で、出演者の方が始めて観た景色だとはおっしゃっていたけれど。
👩へぇ、王子で。凄い、凄いね。まあ小劇場でもあるにはあるけれどさ。
👨王子でカーテンコールに観客が前列からどどっと立ち始めるというのはなかなかのインパクトだった。ただそれをあまり不自然に感じなかったのは、大楽だということもあったのだろうし、やっぱりそれが納得できるくらいに良いお芝居だったからなのだとは思うのだけれどね。
👩うんうん。
👨戯曲もすごく仕組まれていて、冒頭の大学教授のところに女学生が訪ねてくるというシーンからはまったく想像もつかない展開で。もうすぐ試験なのだけれど、実家に帰るのでそれに間に合わなかったときにはなんとかしてくれみたいな会話を普通に観ていたのだけれど、そこから彼女の家では父親が2年ごとに代わるという物語が始まって、しかもその新しい父親が暫くすると悉く駄目になって仕事をしなくなってしまい家に居着いてしまうので次第におじさんが家に溜まっていくという。
👩なんだ、それは。
👨その俳優たちのおじさんたちの個性の作り方も見事にそれぞれで、しかもその駄目になりかたが本当に上手いのよ。でね、さっきも言ったとおり高畑さんはそのなかでのト書き語り的な役目も担うのだけれど、彼女の立ち位置というのもなかなかに難しいとは思うのよ。娘という位置におかれる彼女があまり男達に同情しすぎても物語がベタベタになってしまうし、突き放しすぎてしまうと舞台が乾いてしまうだろうし。その中で来るものは拒まず去る者は追わずみたいな空気感の作り方が高畑さんは抜群に上手くて。
👩うんうん。
👨なにかひとつのロールというかポジションを担うとそこに対して凄く適応していくようななにかをもっているのだろうなぁとも思って。
👩そういう意味では高畑さんも良い経験をされたかもしれないですね。
👨そうですね。まあ、カーテンコールの時に彼女の舞台経験が1-2回というのも知って。
👩ああ、そうなんだ。それはそれは。
👨でもね、すでに業界の方でもあるし、だれかが観ていて野田秀樹さんや三谷幸喜さんに、ええ役者がおりますでと耳打ちするかもしれないじゃないですか。
👩うふふ、確かに。観て貰うことはとても大事だし、
👨まあ、観て貰っても凡庸な方だったら事務所の推しでの舞台みたいな感じになってしまうのだろうけれど、彼女にはそう感じさせないなにかがあるしね。
👩そうね。そうしてスキルアップしていくことができるのであれば、どんな場所で活動していらっしゃるかたでも武器になるから。彼女は良い経験をしたね、きっと。素晴らしいな。
👨思い返してみれば観劇のおじさんとかとは演者に対してのお作法がちょっと違うのも新鮮だったしね。開場時間の少し前に劇場にいって周りの会話を聞くともなしに聞いていると、なんか高畑さんのことをただ「高畑」って呼んでいる人が結構いて。普通は俳優の場合、一応「さん」くらいつけるのになぁとか思ったり。かと思えば公演を全通しているかたもいらっしゃったみたいて。
👩あはは、凄いねぇ。
👨まあ、私は基本的には同じお芝居は一度だし、そもそも一公演みるごとにうん千円だから,全公演観たら万の単位のお金がかかるわけじゃないですか。やっぱり推しのために頑張るっていうのも力がいるし、俳優にとっても推す側にとってもこの舞台はそれだけ大事な存在なのだろうなぁとも思って。
👩うん、推しは大事だよ。人生の潤いだよ、推しは。
👨うんうん、そう思ったし、推しの方が拘わるああいう良質なお芝居を観るのは、ファンにとっても嬉しいのだろうなぁとおもって。その、ひいき目に観て良いではなくて本当によかったからね。
👩うんうん。なによりだ。良い舞台を観ることができて本当によかったね。
👨それもwin-winの関係で。
👩本当だよね、本当にwin-win。
👨うん。
👩いっぱい出て欲しいわ、いろんな方が舞台にね。
👨そうそう。
👩もちろん既に舞台にでていらっしゃるいろんな方にももっと機会が増えてくれとも思うけれど。
👨そうだね。コロナで一度は痛んでしまったけれど、全体の間口がもう一度深く広がっていって欲しいよね。ところで、ちょっと話は変るけれど、私って演劇を観るにしても、まあ小劇場の割合とお手頃な木戸銭のお芝居を観ることが多いのですけれど、一方で年間に何本かはしっかりとお値段がしても比較的大きな劇場でのお芝居を観ることを自分自身に課してもいてね。まあ、そういう意味では文学座さんとかこまつ座さんの紀伊國屋系列でのお芝居もややお高目ではあるのだけれど、歌舞伎とかを除けば、NODAさん、三谷さん、KERAさんなどが作るお芝居ってやっぱりそれなりによいお値段なのですよ。
👩そうね、やっぱりエンタメは高いんだ。
👨エンタメというのもまたちょっと違う気がするのだけれど、まあ、しっかりとお金がかかっているというのも分かるしね。
👩うんわかる、分かる。あの辺はもうびっくりしないよね。あと面白いしね。たまには豪華な物を食べないとという感じで。
👨そうそう、たまにステーキを食べないとさ。いつも小間切れの肉ばかりだと人間の味覚も貧しくなっていくじゃない。
👩うふふ、そうね。
👨小間切れのお肉のおいしさはもちろんあるのだけれど、一方でステーキのおいしさというのは絶対にあるじゃないですか。
👩うんうん。ありますね。
👨ということもあって、KERA-MAPを観てきたのですよ。

