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楽園の条件 2

 平成22年6月6日
 デルタ航空の格安チケットでホノルルの空港に降り立ちました。当然、ホテルの予約はしてません。入国審査でもめました。あなたはどこに泊まるのか、アラワイ・ボートハーバーです、どゆことですか、そゆことです、というようなやりとりがしばらくあって、なんとか通してもらいました。よかたよかた。
 空港からバスに乗って、アラモアナショッピングセンターで降りました。ボートハーバーはその真裏にあります。いや、海から見たらむしろ表ですね。浮き桟橋ではなくて固定です。潮の満ち干の差が少ないのでしょう。海は全部繋がっているのに、なんで地域によって差が大きかったり小さかったりするのかは謎です。肌に触れる南の島の空気に幸せを感じながら歩いて行くと、サザンクロス号がいました。大阪北港で見送って以来二ヶ月ぶりです。桟橋にバウを着けて、板を渡って乗り込みます。これが結構ぐらぐらしてこわいのです。実は中路さんとペアで航海してらした吉川さんが、ハワイ到着直後に桟橋から海に渡ろうとして転落して腕を骨折、緊急帰国して治療を受けていて、復帰するまでの間サザンクロスはハワイに停泊しているということなのです。
 久しぶりに会った中路さんは以前にも増して真っ黒になっていました。松崎しげる色というか、生まれてこの方ずっと漁師さんみたいな感じです。とりあえずお昼時なのでご飯を食べに行こう、ということになりました。アラワイ・ボートハーバーからワイキキの市街地までは歩いて行ける距離です。フライドチキンとサラダバーというハワイ上陸一発目っぽいランチの後、ビーチを散歩します。ワイキキのビーチというともうビーチの中のビーチ、トロピカルのどん詰まりのようなパラダイスの世界です。輝く太陽、心地よい風、完璧に青い海。心の底までリゾートな女の人たちが水着で寝転びまくっています。ここでシアワセを感じられなければもうあなた一生不幸しかありませんよ、というような。そんなビーチの午後を当然とても幸せな気分で散歩しながら船に戻ります。
 世界中どこへ行っても多分すぐに友達が百人はできそうな中路さん。当然ハワイでももう友達がいっぱい居て、その人たちが午後のサザンクロスに遊びに来ていました。それで「ちょっと船を出しましょうか」ということになって、アフタヌーンクルーズに出ました。さっき歩いてたワイキキビーチを海から眺めながらダイヤモンド・ヘッド辺りまで。当然脳内にはベンチャーズがエンドレスで回り続けますテケテケテケテケ。あそこにライトハウスが見えますねテケテケテケテケ、ディナー船も出てますねテケテケテケテケ、今晩は船で焼き肉にしましょうテケテケテケテケ‥。
 夕方になって港に戻る途中、その時間から沖へ出て行くヨットやカヌーと結構すれ違います。ハワイの人たちは明るいうちに仕事を切り上げて、夕方になると海で泳いだりサーフィンをしたりしているようです。こういう暮らしというか楽しんで生きてる姿を見てると、つい日本の通勤時間帯の情景を重ね合わせてしまって、なんかちょっとどうなんかなあという気分になります。楽しく暮らすもしんどく生きるもほんのちょっとした気持ちの持ちようなんやないんかなあ、なんて。
 そんなこんなで、ハワイの一日目は暮れてゆきました。

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