本多劇場


👩ああ、へぇ、はいはい。
👨本多劇場の『しびれ雲』という舞台を。あの、緒川たまきさんとかともさかりえさんがご出演の。 
👩うんうん。
👨これもほんとに良い舞台でね。KERAさんの舞台って面白さの先で時にものすごくシュールだったり、ヒリヒリするほど研がれていたり、信じられないほど馬鹿馬鹿しかったりすることもあるじゃない。
👩うん、そうですね。
👨作品によっては、良い意味でどうしようもなくしんどくなったりもするのだけれど、今回のやつは観終わってとても暖かい気持ちになって。
👩へぇ。
👨あの、前に『キネマの恋人』という舞台があって、それはウッディアレンの『カイロの紫のバラ』という映画を元にした物語で、緒川たまきさんもともさかりえさんもそのお芝居にご出演で偽方言を使うというところも一緒なのだけれど。でも話としては全然新たなもので、その「キネマの恋人」は観終わってペーソスというかビターな感じも残ったのだけれど、今回はもっと希望があってね。
👩はい。
👨それは、もしかしたらコロナなどのことでKERAさんも心が疲れて、明るい物を作りたいと欲したのかなぁって想像してしまうようなお芝居でした。
👩うん、なるほど。
👨それにしてもともさかりえさんって良い女優だよね。
👩いやぁ、良いですよね。私大好き。
👨こうね、気の強いところと情の深いところのバランスなどに彼女にしか出せない色があるよね。
👩うん。私さ、本当に昔の、私がまだ幼い頃に、再放送だったのかな、わからないけれど、DVDで観たのかも知れないけれど、昔ね、ジャニーズの深夜枠で、舞台みたいにドラマを作るというか舞台作品をドラマにしていくという企画みたいなのがあったのですよ。
👨ほう、はいはい。 
👩作り方的には舞台みたいな感じで、舞台セットの中でやっていたのだと思うけれど、それで『温室』という作品をやったことがあったのよ。
👨はい、『温室』は知っていますよ。
👩あれは舞台だよね、元々は。
👨うん、私は舞台で観た。
👩それを、映像というかドラマでやってた。ドラマというかテレビで舞台をやるみたいな感じでやっていたのよ。
👨うんうん。
👩V6のおにいさん組?、坂本君、井ノ原君、長野君が出ていて、それでともさかりえさんが出てみたいな感じで。凄く良かったよ。私、未だに忘れないんだよなぁ。また観たいもの。
👨へぇ。
👩なんという番組だったかを全く覚えていないのだけれど、なんか深夜にやってた。
👨それって、5年前とか10年前とかじゃないよね。もっと前だよね、きっと。
👩もっと前じゃないかなぁ。知ってる人っているかなぁ。
👨うふふ。でもね、マニアの方で「ああ、あれね」とかさりげなくおっしゃったりもするからね。
👩うん。とにかくめちゃおもしろかったのよ、ほんとうに。凄いホラーな感じというか雰囲気で。
👨言ったとおりともさかさんは前のお芝居にも出ていて、多分その前にも観たことがあるのだけれど、そのときにはただ有名な方というような印象しかなくて、でも、『キネマの恋人』を観たときにはこんなに良い女優なんだって思って。今回それを再認識した。
👩うんうん。
👨まあ、お財布的にもこういうお高いお芝居というのは年に2回くらいにしようと自制をしているなかで、2022年下半期の分を野田さんのところかKERAさんのところかは迷ったりもして、ただ、野田さんの作品は初演も観ているのでこちらにしたのだけれど、それが正解か否かということはわからないけれど、少なくともこの舞台を観ることができて、ああ観て良かったなぁと思った。
👩うふふ。
👨舞台のお話って案外厳しめのところがあって、甘ったるくなくて、でも良いお話を観たなと思えることって案外確率が低いじゃない。
👩低い、低いですね。うん、誰かのための良いお話みたいなのはあるけれど、刺さるというのはそれぞれだから、もうそれは.クオリティというよりは刺さるか刺さらないかの、好みじゃ無いけれどそういうところになってくる気がするから、究極は。だからいろんなものを観るのが面白いのだけれど。
👨うん、そう。だけど今回は観た人がすべからく、もちろんビターな部分もあるのだけれど、ビターな部分もありつつ終わってみれば、しかも最後の部分は語られないところがあからさまにあったりもするのだけれど、良いお話だなと思えるであろうなにかがあるというか、観た人の心がそこで解かれ落ち着くお芝居だなぁって思って。それが今まで観るたびに面白さの先で心がヒリヒリと染みたり疼いたり解き放たれすぎたりするようなお芝居を見続けていたKERAさんの手で作られていたので、これはやっぱり時代が求めているKERAさんの癒やしとか祈りの結実なのかなとも思ったり。
👩うんうん。
👨なんかそろそろ、辛いお芝居だけでは嫌だという気持ちがどこかにあったのだろうね、KERAさんにもって。無意識に私にもそういう部分があったのかもしれないけれど・。
👩そうでしょうね。疲れちゃうよ、だって、
👨たまにお伽噺だって聞きたいじゃない、良いおっさんだったとしても。今回のKERAさんの舞台がお伽噺かというと必ずしもそうとも言えないけれど、なんか癒やされたりもした部分もあったし。
👩それはそうよ。お伽噺に性別も年齢も関係ないわ。
👨そうかもしれないね。
👩そうよ。
👨うん。そうだね。あとね、もうひとつ観たお芝居というか舞台の話をするとすれば、
👩はい。
👨前にというか、今年の5月に倉田翠さんが丸ノ内界隈で働く人々を集めて、インタビューをして、その中から出演者も選抜して『今ここから、あなたのことが見える/見えない』という公演をしたのね。

東京国際フォーラム Dホール


👩ああ、はい。
👨そのときには、新丸ビルの2階の空いていた広いオフィススペースを使って彼女がパフォーマンスを作ったのだけれど
👩うんうん。
👨今回はもう少し劇場っぽいところというか、東京国際フォーラムのホールを使ってそれを再演したのだけれど。
👩ほう。
👨まあ、私の印象に過ぎないのかも知れないけれど、今回は出演者の方が自分が何を表現したいかとかするということが初演時より整理できている感じがして、なおかつ倉田さん自身も上演の目的のフォーカスがより定まったというか、その世界を作ることに更に手練れになったような感じもあって。
👩はい。
👨そうすると、オムニバス的なわちゃわちゃ感も消えて。
👩なるほど。
👨企業って外から見ると、丸ノ内ではないにせよ私もオフィスビルで仕事をしていて勤めていた会社からほかの企業を見るとそうだったのだけれど、みんな同じ色やベクトルで活動している集団のように見えて、でも、自分の会社の中をみると、ひとりひとりが全部ばらばらで違っていて会社の仕事をしつつそれぞれの自分の時間を過ごしているだけなんだよね。また、そういう会社や組織やそこでなにかをしている人たちの集合体として街は成り立っているわけで。アフタートークでそこに勤める人たちは仕事を担ったりする立場の鎧を着ているみたいなことをおっしゃった方がいて、それも事実だと思うのだけれど、でも一方でその中で生きる人々のありようや感覚を上手く切り出して描き重ねることによって、そのイメージとか見える風景が違って訪れるような気もするのよ。
👩なるほどね。
👨それが彼女にとっては描きたいことのひとつでもあったのではないかという気がして。
👩うーん、面白いね。なんかそういうのって、展示の一環でとかでもありそうだしさ、観てみたい。
👨まあ、彼女はその場の人々をいろいろ描くということはいろんなやり方でやっているからね。ま丸ノ内にお勤めの人たちの中には華道に長けた人や、歌がとても上手い方とか、キレキレのダンスが出来る人とかがいらっしゃるわけですよ。あと、そうではなくても、インストラクター的なことをしたり式典とかいろんな場で言葉を述べたりする役回りのひとっていらっしゃるわけじゃない。作品はそういうものをうまく引き出してひとつの時空感に構成しているから、
👩へぇ、凄い。
👨もちろん、丸ノ内のことだっていう前提はあって、でもその中に訪れる風景は初演を見ていても、丸ノ内ということを離れてとても新鮮に思えて、
👩うんうん。
👨そうやって新しい世界を切出し見せてくれるというのは、やっぱり芸術じゃない。
👩うん、そうですね。
👨改めてこれは、前回を超えての新たな倉田さんの表現だなと思いながら観たりもしていましたが。
👩なんかいろんな良い物を観ていますね。
👨うん。でもね、とは言っても、最近はけっこうスケジュールがきちきちに詰まってくることがあって、観ることができていないものもたくさんあるのよ。
👩ああ、そうなんですか。
👨コロナの最盛期には考えられなかったことだけれど。お誘いをいただいたのにどうにもコマをつくることができずごめんなさいとかいうこともあったsじ。
👩うんうん。
👨だから、だらっと観るのではなく、これは是非というテンションを持って観るものがこの一ヶ月は多くなった気がする。観れなかった物に魅力がないとか入らないということは全然無くて、本当にやむを得ずで残念ながら観ることができなかったのだけれど、まあどうしても早く来た物もの順みたいな所もあって。
👩それはそうだろうね。体はひとつだから。
👨昔演劇好きのおじさんたちが体がみっつ欲しいとか1日が30時間あればよいとか言っていた時期があって、流石にそこまでではないけれど、コロナで一旦0近くにまでなったものが、ある程度戻っては来ているからね。
👩うんうん。ただ、昔と違って良くなったのは、コロナ後には見損なったものを配信で観ることができる可能性が増えたからね。
👨最悪はね。
👩うん、最悪の場合にはね。
👨おっしゃるとおりで、どうしても観たくてどうしても駄目なやつは配信なのだけれど、でも、できるだけ配信に頼らないで見続けていきたいなという想いもあって、そのあたりは複雑なところなのだけれどね。
👩うん、まあね。
👨ああ、そうだ、私もこの間おねえさんが言ってた『MONDAYS』を観たよ。
👩ああ、どうでした?
👨傑作じゃないですか、あれ。
👩そう、マジで面白いんですよ。
👨あれはおもしろい。
👩今も観ることができるかな。劇場なども増えているんじゃないかな。『MONDAYS』という映画を今ミニシアター系でやっているので是非観てください。マジで観てください。
👨まだ火がついたというところまではいかないかもしれないけれどTOHO系などでも上映するところがあってじわじわ増えてきている感じはするね。それにしても面白かった。
👩おもしろいでしょ、そうなのよ。おもしろいのよ。
👨タイムループものだということは公開されているから言って良いとは思うけれど、
👩うん。
👨単なるタイムループだけでは終わっていないところが凄くいいよね。
👩そうなのよ、マジで。あんまり言えないのだけれどね、観て欲しいから。本当に面白いから観に行って欲しい。凄く面白かった。
👨あと主演の女優さんもとても魅力的だよね。
👩うん、
👨おねえさんが力を入れて推してくれた理由がほんとよくわかりましたよ、
👩そうでしょ・。ほんと観るべきだと思って。あの、ミニシアター系の映画をあんまり観ないんだなぁという人でも大丈夫。とても受け入れられ易い作品となっております。
👨で、あれは家で画面でみるのではなく、やっぱり劇場のスクリーンで観て欲しいよね。
👩そうそう。しかもあのマキタスポーツさんが本当に良いんだ。
👨ああ、マキタスポーツさんは良い味をだしていらっしゃいましたよね。
👩うん、もう傑作です。傑作なので是非観てください。お願いします。
👨はい。、さてと今回観たもののいろんなお話はこのくらいにして。
👩そうですね。
👨あとこれからの舞台としてお勧めがあって、「動物自殺倶楽部」の公演がまたあるんですよ。
👩ほうほう。
👨あの高木登さんと赤猫座ちこさんのユニットですけれどね。
👩うんうん。存じ上げております。大好きなんですよね。
👨今度は割合とシリアスなストレートプレイみたいで。
👩ああ、そうなんですよね。
👨あとムシラセもやりますよね。もうすぐなんだけれど・
👩ああ、そうか。
👨あの、保坂さんて人脈をがっつりお持ちになっているというか、よき出演者が豪華てんこ盛りでね。
👩うふふ。
👨それだけで観客は集まるのだろうなぁというような面子で・・。で、それだけに留まらず実際におもしろそうだから、こちらもお勧めですね。
👩はい。お勧めです。
👨あと最後に12月は王子落語会というのがありまして。
👩はいはい。
👨今年は12月19日みたいですけれど。
👩ああ、そうなんだ。
👨桂米紫師匠が関西から来られて。大阪に行ったときにも高座を拝見したのですけれど、米朝一門の中でも色が強いというか。あと瀧川鯉昇師匠、それから立川流から立川左平次師匠、更には講談も一席あって神田京子先生がご出演でね。めっちゃ値打ちのある会なんですよ。
👩うわぁ、てんこ盛り過ぎて分からない。そんなに詰め込んだら見に来てくれなくなっちゃうよ。いろいろあるから観に来てねでいいんだよ。
👨あはは、だから、12月もいろいろと面白い物がたんとありますよということでご案内申し上げました。
👩はい。ありがとうございます。うふふ。
👨まあ、コロナがどうなるかもわかりませんが、それでも師走にも良き物がたくさんありますから。
👩皆様も是非に足を運んで頂きたいと思います。
👨はい。それでは今日はこのくらいにしましょうか。
👩そうですね。
👨それでは演劇のおじさんと
👩おねえさんでした。
👨ではまた次回。

本多劇場


 
(ご参考)
・waqu:iraz『ロミオ アンド ジュリエット アット ドーン!』
2022年11月16日~20日@APOCシアター
原案:Wシェークスピア「ロミオとジュリエット」
松岡和子訳
演出・振付:小林真梨恵(waqu:iraz)
翻案/脚本/作詞:オノマリコ(趣向)
音楽:後藤浩明
出演:都竹悠河、隈元梨乃、尾曲凱、
関森絵美、松尾音音、若尾颯太、
植竹悠理、武井希未、小林真梨恵
 
・オイスターズ『ちちんち』
2022年11月18日~20日@王子小劇場
脚本・演出:平塚直隆
出演:髙畑結希、佐治なげる、中尾達也、
平塚直隆、田内庸介、芝原啓成、
イヲリ
 
・KERA-MAP『しびれ雲』
2022年11月6日~12月4日@本多劇場
脚本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:井上芳雄、緒川たまき、ともさかりえ、
松尾諭、安澤千草、菅原永二、
清水葉月、富田望生、尾方宣久、
森準人、石住昭彦、三宅弘城、
三上市朗、萩原聖人
 
・一般社団法人ベンチ
『今ここから、あなたのことが見える/見えない』
2022年11月23日~25日@東京国際フォーラム ホールD
演出:倉田翠
出演:幾山靖代、石田悠哉、小川敦子​​、
菊池結華、後藤正子、佐々木大輔、
佐藤駿、高島竜馬、寺尾耀一郎、
津保綾乃、中田かおり、宮原朱琳​​、
矢次純一郎、倉田翠​​
 
・『MONDAYS』
全国で順次上映中
監督: 竹林亮
脚本: 夏生さえり 竹林亮
出演: 円井わん,マキタスポーツ、長村航希、
三河悠冴、八木光太郎、髙野春樹、
島田桃依、池田良、しゅはまはるみ
2022年10月14日 日本映画 上映時間82分
 
(今後のお勧め)
・動物自殺倶楽部『凪の果て』
2022年12月14日~12月18日@雑遊
脚本:高木登(演劇ユニット鵺的/動物自殺倶楽部)
演出:小崎愛美理(フロアトポロジー/演劇ユニット鵺的)
出演:赤猫座ちこ(牡丹茶房/動物自殺倶楽部)、函波窓(ヒノカサの虜)、
橋本恵一郞、ハマカワフミエ、三浦葵(劇団いいのか・・・?)
 
・ムシラセ『瞬きと閃光』
2022年11月30日~12月4日@シアター風姿花伝
脚本・演出:保坂萌
出演: 工藤さや、小口ふみか、辻響平(かわいいコンビニ店員飯田さん)、
輝蕗、元水颯香、中野亜美、
土本燈子、加藤彩、菊池美里、
つかてつお、渡辺実希、松尾太稀、
土橋銘菓(ダブルキャスト)、柴奏花(ダブルキャスト)
 
・王子落語会
2022年12月19日 19時王子小劇場
瀧川鯉昇
桂米紫
立川左平次
神田京子
 

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